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第五十二話 黒衣

狂信者って怖いですよね。顕〇会とか。

 なるほど。という事は結局番頭さんは助かったと思ったけどダメだったと。しかし、その男たちが起死回生の案を持ってきたのには違いないと思うのだけど。なんだったんだろうね。


「ビリー君、リリィちゃん、何か父親や母親から肌身離さず持っておきなさいって言われてたものない?」

「いや、ねーけど、いえ、ありません!」


 私の問いにビリー君が答えた。訂正しながら。エレノアさんが見てたからかな? いや、私相手は別に気兼ねとかしなくていいんだけどなあ。


「ハワード商会の事を聞き回ってるのは貴様か?」


 そんな感じで声を掛けられたのは私が冒険者ギルドに何か仕事がないかと見に行く途中の事だった。明らかに怪しげな風貌で、私は何の事だか予想はついたが、固有名詞に聞き覚えがなかった。


「あの、ハワード商会ってなんですか?」


 素直に聞いてみた。いや、よく分からないことはその場で聞いてしまうのが上手い社会人の世渡りだよって言われてたから。まあ研究所では人によっては「そんな事もわからんのか!」って怒鳴ってくる研究員クソヤロウもいたけど。


「…………そうか。邪魔したな」


 そのまま男は身を翻して路地裏に消えた。私は鑑定サイコメトリーで得た情報を精査する。


【名前:ゲーブル 所属:教団 人種:狂信者 職業:暗殺者】


 なんか凄い文字列並んでるんだけど? しかもこれ、レベルは? レベルとか無いの? いや、私自身にもレベルとか見えないけど。


(女神様:この世界にはレベルとかそういうのはありませんよ。人は努力して強くなるのです。ガンバ!)


 なんかムカつく言葉が頭の中に浮かんだ気がする。まあいいや、とりあえずこのままだとエレノアさんはともかくビリー君とリリィちゃん、そしてあのロリータお婆ちゃんが危ない。私は冒険者ギルドに急いだ。


「エレノアさん!」


 入るなり私はエレノアさんを呼ぶ。エレノアさんはギルドマスターの補佐役なので受付業務はしてないはずだ。


「あらキューちゃん。いらっしゃい」

「ベルさん、こんにちは」


 ベルちゃんさんに見つかってしまう。時間が遅いので、勤勉な冒険者は既に出てしまっている。ギルド内にいるのは職員と何故かぐたっとしてるグスタフさんだ。


「あれ? グスタフさん?」

「おお、キューじゃねえか。久しぶりだなあ」

「ええ、その節は色々とお世話になりました」

「しかし、良かった。無事だったか。狙われてたらどうしようかと思ったが、まあお前さんなら転移があるって聞いてるからな」


 狙われていたら? という事はもしかしてグスタフさんは何かを知っている?


「黒づくめ、教団の狂信者ならさっきそこで会いましたよ」

「なっ!? て事は転移で逃げたのか?」

「いえ、なんかよくわからない商店の名前を出されたので心底分からないという顔をしたら見逃してくれました」


 私の話を聞いてグスタフさんはどっと疲れが出たかのように座り込んでしまった。


「ハワード商会ってのはオレの父さんと母さんがやってた店だよ」


 そう言いながらお茶を持ってきてくれたのはビリー君。お菓子はリリィちゃんが運んできてくれました。えらい!


「そうなの? まあ、私は知らなかったんだけど」

「恐らく黒づくめは真偽の箱を持ってただろうからな。嘘じゃなくて良かったぜ」


 あー、またその真偽の箱なのか。割とメジャーな魔導具なのかね。というか私には通じないんだけどね。


「やっと来たわね。みんな、こっちに来てちょうだい」


 私たちが話しているとエレノアさんがグスタフさんも含めて私たちを会議室みたいなところに通した。


「先程、私がグスタフと一緒に居る時に黒づくめの男に襲われたわ」


 ビリー君とリリィちゃんが不安そうになる事を言わなくてもいいんじゃないかと思うんだけど、事が事だけに二人も狙われる可能性が高いもんな。


「まあオレは美人と御一緒出来てラッキーだったんだが。だが、奴ら、相当やるぜ?」

「グスタフさんは戦ったんですか?」

「いんや、お互いに街の中じゃやりづれえってなって退いたんだよ」


 グスタフさんはかなり強かった。初めて会った時に一撃でクマを吹っ飛ばしたぐらいだ。その前にズンバラリンとか言ってた気もするが、ズンバラリンにはなってなかったよ。


「だからな、調べた時に一緒に居たキューが危ねぇってんで迎えに行こうかと思ってたとこだよ」


 どうやら心配されていたらしい。いやまあ確かに転移テレポートがあるからどうにでもなると思われるかもしれないが、実際は掴まれると振りほどいて跳べないんだよね。接触したものは一緒に転移しちゃうから。まあ初見で見切れるかと言われたら多分大丈夫だとは思うけど。


「それよりもロリータさんは?」

「ええ、ドロレスさんにはお話ししてこちらに来てもらうことになっているわ。まあ今まで狙われてなかったから今更という気はするけど」


 確かにそうだ。ロリータさんが狙われるならとっくの昔に死体になってるはず。という事はロリータさんはわざと泳がされてるか、教団の手先って事になる。


 いや、教団の手先は無いか。だいたいビリー君とリリィちゃんに声を掛けてきたのはロリータさんだ。


 となれば、ハワード商会を探ろうとするやつを炙り出すための情報源として泳がされているんだろう。大した情報も持ってないと判断されて。


 しかし、そうなるとハワード商会には何か秘密があったのかも? ビリー君とリリィちゃんは知らない何か秘密を持っていたのかもしれない。


「まあさすがに冒険者ギルドにまで攻め込んで来ることは無かろうよ」


 グスタフさんがカラカラと笑う。あの、グスタフさん、それってフラグって言うんですよ? 言おうかどうしようかと迷ってると冒険者ギルドの扉がバーンと弾け飛び、黒づくめの男たちが十人くらい冒険者ギルドに押し入ってきた。


「ここに居たか。やはり合流したな」


 先程の男性、狂信者のゲーブルさんが最後に入って来た。白昼堂々と冒険者ギルド襲って来るの、この人たち。理性どこに行った?

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