第五十九話 居宅
家GET
国王陛下から提示されたのは、二人の身分。というか生活費。二人が成人するまで国が補助するらしい。冒険者ギルドで働かなくても済むかな?って思ったら冒険者ギルドは続けるんだって。仕事覚えてきて楽しくなってきたみたい。というか将来的に冒険者ギルドの従業員になるからそのまま登用された方がいいんだって。
まあ考えてみると冒険者ギルドって割と福利厚生がしっかりしてそうだもんね。労働基準法とかないのによくやってるよね。
グスタフさんとウィリアムさんには現金らしい。まあどちらも金級ってことでお金ぐらいしか酬いれないらしい。爵位とか嫌がったって話らしい。むむう。
私もお金にしようかと思ったけど、あんまりお金をたくさん持つのもなあって思って。そしたら、なんか家をくれるらしい。ふむ、王都に家を貰うのも悪くない。私なら転移でどこでも行けるからなあ。あ、それなら田舎の方に欲しいかも。近くに海とか欲しい。あ、いや、海だと潮風でベトベトになったりするか。
「ふむ、ならば山の方に別荘を持っとる貴族がおったな。確かもう没落しとったが」
「なるほど。でもあれは誰も貰い手が居ませんでしたが」
「だからよかろう。幸いにして内部は綺麗なのだ」
国王陛下と宰相閣下が話していてあれよあれよと決まっていく。という訳で家を貰うことに。いやうん、私もね、宿屋やギルドの宿直室暮らしはそろそろ卒業したいと思ってたんだよ。
国王陛下に別荘という名の家の目録をもらった。グスタフさんが場所を知ってて割と山の上の方だと教えてくれた。近くに集落もあるんだって。
せっかくだからと転移でグスタフさんを伴って現地に跳んでみる。現地は見渡す限りの野原だった。標高は少し高いみたいで山の中腹という感じ。風が涼しくて気持ちいい。
そんな中に確かに草原には似つかわしくない建物があった。本当に貴族の屋敷と言うには少し小さめの確かに別荘という趣だ。入口の鍵を開けて中に入る。
エントランスホールは広め。まあこれは貴族の邸宅なら一般的らしい。直ぐに二階に上がる階段がある。メインの通りはそのまま奥に続いており、そこに食堂と応接間が続いている。まあ私はそんなに大きな食堂は要らないんだけど。ついでに遊戯室もある。ビリヤードとかカードゲームとかやるのかと思ったらダーツの様なゲームらしい。的当てかあ。小型の弓で射るの?
その先は半地下に続く階段があり、台所とランドリールーム。食料庫とワインセラー、それから使用人用の食堂。こっちはキッチンが付設されている。私こっちでいいんだけど。他にも使用人の休憩室らしきところもあった。休憩室というか、寝室というか、もしかして住み込みの人がここに暮らしてたのかな?
表に上がって二階を見る。二階は寝室、ベッドはあるけど布団はないよ。すぐには寝れないか。それと書庫。まあ本は殆ど入ってないんだけど。あとは子ども部屋かな? 落ちないように窓が丸くなってる。そしてなんとなんと風呂場が二階にあるのだ! いやまあそりゃそうか。風呂入ったら寝るだけだもんね。湯冷めしない為にも二階にあるのは不思議でもなんでもないや。
そこから更に上には屋根裏部屋。物置みたいに使ってたみたい。ロープとか箱とか無造作に置かれていた。そこから外には出れるみたい。屋根に登れるんだって。なんかこうトランペットでも吹きたくなる景色だ。いや、吹いたこと無いけどね。
すっかり気に入ってしまったのでそれぞれ物を買おうと思って王都に戻る。グスタフさんが自分が金を出すから自分の為のゲストルームが欲しいとか言い出した。あのね、うら若き乙女のすまいなのよ? いや、グスタフさんに言っても仕方ないか。
仕方ないので二人分の布団を買っていく。ベッド、寝室の空きはあったからグスタフさんの分くらいは問題ない。というかグスタフさんに限らず来客用って事にしておこう。
食器とかは特にひと揃えだけ買っておく。いや、私別に作らないし。作ってもいいんだけど作れるとは言ってないしね。謎の物体ができる訳ではないから多分大丈夫。手順通りやればいいんだ。
衣服をしまうタンスは良いのか?って聞かれたから特に衣服は持ってないって言ったらベルちゃんさんのところに連れて行かれた。またお世話になります。で、なんで最初に出てくるのがドレス? それ、前も着ましたよね? えっ、これは新しく買ったやつ? ナンデ? アタラシイフク、ナンデ?
「君に着せようと思ったんだって。というか君が来てくれないとぼくが着せられるんだ。頼むよ!」
とはベルちゃんさんの弟さんのベン君の談。それはあまりにも不憫なので仕方なく着ることに。いや、似合わないのは分かってるよ。まあ悪い気分はしないけど。動きやすいのはジャージとかなんだけどこの世界じゃあ存在しないだろうなあ。
前に来た時に持てないからと遠慮した服も今は仕舞う場所があるからと持って帰らされた。アイテムボックスの事は言ってないから両手で抱えられる限りの服を持たされてそのまま転移。
次にタンスを買って来ようと思ったらタンスは注文してから作られるんだって。ウィリアムさんの知り合いの木工細工師に適当でいいから早く頼むって言ったら適当な仕事は出来んって言われてガッツリ作られた。適当っていい加減じゃなくてちょうどいい度合いでって意味だと思うんだけど。
台所道具はグスタフさんじゃ分からないってことでアンヤ婆さんに口利きしてもらった。鍛冶屋さんが手慰みで作った品だという事でかなり安くして貰えたよ。いや、使うかどうかは分からないけどね!
家の中に家具を設置していくのはアイテムボックスがあるから簡単なんだけど、グスタフさんやウィリアムさんが手伝いたいと名乗りを上げてくれた。きっと私一人だから大変だと思ったんだろう。お陰で楽は出来るけど。あ、お風呂は火門と水門の簡単な魔法で沸かすそうだ。あれ? 私、魔力ないんですけど? もしかして、お風呂入れない? 困ったなあ。