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旅行(episode57)

温泉旅行行きたい

「あの、四季咲様、ありがとうございました」

「ふん、貴様らのためにやったことでは無い」


 深深と頭を下げるコトミさんにお爺ちゃんは素直じゃないのか、本心からそう言ってるのか分からないが、礼を拒んだ。


「もうお父様ったら。でもありがとう。凪沙ちゃんやティアちゃんを助けてくれて。晩御飯食べてく?」

「おお、おお、そうじゃな。諾子が作った晩御飯ならいくらでも入りそうじゃな!」

「御前様、あの、本日は経団連との会合が」

「そんなもんはナシじゃナシ! 諾子の手作り料理じゃぞ!?」


 お付の人が困った表情を浮かべている。


「お父様? お仕事は真面目にしてください」

「ううむ……おお、そうじゃ。それなら経団連の奴らをウチに呼べば良い。それなら諾子も文句はなかろう?」


 斜め上の提案来たんだけど!? そういうのって料亭とかで密談したりするもんじゃないの?


「はぁ。そんなに沢山おいでになっても椅子がありませんよ? もう、お父様? 終わったらデザートを用意しておきますので立ち寄ってくださいね」

「分かった。それで納得しよう。よし、行くぞ!」


 お付きの人が腕時計を気にしていたし、もう既に始まっているのかもしれない。ともかく追っ払えた。


「ひゃー、タケル君のお母さんってすごい人だったんだねえ」

「そうですね、諾子さん、いえ、その、お義母さんはすごいと思います」

「義娘のためならたとえ火の中水の中、草の中森の中」

「はいはーい、ストップストップ。とりあえず帰りましょう、諾子さん」


 私はなんか嫌な予感がしたので止めた。痴漢行為で捕まりそうなところは飛び込むのはNGです!


 コトミさんはまだまだ頑張るそうだ。身体壊さないといいけど。アケミさんも手伝うんだって。というかアケミさんはむしろ夜の部の方が真骨頂らしい。


 家に帰ってレッツパーリィナイッ。シャンパンはなかったけどジュースで乾杯した。私の世界では一応成人はしてるからお酒は飲めるんだけど。いや、八洲では成人してるかどうか関係なくてハタチまで飲めないんだとか。残念。


 もうひとつ、出来ないことにタバコがあるけど、あれは別にいいや。何にもいいことないし。いや、戦闘後の鎮静剤程度には使えるらしいけど。そもそも臭いが好きではないから吸いたくない。


 しばらくしたらお爺ちゃんとリュージさんが帰宅。なんで一緒なのかと言えば経団連とかいう奴らの一人がリュージさんなんだとか。帰ってくるなりお爺ちゃん放っておいて、リュージさんに飛びつく諾子さん。お爺ちゃん泣いてたぞ?


 まあそれでもデザートは美味しい美味しいと言いながら食べてくれたんだけどね。


 不格好なクッキーが交じってるのを見て、お爺ちゃんは「これは諾子のではないな。とすれば、おい、粗忽者、クッキーもろくに焼けんのか!」なんて凪沙を揶揄しようとしてた。


「ごめん。おじいちゃん。それ焼いたのぼくなんだ。やっぱり下手くそだよね」


 おずおずと手を挙げたのはタケル。お爺ちゃんはみるみる狼狽えて


「そ、そそそそそんな事はないぞ!? なんと、初めてのクッキーだったんじゃろう?」

「ああ、うん、お菓子作りとかよく分からなかったけど母さんに聞いて」

「そうか、タケルと諾子の合作……ううっ、そうか」

「この様な不格好なものをお父様に食べさせる訳には」

「諾子ぉ!? 後生じゃ! もう言わんから食わせてくれぇ。孫の、孫と娘の手作りクッキーを食わせてくれぇ!」


 平謝りしながらクッキーを貪り食ってたよ。ちなみに本当にタケルはクッキーを焼いてたそうだ。私と凪沙が頑張ってきたら甘いものが欲しくなるだろうからって。まあお爺ちゃんに粗方食べ尽くされたけど。


 その後、まだ人が居ないなら私が働こうかしら? なんて言う何処ぞの人妻さんのせいで、お店に急遽人が集まり、店を回せるようになったという。


「母親のメイド服姿はちょっと精神にダメージ喰らうから」

「大事な娘のメイド姿はワシだけが見ればええんじゃ!」


 などと犯人(?)たちは供述しているそうです。


 それから私たちはパチンコ屋に戻りました。新台の入荷やらが目まぐるしくあり、それなりに忙しい毎日を過ごしていた私たちにある報せが届きました。


「温泉、旅行?」

「そうよ、今年は温泉旅行なんだって」

「何の話?」

「社員旅行よ。決まってるじゃない」


 決まってないし、むしろ私は初めて聞いた。凪沙はなんか浮かれてる。でも、パチンコ屋の社員旅行なら私は行けないのでは?


「大丈夫。働いてる人はみんな社員ってのがオーナーの意向だから」


 なるほど。それなら私も行けるのか。あ、でも凪沙。それならタケルは来ないんじゃない?


「タケルは毎年駆り出されるのよ。だから旅先でも一緒なんだから。あ、べっ、別にタケルとか居なくても寂しくはないんだけど、さ」


 いまいち素直になりきれない、そして誰も求めてないツンデレセリフが飛び出した。ツン度合いは弱めだけど。


 そんな霜月の下旬、有名なワインが解禁され、宮中では新嘗祭にいなめさいという収穫祭が行われる辺り。我々はパチンコ屋をお休みにしてみんなで温泉旅行に来ました。


 お湯に浸かるなら別に家のお風呂で良くない?って言ったらまたそれとは違うって言われた。どう違うのかは体験しろってさ。解せぬ。


 宿のお部屋は四人一組。タケルはオーナーと二人部屋。当然何も起きない訳だ。


 私は凪沙とあと二人。未涼みすずちゃんって子と保乃やすのちゃんって子が一緒。


 未涼ちゃんはテキパキと仕事をしてくれるリーダー格というか委員長タイプ。頼りになります。メガネがキリッとしてる。


 保乃ちゃんは、凪沙に懐いてるみたいなギャルというかぶりっ子な子。キャイキャイうるさい上になんかやたら私につっかかってくる。これはあれだ。お姉様は渡さないわ!とか言ってくるやつだ。


 四人で荷物を置いたら早速お風呂場へ。今から楽しみだ。部屋にもお風呂はあるけどせっかくなんで大浴場へ。露天風呂らしい。外で入るの?


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