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第五十七話 撤退

ウィリアムは女好き。弓使いイコール異性にだらしないイメージ。

 ゲーブルの目が血走ってる。あれは元々そういうのなのか、私の転移テレポートに苛立ったからなのか。いずれにせよ、長く眺めていたくはない。そんなに見詰めちゃいやぁん。まあ、私じゃハニーの域の色っぽさは出ないんだけど。ティアのおっぱい大きかったけど、私のは邪魔になるから成長しないように調整済みだからなあ。


「くたばれぇ!」


 目的物はビリー君が持ってる木の実だと思うんだが。激しく攻撃して割れたらどうするんだろう。いや、ヤシの実みたいに硬い殻があるから割れたりはなさそうだけど。


 もちろん私も簡単にやられる訳にはいかない。全力の障壁バリア。まあ正面にしか出ないんだけど。あ、これは大きいお友達と私との秘密ってことで。


「くっ、硬ぇなっ!」


 障壁に向かって武器を振るい続けるゲーブル。いや、怖い怖い怖い。ガキンガキンって音がするよう。あと地味に精神力削れるんだよね。出し続けるの。何せ念動サイコキネシスの応用だからその分考えないといけないんだよね。形とか範囲とか。


 今は範囲を前方一メートル四方の厚い壁みたいな感じでやってる。円形の方が丈夫だと思うんだけど、曲線は演算が間に合わない。範囲を計算してるんですよ。だから咄嗟の時は四角になるんです。縦掛ける横掛ける厚さで導き出せるからね!


「ちぃ、《不知火》、手を貸せ!」


 埒が明かなくなったからか、友軍に号令をかけるゲーブル。だけど、その友軍がいつまでもいるとは限らなかったりする。


 後で聞いたところ、この不知火だかぬいぬいだかと戦ってる弾箭さんは王都の冒険者ギルドでも三指に入る実力者なのだとか。まあ強そうだよね。小李広とか呼んだ方がいい? 鎮三山とかも出てきそうだね。グスタフさん辺りがそうかな?


 なお、グスタフさんは三指には入ってないんだって。何故なら辺境のエッジで活動してるからだってさ。まああそこは他にも「えいゆうさん」とか《氷の魔女》エレノアさんとか居るからね。「えいゆうさん」呼びなのはどうも強そうに見えないから。ごめんね、ギルマス。


 その三指に入るという弾箭さんが《不知火》って雑魚そうな男にいつまでもやられるとは思わないんだよね。そもそも不知火なんて名前、夜叉八将軍で姿もなくやられてやつじゃん。名前が舞とか幻庵とかなら強かったのにね。


「そいつならそこでのびているが?」

「なっ!?」


 弾箭さんの言葉にゲーブルは驚愕の表情を浮かべた。撤退かどうか迷っているところに奥から剣戟を交えながら《無明》のガトウとグスタフさんが出てくる。


「何をしている! 確保にしくじったのか?」

「す、すまねえ旦那。作戦は失敗だ。不知火がやられちまった」

「ぐぅ、猊下がお聞きになればどんなに落胆されることか。仕方あるまい。出直しだ」

「行かせるかよ!」


 グスタフさんが斬りかかったが、ガトウは動じない。


「馬鹿め。おのれの剣筋は既に見切ったわ!」


 ガトウが剣を弾き、グスタフさんの体勢が崩れる。そこに弾箭さんが矢を射った。


「ちぃ、《狂獣》、撤退だ!」

「了解。《不知火》は?」

「放っておけ。どうせ今回の件では何も知らされていない」

「ぐぐっ、仕方ねえ。さすがに担いでは逃げられんしな」


 ゲーブルが煙幕のようなものをばらまいて、煙の向こうにそのまま消える。体勢を崩したグスタフさんは追えず、弾箭さんの弓矢では煙の向こうは射抜けない。


 煙が晴れるとそこには誰も居なかった。まんまと逃げられた様だ。


「あー、逃がしちまったか。仕方ねえなあ」

「グスタフさん、お久しぶりです」

「おお、ウィリアムじゃねえか。すまねえ、助かったぜ」

「教団、と聞こえたので参戦しましたが何があったんですか?」

「まあ、積もる話は片付けてからだな。時間はあるか?」

「ええ、ちょうど依頼を終わらせてきたところですから」


 そういうと弾箭さんは倒れてる不知火を抱えて冒険者ギルドの拷問室へと連れて行った。


 その後、冒険者ギルドを片付けながら二人は色々話していた。本来は片付けなくてもギルドの人間が片付けるという話だったのだが、グスタフさんもウィリアムさんも自分の責任だからと進んで片付けていた。ゴールド級冒険者というのはこういう人格面も考慮されるんだろうか。


「しかし、グスタフさんも疲れてるんですかね? とてもじゃないですが、あの《無明》に負けるとは思いませんでしたよ」

「負けてねえよ! それにアンヤ婆を危険に晒すわけにゃぁいかねえだろうがよ。庇いながら戦うのも大変なんだぜ?」

「まあそうですね。しかし、それでもあの《無明》ってのは強いんですか?」

「ああ、強えな。タイマンでやっても運次第だ」


 あのグスタフさんに「運次第」なんて言わせるなんてどれだけ強いんだろうか。もしかして《無明》って人も本気出してなかった?


「底が見えませんね。しかしまあいつから子守りなんかする様に?」

「依頼だよ。エレノアからな」

「まあまあ、彼女も元気なんですね。それは良かった」

「お前、エレノアに会ったら凍りつかせられるぞ? なんであいつがエッジに行ったと思ってんだ?」

「アリュアスについて行ったのでは?」

「お前からのデートの誘いがしつこかったからだよ、この女好き!」


 ……どうやら戦闘時以外のウィリアムさんには気を付けた方がいいみたいだ。えっ、私は女としての凹凸に欠けるから心配はいらない? ほっとけ!


「改めまして。お嬢さん方。私はゴールド級冒険者の《弾箭》ウィリアムと言います。グスタフさんとはそうですね、昔馴染みといったところでしょうか」

「キューです。冒険者には成り立てです」

「ビリーです」

「リリィだよ」

「このちっこい二人が今回の依頼人……いや、まあハワード商会の血筋のやつだ」


 ハワード商会じゃ伝わらないと思いますが、それともグスタフさんもウィリアムさんもハワード商会知ってんの?


「なるほど。昔、王家に不思議な木の実を届ける途中で行方をくらました商人が居ると聞いていましたが。まさか教団が関わっていたとは」

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