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第六十七話 痴情

ヒルダには百合の気はありません。

 起きたら知らない天井だった。あれ? まだ寝惚けてんのかと思って周りを見ると周りも知らない風景だった。白い部屋がこんなに進化したっけ?とか思って必死で思い出してみる。そういえばヒルダさんについてきてミルドレッド公爵邸に泊まったんだった。


 いけないかな?とか思いながら隣の部屋を覗いてみる。ヒルダさんが大きな天蓋付きのベッドですやすやと寝息を立てていた。うーん、透視クレヤボヤンスって覗きくらいしか役に立たなくない?


 廊下の方でコツコツと音がする。私の部屋をノックしているみたい。ここで襲われる、などという事は考えなくていい。だって、私はヒルダさんの客なのだ。公爵家の名に傷がつく様なことはしまい。いや、普通の冒険者ぐらいはなんとでもなるって思われるかな? でもヒルダさんが抗議するだろうし。


「お目覚めになっていらっしゃいますか?」

「あ、はい。おはようございます」

「朝食の用意が出来ておりますが、こちらでお召し上がりになりますか? それとも食堂までおいでになられますか?」

「あ、こ、こちらでお願いします」

「かしこまりました。お持ちしましたらまた声をおかけします」


 朝食をここまで運んでくれるらしい。部屋の中で食べるのか。いやまあ食堂は公爵様と顔を合わせなくちゃいけないから部屋の方が便利なんだけど。


 朝ごはんはよく焼いたパンに塩味のスープ、あとは野菜と果物がサラダみたいになったやつ。そして肉。朝から肉なんて食えるか!なんて胃弱ではないのでありがたくいただきます。


 ふと思ってヒルダさんを見てみると姿がない。これは食堂で家族水入らずで食べてるんだろうなと予想が着く。公爵様とヒルダさんは冷戦状態だ。お互いに教団と何かあると思ってんだろうなあ。早くヒルダさんと話さないと。


 ヒルダさんが部屋に帰ってきたタイミングで転移で跳ぶ。まあいきなり部屋の中に現れたらびっくりするよね。咄嗟の判断でヒルダさんの口を塞ぐ。何で? 勿論手だよ!


「ヒルダさん、静かにしてください」

「んーんーんー!」


 ちょっと何言ってんのか分からない。ここは鑑定サイコメトリーの出番だろう。ええとなになに?


『いっ、いけないわ。私たち女の子同士なのに。それに、私にはテオドール様っていう素敵な婚約者が。あなたが何故か私に劣情を催したというなら、まあ一度くらいの過ちであれば応える用意はありますけど。その、あまり経験もないのでリードしていただけると』


 ストップストップストーップ!


「あの、ヒルダさん? ちょっと公爵家にバレないようにご相談があるんですけど」

「そ、相談?!」


 目を白黒させながら私の顔を見て、本当に相談なんだと納得したのか、口に当てていた手を退けた。


「そ、そうよね。相談、相談ね? ほら、な、何か分かったのかしら?」

「あ、ええと、その、大変言い難いんですが、教団と繋がってるのはお父様ではなくてお母様の方らしいのです」

「なっ!?」


 ヒルダさんはお母様は疑ってなかったみたい。なんか理由あるの?


「ええ、お母様は昔から自分を着飾ることしか興味なくて、領政に欠片も興味を持ちませんでしたから。それよりもドレスやアクセサリーですね。私も随分と着飾らされました」

「ヒルダさんには興味あったと?」

「いいえ、私しか可愛い系の衣装が似合わなかった時期がありまして。もっとも、私が可愛い系を好まなくなってからは私にも大して興味はなかったみたいですけど」


 ヒルダさんが可愛い系? それはそれで興味があるなあ。というか確かにヒルダさんは黙ってたら可愛い系が似合いそうだよね。テオドールに似合う為に凛々しくあろうとしてるのかもしれないけど。まああのテオドールなら女の好みとかヒルダさんで固まってんじゃない?


「確かにあなたに対するお母様の気遣いはお母様らしくなかったわ」

「社交辞令じゃなくて?」

「そんなことする必要なんて無いもの。あなた、黙ってれば可愛いしね」


 私が、可愛い? いや、まあ、顔の造形はそこまで悪くないと思うし、同じ顔してるティアはあれはあれで反則だと思うんだけど、まずおっぱいに目がいくからなあ。私には無いものだ。少女よ、慎ましく、あれ。


「で、なんでそれが分かったの?」

「ええと、私の能力なんですが、ステータス見たら教団により洗脳中って」

「それ、私が見ることは出来る?」

「多分無理ですね」

「はー、つっかえ」


 酷い言い草だ。だからちゃんとした証拠は探さねばならないんですよ。お母様の自室に忍び込むとか。


「そういえば、テオドール……様のところで見つけたみたいな呪いの石みたいなのは探さなくてもいいんですか?」

「またあなたはテオドール様を呼び捨てにしようと……多分お母様は石では無いでしょう。よく出歩きますし」


 テオドールに使っていた石はかなりの魔力が注がれていたそうで、普通の人が浴びたら発狂してもおかしくないくらいらしい。テオドールってマジで英雄級なんだなあ。


「恐らくお母様はクスリをやってると思うわ。いわゆるセックスドラッグってやつね。間男でも連れ込んでるんでしょ」

「それっていいんですか?」

「お父様だってあちこちに妾がいるし、二人とも好き放題やってふわよ。私だって本当にお父様の胤なんだか」


 鑑定でステータス見た時はちゃんと公爵夫妻の子どもになってたから大丈夫だと思います。若い時はそれなりに恋愛感情あったんじゃないかな? それとも子どもを作るのは貴族の義務だから避妊とかしっかりしてたのかも。


「わかったわ。お母様の男性事情とかどうでもいいけど、公爵家に累が及ぶとなれば放っておけません。お母様が出掛けたら家探ししましょう」

「お母様、出掛けるの?」

「あの人、社交が仕事みたいなものだもん。それに服を見に行くのも好きだし。それから男のところに行ったりするんでしょ」


 両親のそういう話題にも大して動揺したものはなかった。テオドールがそういう事してたら発狂しそうではあるけど。まあテオドールなら大丈夫か。なんだかんだでヒルダさんにベタ惚れだもんなあ。

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