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『ボクはネコ科の男』  作者: 髙山志行
7/8

『たいへんだ~!』

“Won! Won! Won!”

『あれ・あれ?』

 いつもは「優雅」で、いたって「お上品」なのに…。


“Won! Won! Won!”

『よっぽど美味しいんだな』

 野良ちゃんにゴハンをあげた時のように、唸り声を上げながら食べている。


“Won! Won! Won!”

『やっぱり外人なんだ』

 そう思ってしまう。


 母がどこかから養子にもらってきた、『ヒマラヤン』の男の子。


(『ヒマラヤン』とは、『シャム』と『ペルシャ』のハーフ・ブリード)。


 青と茶。右と左の目の色が違う“オッズ・アイ”


(なんでも、かの有名な英雄「アレキサンダー大王」もそうだったそうな)。


 通った鼻筋と両耳の先あたりに茶の混じった、白いフサフサの毛。

 ムクムクしているので、名前は「ムクちゃん」。


“Won! Won! Won!”

『なるほど! やっぱり外国人だから、肉食なんだ』

 父が間違えて買ってきた、肉系の“ドッグ・フード”。試しに食卓に出してみれば、先の状態とあいなった次第。


 なんでも「ネコはサカナ」という図式は、日本特有のものだそうだ。まあ「日本固有」という事もないのだろうが、もともと「魚食」主体だった日本の食文化。そんな環境の中で代々育ってきた日本のネコちゃんたちだから、「おサカナくわえた野良猫」となるんだそうだ。


(ゆえに、「肉食」文明のネコちゃんたちは、魚に見向きもしないらしい)。


“Won! Won! Won!”

『おっとり「草食系」だとばかり思っていたのに…』

 男なので、そこそこの図体だが…


(もっとも、その毛量のボリュームで、ふた回りくらい大きく見えるが…シャワーしてやったりすると、情けないくらいに細くなるので、体重もさほどではない)。


 膝の上に載ってきては、手慣れた仕草でクルリと丸くなる。いたって「甘え上手」なところなど、まさに「愛玩動物(ペット)」。


(この表現には、ちょっと抵抗がありますが…)。


 なにしろ、こんな事があった。


 ある日の晩。

『たいへんだ~!』と言わんばかりに、みながくつろぐ居間に飛び込んできた「ムクちゃん」。


『たいへんだ~!』


 玄関を入ってすぐの、ほとんど物置と化していた和室とリビングを往復しては、何かを訴えかけているようだ。


「どうしたの?」


 着いて行ってみると…


『すっかり野生を忘れてる!』


 チョコンと、赤い目の小さな家ネズミが一匹。その存在を、さかんにアピールしていたようだ。


「イヌは番人・ネコは狩人(かりゅうど)

 太古の昔から、そんな役目を(にな)って、人類と共存してきた犬猫たち。


(特に伝染病の予防のために、戦後、かの「北里柴三郎」先生も、家庭でネコを飼う事を奨励なさった)。


 かつて、もっと「ネズミ」の被害が多かった頃は、「(まかな)い」をつけてでも、「用心棒」のニャンコ先生のお世話になったわけだ。


(ロシアの「エルミタージュ美術館」は、今でも夜間、ネズミ被害防止のため、ネコを放し飼いにしていると言う)。


 犬が臭いをつけて回るなんて、天敵がいなくなった状況下で、飼い慣らされてしまった証拠なのだろうが…それにひきかえネコは、ちゃんとトイレの穴を掘る。


(犬の“マーキング”の反対で、「臭い消し」のためなのだろう。野生界では、臭いを放つなんて、敵に自分の存在を気取(けど)られ不利になるのは明白だ)。


 誰に教わるでもなく、そんな行動をとるネコちゃんたち。

『きっとそういうプログラムが、本能に組み込まれてるんだろう』と、ボクはずっと思ってたのだけど…


『たいへんだ~!』


 自分で、どうこうしようという気は、まったく無いようだ。でも…


『まあいいか』


 なにしろ、ネコのもうひとつの仕事は…


(最近では、こちらの方が重要なのですが)。


「可愛がられること」なのだから…。


 そんな「ムク毛のニャン」だったが、やっぱり男の子。年頃になった秋口に、旅に出たきりになってしまった。

 フケたネコのオスが「家出」同然になる事は、よく知られた事だが…たとえば「お猿」。成長すると、メスは群れに残るが、オスは出て行く『母系社会』なんだそうだ。


(「チンパンジー」と近縁の『人類』も、「もともとは、そうだったろう」という説があり…それが、「(実は高貴な生まれの)流れ者が、(しいた)げられていた民の娘と恋に落ち、やがて皆を率いて、圧政を()いていた独裁者を打ち倒す」といった「英雄(たん)」…古くは『アーサー王伝説』や、近々では『スターウォーズ』などの原型なんだそうだ)。


 もしかするとそれは案外、人間界でよく耳にする「お父さんのパンツといっしょに洗濯しないで!」などといった事が、真の原因かも?。


(もちろん、何事にも、例外はあるだろうが…きっと「近親相姦」防止のため、これも本能に書きこまれているのだろう)。


 だから、「外婚」を信奉する女性が、意外とたくさん存在するのだろう。


(これに関しては、遺伝子に組み込まれた本能「血が濃くなりすぎて、エラーが出るのを防ぐ」といった事にも、起因しているのだろうと思っている)。


 親の『子離れ』については、「ライオンは、我が子を崖から突き落とす」とまではいかないものの、「それ的光景」を目撃した事がありますが…それはまた、別の機会に。


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