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第六十二話 陰謀

バカップルどもめ

 私の転移テレポートはいわゆる超能力だ。原理とかはよく分からない。空間の把握がどうこうとかいう授業を受けた記憶はあるけど、何の役にも立たなかった。私が発現したのは、こんなところから出て行きたいと強く思ったからだと思う。


 人の意志の力は魔法とは異なる。私は魔力が一切ないのはこの世界に来てから判明したことだ。それを考えると魔力というのも不思議なものなのだが、私がいわゆる試験管ベビーなるものだったのとは関係あるのかもしれない。


「ヒルダが色々と手を尽くしてくれてな」


 ああ、気付いたのはヒルダさんなのか。


「そのヒルダからもお前に礼が言いたいと言われてるのだが、呼んでも構わんか?」

「あー、まあ私はいいですけど」

「そうか、わかった」


 そう言うとテオドールはテーブルの上に置かれてあったベルのようなものを鳴らす。執事、ベルガーさんが出てくるかと思ったらそのままヒルダさんが出てきた。


「キュー殿、この度は、テオドール様をありがとうございました」


 深々と頭を下げるヒルダさん。なんか眼光が鋭いんですけど。


「狭い部屋、年頃の男女、何も起きないわけはなく……」


 何かブツブツ言ってますけど。


「テオドール様がその逞しい腕でキューを抱いて、抱いて、抱いて……ふぉぉぉぉ!?」


 いや、落ち着け。ヒルダさん、私はテオドールに抱かれそうになったら全力で抵抗するで、拳で。いやまあ、テオドールの膂力とか考えたら到底抗えないんだけど。


「ヒルダ、落ち着け。オレの嫁はお前だけだ」

「テオドール様……」


 うるうるしながら見上げるヒルダさん、決めポーズしてるテオドール。いや、そういうのは二人の時にやってくれ。


「あの、それで、ヒルダさんがどのように」

「テオドール様の部屋の中にそういうのがあったのは知ってました。でも、なかなか手を出せなくて。魔力が呪いの宝石とリンクしていたので無理に取り除く事も」


 知ってたんなら何か対処した方がよかったんだろうけど、対処法なんか見つからなくて困っていたみたい。


「エドワードも遠ざけようとキツく当たってしまったのは申し訳なかったですわ」


 エドワードにキツく当たってたのはわざとだったんだ。まああの頃はテオドールの事も呼び捨てだった気がする。いや、陰では「様」付けて呼んでたんだけど。


「あ、あれはショック療法で」

「良いでは無いか、ヒルダ。私とお前は夫婦になるのだ。呼び捨てで構わんぞ」

「いえ、テオドール様を何とか屋敷から遠ざけたくて……」

「まったく、奥ゆかしいやつよ」


 ヒルダさんが奥ゆかしい? 言葉って難しいね。いや、決して奥ゆかしくないとは言わないんですけど。


 なんでもテオドールは家から出たがらないのではなく家から出たくないように呪いが掛かっていたらしい。


 なんでもリンクマイヤー公爵領を足がかりとしてこの国を崩していこうという企みだったらしい。


 教団関係の奴らが何を考えてるのかは分からないが、この国を蝕もうと画策しているらしい。ということはこの前の襲撃もその流れの中だったのだろう。


「王都の冒険者ギルドでは大暴れしてたらしいな」

「暴れてたのはグスタフさんとウィリアムさんですよ」

「ふん、颶風に弾箭か。ゴールド二人でもなんともならんかったか」

「テオドール様なら何とかなりましたか?」

「いや、無理だろう。デカいの相手ならなんとでもなるが対人戦闘はその二人ほど得意では無いからな」


 サイクロップス倒した時のテオドールは凄まじかったと思うけど、確かに対モンスターと対人は違うわなあ。私はどっちもごめんだけど。


「ところで、領内に怪しい動きをする奴がいるんだが、教団との関わりを掴めなくてな。なんかこう便利なのはないか? 転移みたいな」


 テオドールは私のことを未来の世界のネコ型ロボットだとでも思ってるのだろうか。出前迅速落書き無用だよ! 意味わからないけど。


「まあ出来ないことはないですけど」


 まあ鑑定サイコメトリーがあるからね。嘘ついてるかどうかなんですぐにわかるよ。


「そうか。じゃあちょっと力を貸してくれ」


 そう言ってテオドールは私を地下牢に連れて行った。そこには商人姿の男が数人いた。えっ、もしかして怪しいヤツを全員捕らえてたりするの?


「今からお前らを取り調べる。嘘など吐かん方が身のためだぞ」

「テオドール様、我々は無実でございます!」

「そうです、いくらなんでも横暴すぎますぞ!」

「商業ギルドに申し入れて抗議をさせて貰いますからな!」


 なんかきゃあきゃあ喚いてるから鬱陶しいんだけど、一人ずつ調べてみよう。悪徳商人、悪徳商人、悪徳商人、無罪、教団員……いたぁ!


「この人が教団関係者。それと、こっちの人は何の罪も犯してないから解放してあげて」


 ちなみに無罪の人はこの中で一番悪人顔していた。人は見かけによらない。街中を歩いている時に子どもが泣いていてそのそばにいたので捕まえたそうな。捕まえたやつはよっぽどの早とちりだったんだろう。


「後テオドール様、そこの役人も教団関係者だから捕まえて」

「なんだと! おい、そいつを捕まえろ!」

「そんな、私よりもその女を信じるんですか!?」

「こいつはオレの恩人であり、公爵家の恩人だ。信じるに決まってるだろう」

「くっ!?」

「連れていけ! そして吐かせろ!」


 いやいや、それ、私の役目じゃないの? とりあえず接触テレパスで心を読めばいいかな。


「まずは、貴様らの目的を教えてもらおう」

「も、目的など、閣下。我々は公爵家と良いお取引が出来ればそれだけで」


 よく言うよ。そんなこと思ってなくて、公爵家の内部が荒れれば十分、そして、エドワード様を暗殺……ってえええええええ!?


「エドワード様を暗殺ぅ!?」

「なっ、なんだとぉ!」

「ど、どうしてそれを!?」


 語るに落ちるとはこの事か。まあ心読んだのにびっくりしたんだろうね。それから拷問の時間になりました。詳しいことは私の口からはとてもとても。

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