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第六十話 奴隷

奴隷はなしです。

 私に魔力がないことは秘密なのでエレノアさんに相談することにしました。ま、まあ、お風呂くらいは街で入ってもいいよね?


 辺境の街、エッジには湯屋がある。これは森で汚れた冒険者が多くて街中で問題となったからだ。なので街の入り口の辺りに湯屋がある。無論、多くの人が利用出来るようになっている。お湯は汚れてない。これは清浄化の魔法が掛けられているからだそうだ。魔法って便利だね。


 冒険者なんかに身体を洗って入るなんてマナーは求めてはいけないのだだという。だから風呂に入った瞬間に浄化されるようになってんだと。いや確かに言っても聞きそうにない人は多いんだけど。


 ちなみに、ちゃんと洗ってから入る人もいる。そんな人も浄化は掛かるので洗い残しも安心なんだとか。先に洗う意味なくない? あ、魔法の場合はサッパリ感がないのね。そりゃあ自分で洗うわ。


 という事でエレノアさん、ベルちゃんさんとお風呂に入りながら雑談。ベルちゃんさんが居るのは、エレノアさんだけ誘ったらついてきたから。まあベルちゃんさんなら私の魔力がゼロな事も話していいかなと思う。多分喋るような人じゃないし。


「そうかー、魔力ないんだね。すごく不便そう」

「そうですか?」

「だって生活に魔導具使えないんでしょ?」

「それは、そうですけど」


 私はそういうのが無いのが当たり前の世界にいたからなあ。いや、確かに研究所内はいたせり尽くせりの場合もあったよ? でも大抵は訓練とかでまともなものを食わせて貰えなかったり、風呂にも入らせてもらえなかったりしたもんね。冬の川でやる水浴びは寒かったよ。


「キューちゃん、あなた奴隷を買いなさい」

「えっ」


 エレノアさんの口から奴隷なんて言葉が出てくるとは思わなかった。奴隷を、買う? 私が?


「そうよ。最低限の衣食住の世話が出来るなら奴隷は悪くない選択だわ」


 考えてみる。まずは衣。私自身がおさがりなのか新品なのか分からない服を貰ってる身分だ。いや、お金はあるから買えないことはない。私自身が服に無頓着なので適当でいいと思ってるからだ。だって研究所にいた頃は白ワンピぐらいしか着てなかったもんね。


 次に食。私は食べられればなんでもいいが、他の人はそうはいかないだろう。となると奴隷には自分で料理を作って食べてもらうしかない。材料は色んなところから買ってこれる。ならば奴隷に必要な技能は料理だ。


 最後に住。これはあの別荘に住めばいい。近くに集落もあるらしいから買うものがある時は連れて行ってあげよう。


 エレノアさんのポイントとしては、私に秘密にすることがあるから奴隷を買って秘密をバラさない様に約束する必要があるのだとか。


「どうやってバラさないようにするんですか?」

「首輪にそういう機能が備わってるのよ。魔力を流せばその人に逆らえなくなるわ」

「あの、私、魔力ないんですけど」

「あ」


 なんとも間抜けな話ではあるが、魔力がない事を秘密にさせるのに、魔力を流さないと発動しない首輪を使うのはどうかと思います。


「だ、大丈夫よ。ほら、首輪に魔力を流すのはキューちゃんでなくてもいいし」

「いや、それ、私が奴隷を買う意味あります?」

「ダメかあ。いい考えだと思ったんだけどなあ」

「あ、じゃあエレノアさんがやってあげれば」

「……私はギルドサイドの人間だからね。キューちゃんの秘密とギルドの利益、どっちを取るかと言われたらギルドを取るわ」


 エレノアさんは甘い言葉で誤魔化さず、きちんと明言してくれた。そんなだからエレノアさんがまだ私の味方であると理解出来る。


「となれば、奴隷でなくとも人を雇えばいいんだけどね」

「でもそれだと秘密が」

「だから、秘密がバレないように契約で縛るのよ。契約の魔法なんだけど、まあ使うのは契約した本人の魔力だからキューちゃんに効力がないくらいね」


 私に効力が、ない。うーん、まあ確かに魔力がない人を魔力では縛れないって話か。いや、約束はなるべく守るよ?


「そうと決まれば近くの集落でお手伝いさんを探そう」


 エレノアさんとベルちゃんさんは転移で私の家に着くなり、ベッドにダイブした。グスタフさんとウィリアムさんがお金出したのに、最初に布団使うのがエレノアさんとベルちゃんさんになるとは。まあ女の子の匂いが付くから許してくれないかなあ?


 翌朝、エレノアさんは冒険者ギルドを無断欠勤して、私に付き合ってくれることになった。実はエレノアさんは私のサポートをするようにアリュアスギルドマスターから言われていたらしい。つまり、事後報告で解決したわけだ。


 なお、ベルちゃんさんは普通にサボりです。まあエレノアさんが何とかしてくれると思います。してくれるよね?


 近くの集落にお邪魔した。小さい集落で、山羊を飼っている。ミルクはいつでも飲めると自慢された。羨ましくは無いけどね。


「働き手? 給料が出る? そんなら村の娘っ子連れて行ってくれんかね?」


 どうやら村には働く場所がなくてお嫁に行く場所もない女性が何人か居るそうだ。男性の方が少ないんだって。そりゃあ仕方ないよな。


 みんなに私の家に来てもらう。移動手段? 私が転移テレポートで運ぼうとしたらエレノアさんに止められた。まあ歩いても一時間もしないところなんでとりあえず道があれば難しくない。


 みんな屋敷にびっくりはしていたが、大きくてすごい、じゃなくて、あの屋敷にまた人が住むのかみたいな反応だった。通いで家事をやるのはみんな快く了承してくれた。住み込みも出来ると言ったんだけどどうも嫌みたい。


 初日は掃除とお風呂の準備、あとは晩御飯を用意してもらった。みんな料理上手だったよ。お風呂も入れてもらった。なんかみんなで誰が私の身体を拭くかでジャンケンしてた。エレノアさんがなんでそこにいるんですか?


 お礼にお金を払うと女の子たちは喜んだ。なんでも街から行商人が来てくれるけどあまり現金を得る手段がないので買えないのだそうな。それは、ちょっと可哀想。

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