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混浴(episode67)

ちょっと字数多くなっちゃった。

 目が覚めたら旅館でした。なんかあの白い部屋に行くと寝た気がしないのよね。肉体的な疲労は回復してるから間違いなく寝てはいるんだけど。


 何となく疲れが取れないので朝風呂に行く事に。朝寝朝酒朝湯が大好きで身上をつぶしたとかいう歌があるらしい。朝湯はこの旅行だけだし、朝寝は好きだけど、朝酒は飲んでないから大丈夫だよね?


 風呂場に行くとなんか中が騒がしい? 何かやってんのかと思ってこっそり覗くと中には未涼さんが。なぁんだ、先に入ってたんだね。って声を掛けようと服を脱いでガラガラとドアを開けようとしたら、他にも人の気配。


 未涼さんじゃなければ誰? 凪沙はしっかり寝てたし、保乃さんも凪沙にしがみついてた。寝てる間、私にも凪沙にもしがみつこうとしてたんで、少し距離を離したんだよね。


 じゃあ他の部屋の人かな?って思って見てみるとなんとマコト君だった。ひょえー! えっ、女湯にわざわざ入ったの? マコト君ってそんな肉食系だっけ? そういや表になんか書いてあった様な……確か、「夜十二時から朝八時までは混浴です」って。


 今の時刻は朝六時。私も早い時間に目が覚めたもんだ。ってそうじゃなくて混浴って事は男女が同じ湯船に浸かるって事? あの三馬鹿が来たらどうしよう。いやいや、それ以前にタケルが、オーナーが来るかもしれない。タケルなら殴って気絶させてもいいけど、オーナーにそれするのはちょっとなあ。


「あの、洞爺丸とやまさん」

「未涼でいいわよ」

「ええと、じゃあ、未涼さん」

「なっ、何よ?」

「守れなくてごめんなさい」


 マコト君は未涼さんと保乃さんを連れて逃げてくれたからしっかり守ってたと思うんだけど、マコト君の考える「守る」というのは違うみたい。


 まあ少年マンガのヒーローみたいに敵をバッタバッタとなぎ倒し、みたいなのには憧れがあるのかもしれないけど、世の中は適材適所だよ?


「男のぼくがしっかりしないといけなかったのに、ティアさんや御簾深みすみさんにまで迷惑を掛けてしまって」

「何言ってるのよ。マコト君が殴りかかっても多勢に無勢だったでしょ。私たちを逃がしてくれて正解だったのよ。むしろ誇って欲しいわ」

「未涼さん……」

「マコト君が私たちを庇って立ってくれた時、とても嬉しかったわ。勇気がある人なんだって。とても、そう、とても素敵だった」

「未涼さん。いや、ぼくは未涼さんだけでも助けたくて」

「えっ?」

「あ、いや、そのっ」


 湯船の中で裸の二人が肌が触れ合わんばかりの距離でお互いを見つめて……あれ? 少女マンガかな? いやまあ二人は幸せなキスをして結婚とかそういうエンドでもいいんだけど、さすがにおっぱじめられたらまずいよね。


「うひょー、混浴だってよ!」

「マジかよ、誰か入ってんのかな?」

「巨乳! ぜってぇ巨乳がいいぜ!」

「ばーか、貧乳の方がいいだろ?」

「希少価値よりもありふれてるけどボリュームのある方がいいに決まってんだろ!」


 五、六人くらいの男性の団体客が混浴につられて来たらしい。私? 私は入り口近くのところにこっそり入って二人のやり取り眺めてたよ。未涼さんがとても焦った表情をしている。まあいざとなったら私が隠して連れて帰ろうか。


「未涼さん!」


 マコト君が後ろの岩陰に未涼さんを引っ張り込んだ。ほほう、そう来ますか。マコト君はそのままそこに入っている。


「おおっ、誰かいんじゃん」

「マジかよ! 可愛い?」

「いや、マコトだった」

「なんだよ、マコトかよ」

「いや、マコト可愛くね?」

「可愛いけどついてんだぞ?」

「だがそれがいい」


 マコト君は可愛いと思うけど、ちょっと貞操というかケツ穴がエマージェンシーな感じがする。


「や、やあ、おはようございます」

「おう、マコトも混浴狙いか?」

「あー、ちょっと寝付けなかったんでお風呂でさっぱりしようかなって」

「だよなあ。ま、まあ? オレらもちょっとさっぱりしたくてよ。女は、来てねえか?」

「あはは、一時間くらい前に地元のおばあちゃんらしき人たちが入ってたよ」


 どうやら地元のおばあちゃんは混浴とか関係ないらしい。後で聞いたら地元のおばあちゃんたちは朝の時間ならタダで入れるらしいよ。お肌美人だ。


「うわぁ、会わなくてよかった。萎んだ梅干し見せられても困るもんなあ」

「全くだ。来ねえかもしれねえけど、時間いっぱいまで粘るぜ」

「あはは……そうなんだ」


 マコト君の顔にヤバいという気持ちが現れる。ここは私が何とかする番かな? 私? 奴らが入ってくる前に光の屈折で私の姿は隠してるよ。


「未涼さん、未涼さん」

「ひっ!?」

「しっ、私です。ティアですよ」

「ティアさん? なんでこんなところに?」

「朝風呂しようとしたら未涼さんとマコト君がいたので。それよりも男どもに見つかるとコトですよ?」

「私の裸よりもティアさんの裸の方が需要あるでしょ?」

「何言ってんですか。そんな綺麗な均整のとれた身体しといて。ともかく出ますよ。私にくっついてください」

「こ、こう?」


 肌に未涼さんのぬくもりを感じる。私に百合の気は無いよ?


「水よ、あるべき姿を歪め、偽りを映せ。水門〈鏡花水月ミラーイメージ〉」


 さっきまで私の姿を誤魔化していた魔法を再度発動させる。ちなみにこの技、お風呂だから出来る技でもある。そこらに水蒸気が蔓延してるからね。こっそりこっそりと抜け出して、脱衣場に戻った。


「よし! じゃあ早く着て」

「待って、マコト君が!」

「あー、わかった。もう一回行ってくる」


 再び湯船へ。いや、待てよ? 私は別に見られても大丈夫なんだし、襲われてもどうとでもなる。となれば普通に入ろう。


「あれ? 先客が居る」


 白々しくならないように頑張ったよ!


「うひょー、ティアちゃんだ!」

「マジかよ! ラッキー!」

「揉みたいな、揉んでいいですか?」

「貧乳ではないがこれはこれで」


 評価してくる男ども。うん、改めてどれも筋肉が足りない。


「マコト君、未涼さんから伝言。ロビーで待ってるって。行ってあげて」

「えっ? あれ? うそ?」


 マコト君は慌てて湯船から上がって脱衣場へと駆けて行った。私はまあ、男どもに見られても平気かなって思って再び湯船に入ったよ。こっちが堂々としてたら向こうが萎縮するからね!

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