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肝試(episode59)

三峰、馬場、鹿島の三馬鹿トリオです。未涼さんの名字は洞爺丸てす。

 晩御飯は海鮮料理だと思ってた。ほら、お刺身とかそういうのがイメージであったんだけど、実際は刺身は出て来なかった。まあよく考えたらここ山の中だから新鮮な海鮮料理なんて望むべくもないんだよね。


 という事で何が出てきたかというと、イノシシ鍋らしい。味噌で味付けしてある滋味たっぷりな食材だ。他にもキノコなんかもある。マツタケとかいう香り高いキノコもあった。うん、確かにいい香りだわ。


「ティアさんはマツタケの匂い平気なのね」


 未涼みすずさんになんか言われた。私としてはいい匂いだと思うんだけど、とか思ってたら未涼さんが説明してくれた。海外の人、特に欧州なんかの人はマツタケの匂いを「蒸れた靴下の臭い」と感じたりするらしい。いや、靴下の臭いとか嗅がないでしょ。


 マツタケは土瓶蒸しが美味しいです。あと銀杏のホイル焼きとか。銀杏とか踏んだりするとものすごく臭いんだよね。これは公園で見かけるから分かる。でも、ホイル焼きにしたり、茶碗蒸しに入ったりするとたちまち美味しくなってしまうのだ! あ、串焼きにするのも美味しいよね。


 デザートは栗。モンブランっていうケーキは知ってるけど、栗まんじゅうなんてお菓子があるとは思わなかった。これはこれで美味しい。栗ってあのイガイガがついたやつだよね。ウニと似てるから間違わないようにって言われたけど、どっちも食べるのは中身だからなあ。間違わないでしょ。


 他にも梨とかぶどうとか果物も出てくる。秋の味覚というのはとてもいいものだ。お米も新米が出て美味しいしね。諾子さんの荘園からお米が送られて来るんだって。あの、荘園って八洲にまだ残ってたのね。


 ま、まあ、貴族の所有する領地と似てるというか割とそのままだからそこまで理解できなくはないんだけど。それを言ってしまうと、お金で土地を売り買いするというのがよく分からない。土地は貴族のものじゃないの?


 たっぷりの美味しいものを食べてお腹がはち切れそうになってる辺りで、男性社員が肝試しをしようと言ってきた。ちょうど四対四だからと強引に外へと引っ張り出される。


 男どもはチャラいのが三人と人数合わせなのか気弱そうなのが一人。この中にタケルでもいれば凪沙を喜んで押し付けるんだけど。


「ウェイウェイウェーイ! 夜と言ったら肝試しっしょ!」

「暗闇に浮かび上がる人影、それを退治するオレたち。控えめに言ってサイコーじゃね?」

「今夜は寝かせないぜ、コネコちゃん!」

「あ、あの、怪我がないように気をつけますので」


 バカ三人、最早名前すら出てこない奴らとただ一人、貧乏くじを引かされているマコト君。ああ見えて私らの中で一番年上だったりする。二十代後半には見えないよねえ。


 適当に作ったクジをひかされて、私は三バカの一人……誰だか分からないから馬助ってことにしとこう。凪沙は鹿助みたい。未涼さんが三助で保乃やすのさんがマコト君。


 馬助は私の肩に腕を回して抱きついて来ようとしたので避けました。接触されたくない。いや、これがね、もっと筋肉がこうがっしりしてる人だったら流されてもいいかなって思ったりはしてたんだけど、筋肉が足りないんだよね。プロテイン摂ってるぅ?


 凪沙もなんかイライラしてる。まああの鹿助の視線見たら分かるんだよね。明らかにおっぱいにしか目がいってない。


 未涼のパートナーの三助は少し縮こまっている。まあ男にも容赦ないもんね、未涼さん。


 違った意味でイライラしてるのが保乃さん。マコト君に「なんで、あたしが、お姉様以外と、回らなきゃ、いけない、のよ!」とか言いながらマコト君に八つ当たりしてるからね。なかなか理不尽である。順番的にはマコト君たちが最初、その後に三馬鹿の順番。だから最後は凪沙。


 ルールは簡単で、夜道を進んで、予めセットしてある御札を取って帰ることが任務らしい。いつの間に仕掛けてたんだ。


 最初の組は保乃さんが先にスタスタ進んで行ってる感じで、その後をマコト君が追いかけていた。十分経って未涼さんたち。それから私たちの番。正直言えばダンジョン内だとアンデッドが普通にいる世界にいたのに今更オバケ位でどうとかなるなんてないんだけどね。


「ティアちゃんはこういうの平気な方?」

「ええ、そうですね。あまり怖くはないです」

「そっかそっか。ならさあ、俺の為に手を繋いでくれたりしない?」


 何を言い出すかと思ったら馬助がそんな寝言を言い始めた。それは単なる単純接触効果を起こそうとしてるのか? まあとりあえず手を繋ぐくらいは良いかな、と思いながら鑑定技能で見てみる。


【馬場拓也 ウェイ系男子。彼女ナシ。ティアのおっぱいに釘付け】


 なんか思ったよりもすけべ一直線な結果が出たな。なお、オバケが怖いとかいうのは本当のよう。いや、それなら肝試しとかやるなよ。


 前の方からフラフラと歩いて来る人影があった。誰だろうとか思ってたらマコト君だ。少し泣きそうな表情が庇護欲をそそられるが男としてはどうかと思う。


「何やってるの?」

「あ、馬場君、ティアさん。あの、安美弥やすみやさん見なかった?」


 安美弥さんというのは保乃さんの名字らしい。いつも保乃さんと呼んでいたから覚えてなかったんだけど、馬助が「保乃ちゃん? いいや、見てねえなあ」って言ってたから間違いない。


「困ったなあ。途中ではぐれちゃって……一本道だと思ってたんだけどどこに行ったんだろう」


 心配そうにオロオロしてるマコト君。ともかく一人にするのもどうかと思うのでマコト君にも改めて目的地の御札をセットしてあるお堂についてくることに。


 しばらく歩いていると未涼さんと三助が居た。手は繋いでないみたいだ。未涼さんがいつもより凛としてる。


「未涼さん」

「あ、ティアさん。今からお堂? あれ? マコト君、保乃は?」

「そ、それが、はぐれちゃったみたいで」


 どうやら未涼さんたちも保乃さんは見てないらしい。しばらくして凪沙も追いついて来たが、凪沙たちも保乃さんは見てないそうだ。

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