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聖水(episode63)

日付跨いじゃった。

 初めて知ったんだけど、この世界の人間には魔力がないらしい。正確には「魔力を活性化出来る因子が存在しない」という事になるのだろうか?


 前に凪沙とかタケルとかが魔法使えていたのは近くに私が居るからなんだとか。あと、私と一緒にいる時間が長ければ魔力の残滓が残ってたりするので使えたりするらしい。


 で、さっきは、私が保乃やすのさんの体内魔力を使う設定にしてたから出来なかったらしい。なんでそれがわかったかというと、白い部屋で女神様を交えて話したから。その話はまた後ほど。


 ともあれ、この時点ではその辺は謎だったので、もう一度やって、という保乃さんのお願いは却下した。だって人体にどんな影響出るかわかんないんだもん。


「ともかく、今のままでは信じられないわね」

「ええと、じゃあスプーン曲げます?」


 多分金属の形態変化なら金門の魔法で何とかなる。というかスプーンくらいの大きさなら大丈夫だろう。


「うーん、まあスプーン曲げはいいからなんか別のものを見せて欲しいわ」

「別のものって言われても」

「自然現象じゃあ起こりそうにないやつよ」


 自然現象を再現するのが一番手っ取り早いと思うんだけど、危なくないのは水を出すくらいかな。


「ええと、じゃあ手から水を出します」

「見てわかるんならそれでいいけど。ここ温泉だから濡れてても分からないわよ」


 まあ濡れるくらいでは無いので大丈夫だろう。それに水門は私の最も得意とするところだ。


「水門〈聖水ホーリーウォーター〉」


 私の手から水がドバドバと出る。未涼さんは目を丸くしている。保乃さんは目をキラキラさせている。凪沙は「飲めるの? これ」とか言いながら既に口に含んで「美味しいね!」って親指を立てた。サムズアップってやつだ。


「ほ、本当に水が出た!?」


 未涼さんは恐る恐るといった感じで近付いてくる。まあこの魔法、単位量辺りの魔力消費は少ないからほぼいくらでも出せる。魔力量こそはそこまで多くなかったんだけど、大気中から取り出せる分でなんとでもなるんだよね。


「これが、ティアお姉様の、聖水……」


 うっとりしながら保乃さんは水をこくこくと飲む。ちなみにこの聖水は教会とかで作られてるやつ。あ、教会って言っても教団とは何の関係もないよ。普通の街中にあるやつ。聖水も綺麗な水みたいな感じ。私が出してもアンデッドには効かないしね。


 八洲はコンビニで売ってるペットボトルのお水が一番近いかもしれない。まああれよりも美味しいとは思うけどね! じまぁぁぁぁん!


「美味しい、美味しいですよ、お姉様の聖水!」


 夢中になって飲んでる保乃さん。その言い方はちょっとやめて欲しい。


「ま、まあ、確かに美味しいわね。それとあなたの言う事も納得出来たわ」


 それからは未涼さんが私の言うことを全面的に信じてくれた。そして「他にはどんなことが出来るの?」とか言ってきた。出来ることは沢山あるけど、一つ一つ説明したんだけど、考えてる感じで私に何も言わなかった。


 次の日、観光組とお風呂を楽しむ組で分かれて行動する事に。私はお風呂でも良かったんだけど、未涼さんと凪沙が出掛けましょうって意気込んでたんで外出する事に。お土産買うんだって。私、買って渡す相手とか居ないんだけど。タケルにでも買うかな? いや、メイに買うか。


 温泉街のお土産屋なんてどこも同じようなもので、ご当地のお菓子とキーホルダー、木刀、後はなんかよく分からないオリジナル飲み物。まあお酒もあって、未涼さんと凪沙はこっちがメインみたい。いや、私この世界では未成年だから飲めないって言ったよね?


 私たちがわちゃわちゃやってたら三馬鹿が目ざとく私たちを見つけて突進してきた。なお、マコト君も後ろの方で涙目になってました。難儀だね。


「へぇーい、マイガールズ、おるぇたちとぅー、一緒にランデヴーしようぜぃ!」

「湯上りに火照った肌、いつもよりガード甘そうな雰囲気、サイコーじゃね?」

「迷ったコネコちゃんはオレたちが導いてやるぜ!」


 私たちは湯上りじゃなくてガードも甘くはないんだけど個人がどう感じるかは自由だからね。それがコネコちゃんとしての慎みだろう。


「なんかすいません。本当にすいません。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


 マコト君が一向に悪くないのに謝り倒している。なんだか可哀想になってきた。まあ虫除けくらいにはなるでしょって未涼さんが言うので一緒に歩く事にした。断ればいいのにと保乃さんは言ってたんだけど、人数増えた方が保乃さんの濃さが薄れそうな気がする。


「おい、どこ見て歩いてんだ!」


 浮かれていたのか三馬鹿がなんか髪の派手な男にぶつかった。前を見て歩けば良かったのに。


「あ、す、すいません」


 マコト君がすすすと前に出て謝った。もうマコト君、謝り慣れてない?


「てめぇにゃ言ってねえよ。な、ニイちゃん。どうオトシマエ付けてくれんだ、あぁ!?」

「あ、いや、そのー、お互い気を付けましょうって事で?」

「お互いじゃなくて、てめぇが前見てなかったんだろうがよ!」

「ひぃ!?」


 そして男たちは私たちの方をジロジロ見る。うん分かるよ。主に私と凪沙の胸を見てるね。約一名は保乃さんに熱い視線を注いでるみたいだけど、きっとそういう趣味の人なんだろうね。


「そいつら置いてけよ」

「はぁ?」

「そこの女ども置いてけばお前らは見逃してやるよ」

「ちょっと勝手に」

「わ、わっかりましたぁ!」


 私らが咎めようとしたが、三馬鹿は声を揃えて同意し、そのまま逃げ出して行った。後に残されたのは私らとマコト君。


「ひゃっひゃっひゃっ、情けねえなあ。同じ男として同情しちまうぜ。まあ悪く思うなよ。悪いのはお前らの彼氏どもだからな」


 いや、彼氏じゃないし。情けないのには同意するけど。


「待て!」


 そこに立ちはだかるマコト君。足をガクガク震わせながら私たちと男どもの間に立ち塞がった。


「こ、こ、この人たちには指一本触れさせるもんか!」

「さっきのガキじゃねえか。殴られてえのか?」

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