表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

122/427

再泉(episode62)

気持ちよかったみたいです

 肝試しから帰ってから保乃やすのさんの様子がおかしい。いや、社会的におかしいのは今まで通りだからそれはいいんだけど、凪沙だけじゃなくて私のこともお姉様って呼ぶようになった。あの、私、多分保乃さんより歳下なんですけど。


 あ、三馬鹿は特に役に立たなかったからそのまま帰した。人数合わせのマコト君には悪いけどあの三人の監視は任せた。


「ティアお姉様?」

「あ、あの、保乃さん。その、私の方が年下なのでお姉様というのは」

「精神的にはお姉様の方が上ですもの!」

「ティア? 後でお話があります」


 凪沙に呼び出された。湯船にゆっくり浸かりながら聞こうじゃありませんか。えっ? 保乃さんもお風呂に一緒に入るの? うーん、まあ仕方ないか。


 二人で湯船に浸かって離そうとすると保乃さんが寄ってくる。


「お二人で何のお話を? はっ、まさか、私を巡って争いが!? ごめんなさい。私の為に争わないでください!」


 いや、それ女湯でやる構図じゃないと思うのよね。困ったなあ。そう思ったら未涼さんが保乃さんを抑えてくれた。


「ここは私に任せてくれていいから」

「ありがとうございます」

「いいわ。その代わり何を話したのかは聞かせて欲しいわね」


 ううー、やっぱりなんか気付かレてる? まあ頭良さそうだもんね。


「それで、何があったのよ」

「ええと、保乃さんがクマの巣穴に居て」

「危ないわね」

「私がクマを退けて」

「待って?」

「おもらししてたから洗って乾かして」

「待って待って!」


 特に特別なことはしていない。洗濯ランドリーの魔法にしてもわりかし最近に出来た複合魔法とはいえ、いわゆる生活便利魔法って言っても差し支えないレベルだし。そんなにたいりょにはしてないからちょっとだけだよ?


「ティア、あんた、魔法使うの秘密にしてたんじゃなかったの?」

「あっ」


 凪沙が大きくため息をつく。言われてみればこの世界には魔法がないのでなるべく秘密にしようと心に決めてたっけ。


「どうしよう、凪沙?」

「どうしようも何も……まあ少なくとも未涼には話さないといけないと思うわよ?」


 そうだよね。後で説明するって言っちゃったもん。となると未涼さんに話すとして、後は保乃さんか。


「まあ保乃は恩知らずじゃないから黙っててって言ったら厳守してくれると思うわ」


 凪沙的には保乃さんは信頼のおける人間らしい。それなら予め話してても良かったかな?


「……ティアに傾倒する前なら止めてるわよ。私から引き剥がそうとしてベラベラ喋る可能性もあったし」

「えっ、じゃあなんで今はいいの?」

「あんたがヒーローみたいに保乃を助けて惚れられたからよ!」

「ほ、惚れ!?」


 凪沙の突発的な物言いにびっくりしてしまった。いやでも大したことしてないよ?


「クマを退けたら十分すごいわ」


 なんでもクマが出没したら罠で捕まえるか、猟銃で撃ち殺すらしい。まあこの辺りは出てくるクマもそこまでいないので滅多に撃ち殺されたりはしないらしいが。


 だって単なるクマじゃん。魔物でもないのに何が怖いの? ちょっと強い人なら村人にだって対処出来るじゃない。むしろご飯として積極的に狩りに行くよ。


「ティア、あのね、ここはそういう意味での危険は少ないのよ」

「あーまあそうよね。なんか別の意味で命の危険が連続したからすっかり驚いちゃった」

「よし、じゃあ未涼にはなんて説明する?」

「いやもうありのままでいいんじゃない?」

「ありのままだとタケルの事とかバレちゃうじゃない!」


 タケルの事がバレて何か問題があるのだろうか?


「タケルは、ほら、一応、四季咲のプリンスだから」


 ええと、タケルにプリンスなんて呼んじゃうのは多分凪沙だけだと思うんだけど。そもそも古森沢じゃん。確かに四季咲のおじいちゃんが乱入してくる事もあるけどさ。


「じゃあタケルの事は内緒で」

「それでいこう」


 私は保乃さんと未涼さんのところに戻った。


「来たわね」

「ああ、お二人の聳え立つ双丘、溜まりませんわ!」

「こら」


 未涼さんがコツンと軽くゲンコを落とす。まあ軽くなんで少し痛って顔をして直ぐに保乃さんは立ち直ったんだけど。


「じゃあゆっくり話してもらいましょうか。何を話すか相談してたんでしょう?」


 未涼さんにはどうやらお見通しらしい。とりあえず異世界云々は置いておこう。私の住んでた地方ではたまに私のような子どもが生まれて、不思議な力が使えるってやつ。まあキューみたいな超能力者とかいうんだっけ? そういうのもいるみたいだし大丈夫でしょ。


「荒唐無稽な話ね」


 未涼さんは信じてくれなかった。あるぇ?


「確かに超能力者が居るって話は聞くわよ? でもそれって結局インチキが多かったじゃない。手を触れずにスプーンを曲げられるとか、カードの裏に描いてある模様を当てるとか」


 なにそれ、面白い。あ、でもキューならどっちもできるだろう。なんだっけ、念動サイコキネシス透視クレアボヤンスだったかな?


「あんなクマを退かすなんて暗殺拳の一子相伝の伝承者でもなきゃ無理よ。それとも戦闘民族な宇宙人とか?」


 跳躍系の少年マンガみたいなことを仰る。詳しくは民明書房の書物で。


「ええと、クマを退かしたのは身体強化なんです。こう、力を私に集中させてえいって」

「身体強化? 今ここでできる?」


 そんなことを言ってもお風呂場でやると設備を壊したりしちゃうからなあ。そこは実演はまた別の機会にって事で勘弁してもらった。


「あの、ティアお姉様、あの、あの時の、その、気持ちよかったやつは」

「気持ちよかった?」

「あ、はい、その、私を助けてくださった時の」


 モジモジしながら保乃さんが期待に満ちた目で私を熱く見る。確か保乃さんがお股をお濡らしになっていらっしゃったから洗濯したんだよね。あれが気持ち良かったのか? あれ? 身体の方に防御膜張ってなかった? あれをやる時は相手の魔力を使って防御膜を張る様にって注意書きがあったから……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ