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興味ある物の事ならオタクじゃなくても早口になっちゃうよね

 ややこしい説明パートです。

 背後から突然声を掛けられて、明らかにキョドる僕。


「何よ、その反応……」

「いや、まさかヨルハから話し掛けてくるとは思わなくて……」

「失礼ね。食堂でも声を掛けたでしょう?」

「僕が言った事にはまともに返してくれなかったくせに」

「あ、あれは!…………そんなのどうでも良いから私の話を聞いて!」

「はいはい。それで、どうしたの?」


 昼のあれって僕にも話し掛けたつもりなんだ。

 てっきりただの嫌がらせだと思っていた。


「じ、実は……私の魔法についてなんだけど……」

「ヨルハの魔法?確か火と風と水だったっけ?適正は」 

「そんなの一々よく覚えてるわね、気持ち悪い」 

「分かった、話はこれで終わりだね。じゃあ」


 流石に一言返す度に噛みつかれると少しイラッとしてきた。

 僕は話を打ち切り、書類を片付けて席を立って教室を出ようとしたんだけど―――。


「ま、待ちなさいよ!私が悪かったわ。そ、その……ごめん……なさい…………」


 謝った。

 この子謝りましたよ、皆さん。

 いや、皆さんって何処の誰だよ。

 この際だ、少し強めに言っておこう。


「謝罪を受け取るよ。ただ、今回までだよ。毎回毎回そういう言い方されたら、流石に頭に来るんだよね」

「だから……ごめんなさいってばぁ…………」


 あ、ヤバい、泣き出した……。

 これは拙いぞ…………。


「だから今回は良いから!泣かないで。ね?」 

「う、うん……」


 こんなところ誰かに見られたら何言われるか分かったもんじゃない。

 早々に本題に移ろう。


「それで?どうしたの?魔法の事だよね?」 

「えっ……とね。私、属性魔法を覚えたのは全て本からだったの。商人の娘だから、親は生活魔法くらいしか使えなくて。それで、昨日の皆の戦い方を見て……って言っても全部あんただったけど。それで、詠唱してなかったでしょう?私でも出来るのかなって……」


 え?詠唱破棄?それとも無詠唱?僕、そんなの昨日使ってたっけ?

 思い出せ、思い出せ、思い出すんだ、僕…………。


「あっ!もしかして……」

「どうしたの?いきなり大きな声出して?」

「あ、ごめんごめん。ヨルハ、僕は昨日無詠唱の魔法は使ってないんだよ」

「え?だって、身体強化魔法以外は全部何も言わずに使ってたる様に見えたけど…………」

「あれは全く別の発動方式だよ。2年前に発表された新式の術式、[刻印術式]って聞いた事ない?」

「確かそんな話聞いた気がするわ」

「そう、それそれ。それを使ったんだよ」

「それって今までの発動術式とどう違うの?」

「じゃあ改めて全部を説明するね」




 魔法を発動させる為の術式は、今まで[詠唱術式]と[魔法陣術式]の2つと言われていた。


 最もポピュラーなのが詠唱術式。

 例えば僕の適正属性の地属性の中級魔法、岩の槍を放つ場合、


『地よ、ここに集いて槍を成せ。《岩の槍(ロック・ランス)》』


 となる。

 属性に関わらず、

『[属性]よ、ここに集いて[魔法の形状]を成せ。《魔法名》』

 の3文節で構成されている。


 上級になると少し構文が変わるし、最上級やそれ以上になるとめちゃくちゃ長くなったりするから必ずではないけど、基本はこの形になる。


 詠唱破棄は魔法名だけ、無詠唱はそもそも何も言わずに発動する高等技術。

 その代わり、術者の実力がいくらあっても大体は威力が弱まったり、消費魔力が増えたりするし、そもそも発動すら出来ない事も多い。

 この2つが使えるかどうかがある種、魔法を使う者の一つの壁となる。


 次に魔法陣術式。

 予め魔法陣を描いてそこに魔力を込めておき、付与した条件を満たした場合に発動させるトラップの役割がある[設置型]と大人数で大規模な魔法を行使する際に使われる[大規模型]に分類される。


 設置型は魔法陣を描く際に、発動する魔法を決めておけば術者が居なくても発動可能なのが利点。

 大規模型は描いてある陣に魔力を流せば良いだけなので、魔力があれば誰でも発動可能。

 勿論、発動に必要な魔力に達さないと発動は出来ないけどね。

 ただこの2つは準備が必要なので、戦闘中に使用するにはあまり向かない。

 予め特殊な紙に魔法陣を描いておいて、使用の際に魔力を流して使う[魔法紙(スクロール)]があるけど、そもそもコストが掛かる上、使い捨てだ。




「っと、ここまでは大丈夫だよね?」

「うん、それは私も知っているわ」

「じゃあ、ここからが[刻印術式]の話だよ。少し難しいから分からない所があればすぐに質問してね」

「分かったわ」




 そして新たに開発されたのが刻印術式。

 これは魔法陣術式をベースに改良されたものだ。

 元々、魔法陣に描かれる術式は詠唱術式の詠唱に比べて、無駄に長いのだが、それには理由があった。


 通常の詠唱術式の際に声を発する事で声に魔力が乗る。

 それは言霊と言われ、魔法構築に一役買っており、それを補う為の長文ポエム形式が必要だった事が研究の末に判明。

 まずはそれを簡略化して、魔法陣自体を小さくした。




「ちょっと良い?その言霊の分長かったのを短くしたり小さくしたらそれこそ魔法の発動に支障が出るんじゃないの?」

「お、良い質問だね。それは―――」




 簡略化の際に、詠唱破棄や無詠唱みたいなデメリットがあっては使い物にならなくなる。

 そこで目を付けたのは魔法陣を描く媒体だ。

 元々地面や魔法紙(スクロール)に書いていたが、それでは他の媒体を挟む分、魔力が無駄になってしまう。

 だったら『自分の魔力』で『大気中の魔力』に直接陣を描いてしまえば良いと思い立った。

 その結果無駄が無くなり、陣に込めた魔力をそのまま全て魔法に転換出来る様になったのだ。


 そして、ここからが刻印術式の真価。

[魔法陣術式]と同じく、いくら魔力で空中に描くとはいえ戦闘中に一々描いていられない。

 そこで、武器や防具に属性等を付与する為の刻印と同じ様に、一度描いた魔法陣をそのまま自分の身体、正確に身体に流れる魔力そのものに魔法陣を刻み込む。


 それが刻印術式と呼ばれる所以だ。


 勿論、それを使い熟すには相応の努力が必要だ。

 まず使用したい魔法の魔法陣を自分に合う様に簡略化する。

 威力や射程・魔力消費量を調節する大切な部分を担う作業だ。

 正直ここが一番難しいのかもしれない。


 次は簡略化した魔法陣を一切の誤差無く完璧に描ける様にする。

 ここで間違うと、最後の過程で問題が起きてしまう。


 最後は自分の魔力で描いた魔法陣を何度も何度もまた取り込み、自分の魔力に刻み込む。

 ただひたすら、描いては取り込み、取り込んでは描いて。

 これを繰り返す事で不思議な事に自分の体内の魔力が陣を刻まれ、頭でコレと考えるだけですぐに魔法が発動出来る様になる。





「以上だけど、質問ある?」

「刻印術式に関しては大体分かったわ。それと関係無いところで質問が一つ出来たわよ」

「え?何?」

「なんであんた、そんなに詳しいの?」

「へ?」

「だってそうでしょ?まだ発表されて2年よ?それなのに異常に詳しいし、そもそも何であんたがそんなに使い熟しているのよ」

「あ、えっ〜と……。それは、ですね」


 ヨルハの鋭い質問に僕がしどろもどろになっていると、教室の扉が力強く開かれた。


「お、いたいた!ロイ!この前頼んでおいた俺の新しい刻印術式の魔法陣はそろそろ完成したか!?」

「タイミング最悪……」

「……………………」


 勢いよく入ってきたクラウスの一言で、ヨルハが魚みたいに口をパクパクさせてしまっている。






「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」




 少し遅れて、ヨルハの絶叫が教室に響き渡った。

 この声量、あとで絶対怒られるやつやん……。

 説明に関して矛盾する部分は、『ファンタジーなので』で飲み込んでいただけると有り難いです。



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