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魔法(episode7)

凪沙はティアちゃんは外国人なのかとおもっていました。

 男の一人、えーと金髪の方? うん、金髪なんだ。こっちの世界の人は黒髪だと思ってたんだけど違うんだね。もう一人なんか赤い髪してるし。でも根元の方は黒っぽいよね。もしかして染めてるの? 髪色で何か違うのかな? 緑の髪だったらアールヴって一発で分かるから身分を偽造しやすいとか? でもこっちにもアールヴって居るの?


 あ、そうそう。その金髪の人がタケルの事を殴り飛ばした。いきなりタケルの身体が吹っ飛んで椅子が壊れた。あらら、いきなり暴力ってもしかしてモンスターなのかな? よく見るとゴブリンとかオーガみたいなやつ? 人間に近い見た目のやつはいるけど臭いはそこまで臭くないんだよね。


「タケル!?」

「へっへっへっ、お嬢さんはこっちだぜ」

「放しなさいよ、このっ!」


 凪沙は腕を掴まれているものの、身体を捻って足をバタバタさせている。足が赤い髪の男のスネに当たった。


「痛てーな!」

「ばーか、油断してっからだ」

「このアマ!」


 怒りに任せて凪沙を守ろうとする。はっきり言えば来るのがわかってるパンチなので避けられると思ったんだけど、凪沙は捕まってるからなあ。


「よいしょ」


 私は凪沙の傍に行くとその拳を受け流す様に逸らし、凪沙を抱きとめた。


「大丈夫?」

「う、うん」


 凪沙のほっぺたが赤い。どこかにかすったのだろうか? それとも熱でも出てるのかな?


「邪魔するんじゃねえよ!」


 正直言えば拳も蹴りも怖くもなんともない。だって剣技の先生が私をしごいていた打撃の方が痛いし速かったもの。それに、隙だらけだ。恐らくその辺の魔物にも勝てないだろう。


「ねえ、凪沙。こいつら殺しちゃっていいの?」

「こっ、殺す!? 殺すのはダメ!」

「あー、ダメなのか。了解。動けないくらいにしとくね」

「てめぇ! オレたちをナメやがって! 女だって構わねえ。ぶっ殺してやる!」


 正直、冒険者ギルドにいるチンピラ以下だ。あいつらは平気で武器を抜くからね。こいつらは武器すらも持ってない。


 人体を相手にする時に、人体は真ん中の線にそって急所があると聞いた。そこを突けばいいんだろうけど、普通は弱点とか庇うからなあ。え?


 私は目を疑った。だってこいつらは真ん中の線を隠そうともせずに、真正面に威圧的に立ち上がったのだ。いやいや、確かに威圧するならそのやり方でもいいかもしれないけど、威圧が通じなかったらそのまま弱点に打ち込まれるよ?


「くたばれ、こるぁ!」


 大振りのパンチ。いや、もう狙ってくださいと言わんばかりの攻撃だ。なんかやる気かなともう一人の赤い髪の方を見たけど何にも言わない。


「こらしょ」


 再び私は赤い髪の男の動きを注視しながら、向かってくる金髪の顎に下から掌底を入れた。来るのが分かってる、それも軌道もバレバレな攻撃なんて当たる訳がないし、当たってもたかが知れてる。もちろん、攻撃の際に身体強化を軽くかけておく。


「げふぅ!?」


 金髪の男はふらふらしながらそのまま隣のテーブルに倒れ込んだ。誰もいなくて幸いだ。


「てめぇ、良くもケンを!」


 赤い髪のと男が激昂して私に掴みかかってくる。いや、だから、そんな隙だらけで向かってこられても。私は素早く後ろに回り込み、金的を思い切り蹴り上げた。というのも、金的にはだいたい蹴り上げ防止のための鎧があるので、衝撃で黙らせてしまおうという事だ。


 ただ蹴った瞬間の感触が硬いものではなく柔らかいものでそのまま何かが弾けた様な感覚があった。もしかして防いでなかったのだろうか? そんなバカな。初心者の冒険者でさえ覆う弱点だぞ?


 だが、図らずも赤い髪の男が泡を吹いて倒れた事からやり過ぎたかなと反省していた。


「あの、凪沙、ごめんなさい。ちょっとやり過ぎたみたいで」

「すごーい、すごいすごいすごい! ティアちゃん強いんだね!」

「あ、いえ、私などは兄たちに比べるとそんなでも」

「十分強いよ、すごいなあ。それにひきかえタケルは」


 そう言いながら凪沙は心配そうな表情でタケルを見る。タケルは頭から血を流していた。


「いてててて、二人とも大丈夫だった?」

「ええ、ティアのおかげで……ってタケル、血、血が出てる!」

「ほ、ほんとだ、うわぁー!」


 どうやら血を見た事でパニックになったみたいだ。いや、その程度の出血でとは思うけど。一応治しておきますか。二人は治癒の魔法は使えないのかな?


「水門 〈癒しの水〉」


 私の手から魔力が出て青い魔力が頭の傷を洗って治す。うん、傷口を綺麗にもしてくれるから便利なんだよね。


「ちょっ、ちょちょちょちょちょちょ」


 なんか凪沙が壊れた。大丈夫なんだろうか? 頭を打った訳ではなさそうだけど。


「こっち! タケルも走るよ!」


 そう言って私とタケルの手を取って走り始めた。私は何がなんやら分からないけどそのまま連れられてついて行った。タケルは走るのあまり得意でないのかな? おっかなびっくりついてきていた。


 走って誰も居ない休憩コーナーで私は凪沙に壁に追い詰められた。これは、確か壁ドン? でもあれって男の人がするって漫画に描いてあったはず。


「何あれ!?」

「え? 何って?」

「あの強さもだけど、その後の、ほら、タケルの傷を治したやつ」

「あー、魔法の事?」

「まほう!?」


 凪沙とタケルの声がハモった。そんなに驚かなくても私が使えるのは初歩的な魔法だけだから。そこまで珍しくないでしょうに。治療院とかそこかしこにあるんだから。そりゃあまあ友だちに回復魔法使える人が居た方がお得ではあるけど。


「私が使えるのは水門の基本的な回復だけだから大したことないよ」

「魔法使えるだけで大したことだよ!」

「ねえ、タケル。あんた、この子どこから連れてきたのよ」

「どこって公園から」

「そういうことじゃなーい! ちゃんと説明しろ!」


 それからは凪沙が説明説明と暴れて買い物どころじゃなくなった。お鍋とかフライパンとか買って料理してみたかったのになあ。

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