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超エリート貴族の長男は苦悩する〜転生したら主人公では無く、貴族の息子でした〜  作者: まっしゅ@


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理想と現実って掛け離れがちだよね

 長期休みももう半分が過ぎた。


 え?ドラゴンと契約した後の話?

 ははは…………聞きたい?

 そう、聞きたいんだね。




 ドラゴンとの契約を終え、僕達は帝都に戻る事になった。

 僕は今回の経緯を陛下や父上にどう説明しようかと悩んでいると光竜王リュミエブランシュからある提案をされ、キャパオーバーしていた僕は二つ返事でそれを承諾した。




 後ろで頭を抱えている2人と笑っている1人に気付かずに―――




 結果、帝都はほんの一瞬ではあるが大混乱に陥った。


 そりゃそうだ。

 だって今回の依頼の原因である光竜王が帝都に飛んできたからだ。

 僕達を背に乗せて…………。


 件の竜が帝都を滅ぼそうと迫ってきたと勘違いした陛下達は直ぐ様帝国の最高戦力……つまり英雄の子孫である侯爵達を全て集結させて防衛線を張っていた。


 僕は慌てて帝都から離れた位置に降り立つ様にお願いして父上達の元へ行き、事情を説明。

 本人からもその旨を伝えてもらい一件落着…………とはいかなかった。


 えぇ、まぁ凄まじい勢いで怒られましたよ。

 最初は全員に囲まれて、その後は1人1人に。

 僕はその間中ずっと正座させられていた。


 いや〜脚の感覚が完全に無くなって立てなくなるって本当にあるんだね。


 帝都の混乱は陛下の迅速な対応によって収まり、それと同時に僕が竜王と盟友になった事も併せて伝えらた。

「伝えなくてよかったのに」と呟いたらお説教の時間が2倍に伸びたのは些細な事。





「うむ、美味いな。人間はこんな美味な物を食しているのか」


 ここは屋敷の一室にある僕の部屋。

 ベッドに突っ伏している僕とは対照的に、1人の男児がソファに座ってガツガツとお菓子を貪っていた。


「おかわりを頼む」

「はい、直ぐにお持ちしますね」


 男児の要求に笑顔で応えるルーナが空いたお皿を持って部屋を出ていった。


「…………何でここにいるの?」

「ん?我と其ロイは盟友だ。ここにいても何もおかしくあるまい?」


 そう、この男児は人の姿になったリュミエブランシュだ。

 何故10歳くらいの男の子の姿になっているのかは簡単、本人曰く「人間は幼子を可愛がるのだろう?であればその姿になった方が利点が多い」だそうだ。


 いや、竜王の割にセコい考え方をするもんだね、君も。


 ルーナによって追加で持ってこられた山盛りのお菓子をまたバクバクと食べ始めたリュミエブランシュ。


 あ、この姿の時にはブランと呼ぶんだっけ?


 まぁ、ブランを見ながら今後を考える。




 お説教の後、陛下と侯爵家当主が集まった円卓に呼び出された僕は今後について話された。


 元々は様々な魔導具や新術式を開発していた世界的権威であるアルベルト=アインシュタイン。

 更に現在は精霊王エレナーデの使徒でありながら、竜王の盟友となり全ての竜種を従える存在になった。


 様々な功績?が相俟って、「そろそろ賢者の末裔であるガストンブルク侯爵家の次期当主という肩書だけで役不足」と遠回しに言われてしまったのだ。


 僕自身「そんな事を言われても……」という気持ちが無くも無いが正直、全て僕が撒いた種なので飲み込む他無い。


 勿論、陛下達は僕を呼び出す前に話し合っており、僕の今後について幾つかの方向を示してくれた。


 先ずは現在聖女の末裔であるレイエナ=ダルクもいるラリノア聖教国に行き、精霊王の使徒として君臨する事。

 君臨……と言うと聞こえは悪いけど、話を聞く限り正に君臨だった。

「君臨せども統治せず」を地で行く感じで、皆の崇拝対象としてただ存在するだけで良いらしい。


 次に帝国で皇帝になる事。

 そのまんまの意味で、元々の地位もこれまでの功績を考えれば反対する者はいないらしい。

 それにドラゴンと友好を結んでいる点で、少なくとも僕が生きている間、竜王の性格を考えれば死後もある程度は帝国を守り続けてくれると考えれば帝国は安泰だ。

 歴史上初の賢者の家系から皇帝だけど「初めてする事だがらそりゃそうなる」って言われたよ。


 最後に、これが一番の推しらしいけど…………自分で国を興す事。

 国を興すと言っても規模で言えば精々町サイズ、大きくて街の様な大きさ。


 簡単に言えば「完全な不干渉地帯を造る」って事だ。


 他国の政治や宗教に一切関与せず、僕が自由に暮らせる国を造るだけ。

 外貨は必要になるので人の出入りや輸入・輸出はあるけど、それ以上は基本的に関わらない。

 勿論、僕の個人的な付き合いはするけども。

 そうすれば現存する国の一つに力や権力を集中させずに済む事になる。


 これらの案でも良いし、他の案でも良い。

 そこまで急かすつもりは無いが、なるべく早く答えを出してほしいと言われ、その日の話し合いは終わったのだった。







「国を興す…………ねぇ…………」


 相変わらずベッドに突っ伏しながら独り言を呟く。


 ラリノア聖教国に行っても多分堅苦しさで発狂するだろう。

 街を歩けば皆が平伏する光景が容易に想像出来てしまう。

 かと言って皇帝になってもそれは右に同じ。


 結局問題を解決するには一つしか無いんだけど…………。


「人間は面倒だな」


 いつの間にかお菓子の山は消え去り、満足そうにお茶を飲んでいるブランがそう話しかけてきた。


「国などに縛られ不自由に暮らすのは考えられん。何処へでも自由に行けば良いものを」

「そりゃブランみたいに飛んでいける翼と何処でも生き抜く力があれば良いけどさ…………」

「ロイなら可能だろう?」

「いや、そんな訳…………」


 ん?

 飛べるね、僕。

 それに魔導具もあるし、ある程度の事なら対処出来る気がする。


「あれ?出来るじゃん」

「だからそう言っているであろう?」


 旅をする……有りかもしれない。

 世界中、好きな所をこの目で見て回る。

 近隣諸国には顔を知られているだろうけど、魔導具を使えば見た目も変えられるし遠くへ行けば僕の事を知らない人達の方が多い筈。


「世界を巡る旅…………惹かれるなぁ…………」





 ブランの何気無い一言で、悩みのタネだった今後の事に少し希望を持てたのであった。

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