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接客(episode53)

異世界のメイドは心を読めなくては。執事もね。

 オーナーに仕事休んでアケミさんの手伝いをしていいかと聞いたら快く許可してくれた。本当にいいのかな? しかも、給料とかはそのままオーナーがもってくれるらしい。太っ腹過ぎる。


 理由を聞いたら、そのお店のお姉さんというのがオーナーの行きつけの店の子だったらしい。へえ、オーナーもそういう店行くんですねって言ったら、「ああいうお店の子は色んな業界の人と話してるから情報を沢山持ってるからね」って微笑まれた。どこかの諜報員だったりする?


 まあとにかく、私と凪沙は二人してそのお姉さんのお店に行く事に。アケミさんが案内してくれた店はまだ開店前ではあるが、看板がしっかりついていた。メイディシュラボという名前で、可愛いメイドと美味しい料理を提供するところなんだとか。


「あ、ゲンゾーさん!」

「やあ、コトミちゃん。久しぶりだね」

「全然お店に来てくれなかったんですもの。寂しい限りです」

「いやあ、私も色々忙しくてね」

「わかってます、わかってます。で、そっちの二人が?」


 メイド服を着た長身のスレンダーな女性が私たちの方を見た。特におっぱいの辺りに視線を感じる。


「ほほう。これはたいそういいものをお持ちの子達ですなあ」

「お眼鏡に適ったようだね」

「もちろんです! ありがとね、アケミ!」


 コトミさんがアケミさんに飛びついてキスしている。親愛の情からだろうというのはわかるけど目に毒だ。


「コトミ姉さん、ステイ、ステイです。落ち着いて!」

「ごめんね。気持ちが昂っちゃった」


 てへっとばかりに舌を出すコトミさん。もしかしてこれが素なの? 天然もの? それとも養殖?


「じゃあ、サイズは聞いてるからこれに着替えてもらえるかな?」


 そうだ。服なんだから改めてつくらなきゃいけないだろう。即断即決とはいかないよね。なのになんでもうメイド服があるの? 私らスポット参戦だって言ったよね。


 凪沙と一緒にメイド服を手に取る。露出はそこまで深刻と言うほどでもない。まあ多分似合うんだろうなとは思う。お互いに着せ合いっこしながらメイド服を身に着ける。うむ、よく似合ってる。


「じゃあ挨拶の練習からね。おかえりなさいませ、ご主人様」


 メイド喫茶というのはメイドに扮した従業員が主人役である客の家で雇ってもらってるみたいな感じらしい。


「ご注文はお決まりでしょうか?」


 注文を聞く時は普通の喫茶店と同じ言い方らしい。あの、メイドみたいに、無言で汲み取るとかそういうのはなさそうですね。使用人が主人の意図と違うことをすれば当然罰せられる。だから必死で要望を聞くのだと。まあ、メイド喫茶ではそこまではしないんだって事だからいいか。


「お待たせいたしました、ご主人様。ごゆっくりどうぞ」


 これも言わない。「お待たせいたしました」なんて主人に使ったら、待ってることが分かっていて主人を平気で待たせた無能って思われるよね。ごゆっくりどうぞもだ。自分の家なんだからゆっくりするのは当たり前。わざわざ言うのは自分でゆっくり出来る努力しろよ、私らは知らんから。みたいな場合だよね。


 一応進言したけど、そういうのはこの八洲ではあまりないらしい。ここでもギャップってあるんだなあって思うよ。


「ありがとうございました。いってらっしゃいませ。早いお帰りをお待ちしています」


 終わりの時にはこうだ。いってらっしゃいませ、まではいい。その後の早いお帰りをお待ちしていますってのは愛人のところに入り浸りで滅多に本宅に帰ってこない場合に使うんだって思ってた。でなければ、メイドたちから嫌われてて、居ない間は好き勝手するから帰ってきて欲しくない時、みたいな。


 それを話したら、凪沙に「あんたは京都みやこびとかっ!」って怒られた。そういう文化もあるんじゃないかって話だったんだけど。


 ともかく、メイド喫茶は普通のメイドとは違うらしい。凪沙はあまり違うようには思ってなかったみたいだからやはり環境というか世界の差だろう。


 ともかく何回も練習して、普通に接客が出来るまでになったと思う。終わったら今日のバイト代ってことで晩御飯を奢ってもらうことに。


 向かった先は焼肉屋。炭火焼きの高級店、と言うには一段落ちる様な場所らしい。メンバーは、私、凪沙、アケミさん、コトミさんの四人。


 店に入ると美味しそうな炭火で肉を炙った匂いが蔓延していた。これはお腹が空く。アケミさんはすかさずビールを注文。凪沙はお酒を頼まずにオレンジジュースだって。私もそれで。コトミさんもお酒飲むのかと思ったら帰りが車だから飲まないんだって。飲んだら乗るな。乗るなら飲むな。


 飲み物と一緒にご飯ともやしスープがついてきた。空きっ腹にはよく沁みる。この八洲に来てから炊きたてご飯に初めて出会ったけど、これは相当に美味しい。炊くとかいう調理方法は不思議だね。


 肉がどんどん運ばれてくる。まずは牛タン。なんでも動物の舌の部分らしい。脂身が少なくコリコリして美味しい。レモンがよく合うのでさっぱりと食べ進められる。


 タンが終わると今度はカルビ肉らしい。位置的にはアバラの辺りの肉らしい。食べ応えがある。脂の乗ったロース肉、脂身控えめなヒレ肉もどんどん運んで来る。


 甘辛いタレにつけて食べると美味しい。ニンニクとかあると美味しいらしいんだけど、接客でニンニク臭いのはダメなんだって。それじゃあとニンニクの臭いを消すポーションを作ってみた。緑茶のカテキンっていうのから作れたよ。


 ニンニクの臭いを気にしなくて良くなった私たちは凄い勢いで肉を食べ続けた。やっぱり肉は豪快に食べないとね。あ、オカワリお願いします。


 みんなのお腹が脹れたみたいなので、消化を助ける薬を出しておいた。これは前に作っておいたものだ。食べすぎて動けなくなるのは良くないからね。


 なお、この前夜祭の資金提供はタケルとオーナーだったらしい。当日までお楽しみって言ったらせめてこれくらいはと言われたらしい。という事はタケルもオーナーも開店当日に来るんだろうね。あれ、なんか凪沙がどうしようどうしようってモードになってる? おおい、大丈夫?

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