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逢瀬(episode6)

三人でデート? いや、とりあえず生活必需品の補充です。

 ぱちんこ屋とやらで働き始めて一週間が過ぎた。やるべき仕事は沢山あるけど、そこまで考えなくていい単純作業の組み合わせだから覚えてしまえばスムーズに出来る。


「ティアちゃんは覚えがいいね」

「凪沙の教え方が上手いからだよ」


 凪沙は毎日では無いけどなるべく入っている時は私に教えてくれるし、居ない時はちゃんと他のスタッフさんに、丁寧にお願いしてくれる。


 私は休みは無いけど出ていればご飯は食べれるし、何も考えなくていいから楽だ。そんな時に私にもついに休みの日が来た。


 というか、休みにさせられた、と言うべきだろう。タケルがいつもぱちんこ屋に来るのでそんなにぱちんこが好きなんだろうかと思ってしまった。


 私はあのうるさいのがどうも好きにはなれない。もう少し小さくても聞こえると思うんだけど、よく考えると隣の台の音なのか、自分の台の音なのか分からなくなるし、聞き逃すよりかはうるさいくらいの方が文句も出ないのだろう。


 その、タケルがおじさんであるオーナーに私をいつ休ませてるんだ?って聞いたんだよ。でも、私としては休みの日とか言われてもどうしていいか分からないし、お金もないからそのまま働いててもいいんだけどな。元々冒険者としても休みの日って考えてなかったし。体調悪くないのに休むとかおかしくない?


「わかったわかった。つまり、タケルはティアちゃんをデートに誘いたいんだな?」

「でででで、デート!? ち、違うよ! 生活に必要なものを買わないといけないだろ!」

「サイテー」

「なんで凪沙までそんな事言うんだよ!」


 どうやらタケルと凪沙は割と仲良しらしい。幼なじみというやつなんだそうな。私の幼なじみとか居たっけ?


 そんな訳で今日は私のお休みの日。で、生活必需品を買いにタケルと凪沙も付き合ってくれるんだって。色々と助かるよね。あ、でも、私、買い物したことない。


「お待たせ」


 上下を青い服に身を包んだタケルが来た。なんか丈夫そうな服だなって思ったよ。


「ごめーん、遅くなった」


 凪沙は凪沙でタケルと同じようだけどスッキリしてるズボンと上半身は少しおへその出てる服。お腹出てるけどサイズあってないのかな? なんなら凪沙も一緒に買って……えっ? ファッション? 何それ?


「まずは服からだよね」


 と言われた。私は上下スウェットと呼ばれる服を着ている。とても動きやすいし、魔獣とかと戦うにも関節とかちゃんと動くから不意をうたれにくい。


 でも、二人に引きずってデパートとかいうでかい建物の中に。一軒の店に放り込まれて試着室とかやらに押し込まれる。中には凪沙が一緒に入ってきた。


「あの、凪沙? さすがに一人で脱ぎ着は出来るようになってますけど」

「だーめ。ほら着替えるよ!」


 そんな感じでどったんばったん大騒ぎしてたら一着目を着せられていた。世の中にはコルセットをつけないドレスとかあるんだなって思ったら普段使いなんだって。


 ズボンとスカート、そして上着を何着か買って、ローテーションで着ることでオシャレに見えるんだって。なるほど、勉強になります。


「次はランジェリーショップね!」

「あ、ちょっと用事思い出して」

「タケルも来なさい!」


 という感じでランジェリーとやらを買うらしい。ええと、必要なのかな?


「いらっしゃいませ、まあ、またこれはご立派なものをお持ちで。でもブラはしていらっしゃらないんですか?」


 ブラというのが何なのかは分からないけど多分知らないからしてないんだろうと思って頷く。店員さんはこの世の終わりみたいな顔をした。


「なんということでしょう! 形が崩れてしまいます!」


 店員さんに引っ張られて再びあの狭い部屋に。そこで私は寸法を測られた。なんかえふとかじーとか言ってたけど、なんだったんだろ。


「ごめんなさい、大きいサイズは在庫とか種類とか無くてあまりかわいくないのよ」


 手に持っていたのはピンク色の二つの膨らみがついてる紐。何に使うんだろうって思ってたら凪沙に羽交い締めにされた。危害は加えられないとわかっているけど、ちょっと怖い。


 快適だ。まさかこんな世界があるだなんて思ってもみなかった。冒険者の人の中には布を巻いたりして潰す人が多いみたいだけど、剣とか弓とか使うのに邪魔だから削ぎ落とすって人もいたよね。あと、走ると揺れて重い。


 それが、完全に自立している。とても動きやすい。ブラジャーバンザイ。大きさが同じやつをいくつか買っておこう。可愛さとかは別にいい。誰に見せる訳でもないから。


「そろそろご飯食べよ」


 そんな感じで連れてこられたのはフードコートと呼ばれる飲食施設。大きな広場に食べ物のお店が色々並んでいて目移りする。


 タケルに席取りを任せて私たちは何の食べ物を食べるかを吟味する。なるべくお箸を使わない方がいいという私の意見を汲んでくれて、手で食べられるハンバーガーというやつに。いや、ちゃんと箸を使う練習はしてるんだけどなかなか上手くならないんだよね。なんか豆を使った修行もあるみたいだけど聞くからにやりたくない。


 三人分のハンバーガーを買って席に戻っていると、二人組の男に声を掛けられた。なんか体格はいいけど、鍛えてるわけじゃなくて見せかけの身体つきみたいな。


「はぁい、お嬢さんたち、そんな芋助ほっといてオレたちと楽しいことしようぜ」

「間に合ってるわ」


 凪沙はピシャリと跳ね除けた。うん、間に合ってる。というか今から食事という楽しい時間の始まりなのに水をさされたら困る。


「はぁ? その男じゃ満足出来ないだろ? オレたちがヒーヒー言わせてやるって言ってんだよ!」

「私たちはタケルで満足してるからあっちに行ってちょうだい」

「や、やめてくれ。彼女たちも嫌がってるじゃないか!」


 そこで適当にあしらってる凪沙の横で意を決したようにタケルが立ち上がる。いや、こんなのほっといて食事にしようよ。


「なに〜? てめぇ、いい度胸してんじゃねえか!」


 とうとう怒り出しちゃった。いや、私は早く食事がしたい。先に食べちゃダメかな? ダメだよね。

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