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汚客(episode55)

目標から100字オーバーしました。諾子さんを最後に出したからなあ(笑)

 タケルがオムライスを美味しい美味しいって食べている。凪沙が作ったんだよね、それ。いや、普段はバックヤードに料理担当の人が居るんだけど、タケルのは自分で作ってあげたらってその人に言われたんだってさ。


「それならメッセージは私を食べてで良かったんじゃ」

「そんな事言えるわけないし、メッセージを決めるのはご主人様よ!」


 お客様じゃなくてご主人様ってちゃんと言ってるあたり、このメイド喫茶に馴染んできましたね。悪くない。悪くないよ、凪沙。


 夕方近くになるとだいぶ暇になってくる。私たちは夜の時間帯はやらなくていいから夜は別の人たちが入る。有り体に言うと夜のお仕事をやってた様な方々だ。


 というのも、夜の時間はお酒を出すパブみたいな感じになるんだと。メイド喫茶とはなんだろう。昼間が喫茶店で夜がパブというのはあるのか? あるんだ。


「おはようございます」


 夜の部のお姉さんが出勤してきた。なんというか肉感的な身体の人も居れば、なんで? と思う様な小柄な凹凸に乏しい人も居る。


「みんなお店が潰れちゃったり、オーナーの方針が変わったりで追い出されちゃった子たちなのよ」


 そんな事を教えてくれた。その人たちもメイド服に身を包めばあっという間にメイトに……いや、あまりメイドには見えないなあ。水商売さが滲み出てるよ。これはダメかも。


「お昼の営業ではメイドらしくないから出せないけど、夜ならお酒も入るし、えっちなご主人様も多いだろうから誤魔化しきくのよね」


 コトミさんが苦笑しながら言う。もしかしたら夜にメイドとしての訓練みたいな形で実践研修をやるってこと? 色々考えてるんだなあ。


「ティア、帰ろう」


 凪沙がもう帰り支度をしていた。タケルが帰ったら素早く着替えてたもんな。タケルは表で待っててくれている。危ないから送っていくって。いや、多分私と凪沙の方が強いと思うけどね。タケルヒョロいし。


「おー、ここだここだ。ほら、入るぞ」

「おかえりなさいませ、ご主人様」

「そうだ、お前のご主人様だぞ、コトミ」


 コトミさんを呼び捨てにしたその男は下卑た笑いを浮かべていた。身なりはスーツ姿で立派なんだけど。歳はもうかなりいってる。頭の生え際が後退気味なので、全てが砂漠化するのも時間の問題だろう。お腹はでっぷりとしている。これはデブというよりかは中年太りというやつかもしれない。


「……こちらへどうぞ、ご主人様」

「うむ、悪いな。よし、お前らも入れ」


 そう言って外に声を掛けるとガタイのいい男たちが五、六人入ってきた。あらやだ、割と好みかも。でもスーツがちょっとピチピチなのは減点かなあ。


「おい、そこの女たちもつけろ」


 席に行く途中に私たちと目が合った砂漠化中年は私たちを指差した。まあ私服でも大きいとわかるおっぱいに視線が注がれてたからわかりやすいんだけど。


「申し訳ございません。その子たちはもう勤務を終えていまして」

「なんだと? このワシに逆らうのか? なんなら貴様の店の営業許可を取り消してもいいんだぞ?」


 どうやらこの店の営業許可が人質……物質ものじちに取られているらしい。コトミさんが困った顔をしている。


「あの、コトミさん。私たちまだ時間がありますから。ね、ティア?」

「あ、うん、予定とかは無いけど」

「決まりだな。では、ワシの席に着くんだ」


 いやいやながらもコトミさんの為と割り切って席に着く。指定された席はご主人様の両隣。両手に花という訳だ。


「おい、コトミ。酒だ。酒を持ってこい」

「……かしこまりました」


 コトミさんが持ってきたのはビールだ。トリアエズナマという呪文まである通り、店に入ってとりあえず頼むものとして知られている。八洲の中でも良く飲まれているサラリーマンの必須アイテムだ。


 ご主人様は注がれたビールをじっと見つめると、それをバシャンとコトミさんに掛けた。酷い!


「安酒なんぞ出しおって。もっと高いやつだ。この店でいちばん高い酒を持ってこい!」


 一番高い酒。そんなにこの人はお金持ちなのだろうか? コトミさんは「申し訳ありません」と謝りながら奥から高級そうなお酒のボトルを持ってきた。


「ふん、ドンペリか。それでいいだろう」


 後で値段を聞いたら五万とか六万とか言ってた。いや、お酒高いな。もしかしてお酒作って売ったら儲かるのでは? あ、お酒は勝手に作っちゃダメ? そうですか。


「ふう、高い酒だけあって美味いな。やはりワシにはこういう酒が似合うよなあ?」

「はい、その通りです!」


 凄くいい気持ちになってる砂漠化中年は両手を私と凪沙のおっぱいに回してきた。揉まれた。


「キャッ!」

「えっ!?」


 平気で揉んでくる砂漠化中年。顔がだらしなく緩んでいる。この店、こういう風に触るのはご法度だって言われてるんだけど。


「あの、やめてください!」


 凪沙が声を上げた。そうだよね。まあ私は別に揉まれても減るもんじゃないから揉むくらいなら許してやるけど。まあでもあまり気持ちのいいものでもないよね。


「おや、このワシに逆らうのか? どーしよーかなー。この店の営業許可取り消しちゃおうかなー」

「そ、そんな事あなたに出来るの?」

「おい、小娘。貴様、ワシは清秋谷せいしゅうやだぞ? 風営関係の店の営業許可はワシらの領分だ。その意味が分かるか?」


 清秋谷けいさつなのか、この人は。とするとこいつらはみんな警察関係者? というか警察関係者が恐喝してんの? いやまあその清秋谷に襲われた身としてはそれもあるかもって思っちゃうけど。


「分かったらその乳を揉ませろ。悪い話でもあるまい? なんならワシの愛人にしてやるぞ?」


 すごくいやらしい笑いをうかべる砂漠化。その時表のドアがきいっと開いた。


「凪沙ちゃーん、ティアちゃーん。晩御飯の用意出来てるのに帰ってこないから迎えに来たわよー。楽しいって思うのも悪くないと思うんだけど、残された私の事も考えて欲しいわあ。でもね、凪沙ちゃんがうちのタケルと二人でどこか行きたいって言うなら私はもちろん応援するわよ。その時はティアちゃんとメイでも呼んで祝杯でもあげるから早めに言ってね」


 そこに立っていたのは諾子さんだった。

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