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超エリート貴族の長男は苦悩する〜転生したら主人公では無く、貴族の息子でした〜  作者: まっしゅ@


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60/70

立場によって見えるものが変わるよね

 クラウスという男は普段から接している僕やクラスメイトからしてみれば「正義感溢れる少々暑苦しいが、根は素直で良い奴」と認識されている。

 しかし彼は次期皇帝であり、一度皇子の衣を纏えば帝国民を導く者になる。


 そんな彼からすれば「自分の町が良ければ他はどうでも良い」と捉えられる発言は到底許容出来ないのだろう。

 勿論、皇子として次期皇帝としては間違ってはいない。


 だが、立場が変われば見え方が変わるのもまた事実だ。


 町長の立場としてはクラウスの意見に素直に頷く事は出来ない。


「帝国を導く尊き方々からすれば我々は自分達の利益のみを追求する愚か者と、卑しい者と、そう見られるでしょう」

「実際にそうだろう?」

「ですが、私はこの町を守る義務がある!この町の住人を導く義務がある!貴方方が帝国を、帝国民をそうする様に!例え愚か者と笑われ、卑しいと蔑まれようとその汚名を背負ってでも!」


 先程まで僕達(主にクラウス)に遠慮していた町長さんだったが、クラウスの正義に対して自分達の正義を主張した。


「我々から見れば帝国は今まで何もしてくれなかった!我々が思い悩んでいる時に手を差し伸べる事は無かった!それなのに我々の悩みが解消され、その代わりに他の町や村が危機に陥った途端手を差し伸べる。我々が迫害されているのでは無いかと思いましたよ!」

「それは誤解だ!」

「勿論分かっておりますとも。ですが、捉え方次第ではそう捉えられても仕方無い事をされているのですよ!国がホリヤを守ってくれなければ私が守るしか無いでしょう!近隣の町や村は私の知るところでは有りません。彼等もまた我々を助けてくれなかったのですから…………」


 今まで溜め込んでいた鬱憤を出し切る様に。

 そして最後は俯きながら涙を流して、自分達の町の現状を、不満をクラウスにぶつけた町長。


 自分しかいないと断言出来る程の強い意志が籠もった言葉にクラウスは口を開けなかった。


 これは明確な意思と経験の差だ。

 方や幼い頃から次期皇帝としての教育を受け、皇帝となる為の知識も技量も十二分に備わっているものの、人々の命を預かる職務を経験した事が無いクラウス。


 一方で、ある程度の知識と技量は有しているが一田舎町の町長。

 だが、自分の決断一つで町やそこに住む住民達の明暗を分ける選択をし文字通り命懸けで続けてきたラルントス町長。


 兵士に例えるならば才能溢れる新兵と長きに渡り生き抜いてきた老兵。


 実際の戦においても政治においても統治においても長年培ってきた経験とそれに伴う決意の前には才能を持つだけの者では敵わない。


 勿論、才能がある人が経験を積んだらそりゃもう無敵なんだけどさそこは関係無いので今回は割愛。


 ヨルハとオズがクラウスに声を掛けようとするが、町長さんの気迫にどうして良いか分からず、この場を沈黙が支配している。


 だが、その沈黙を破る者がいた。






 まぁ、僕なんだけど。


「さて、お互いの意見が聞けたところで話を整理しましょう」


 努めて明るく再び話を元に戻す事にする。

 そんな僕を不満気に見るクラウス。


「おい、今は俺と町長が…………」

「このメンバーの代表は僕だよ?自分で言ってたでしょ?「私の事は付き人だと思ってくれ」って。じゃあ邪魔しないでくれないかな?」

「ろ、ロイ君!?流石に邪魔って言っちゃ悪いよ……」

「いくら君の意見でもそれは聞けない。今は件のドラゴンをどうするかの話し合いの場だ。そこに正義感を振りかざして自分の意見を貫こうとするクラウスは邪魔でしか無い。立場が変われば見え方も意見も変わるのは当たり前だ。それを一方の視点からしか見られないのならクラウス、君は皇帝として失格としか言う他無い」

「ロイ……あんたねぇ…………」


 非難している様な声を上げてはいるが、平民の彼女からすれば町長さんの意見に同意したいのだろう。

 クラウスがいる手前、表立って賛成出来ないでいるが。


「ラルントス町長。クラウスが色々言っていましたが、元々僕はドラゴンを討伐する気はありませんよ」

「……え?」

「そもそも今回現れたドラゴンは古代種である可能性が高く、そうなると精霊と同格、もしくは精霊王に届く存在かもしれません。それを討伐しようものなら精霊殺しの大罪です。多分精霊王の使徒である僕なら大丈夫だと思うのですが、精霊王とは仲良くしているのにドラゴンは殺すなんて流石に思考がバーサーカー過ぎますよ」

「で、では……どうされるおつもりで……?」

「皆には話しているのですが、竜と対話を試みます。上手く行けば契約をしてみたいと思っています」

「け、契約!?それは主従契約のことで!?」

「主従までは流石に言い過ぎですが、仲間とか同僚とかになれればな、と」

「ドラゴンと同僚…………」

「あ、こいつの考える事はおかしいんで気にしないで下さい」

「ねぇ、頭おかしいは酷くない?」

「だってそうでしょ?ねぇ、オズ?」

「えぇ!?僕!?いや、まぁ、ロイ君は少〜し変わってるな〜とは思うけど…………」

「ほら見なさい」

「解せぬ」


 おかしいなぁ。

 今はクラウスを咎めて町長さんの心配を解消して格好良く決めたつもりなのに、気付けば僕が変人扱いされている。


 そんな僕達の緊張感の無いやり取りを見て毒気を完全に抜かれてしまったのか、それ以上何も言わずただ一言「この町をよろしくお願いします」と町長さんから頭を下げられて話し合いは終わった。




 その後、予め取っておいた宿(クラウスがいる関係上最高級の宿。と言うかほぼ3階建のホテル)にチェックインし男女で別れた。





 いや、さっきあれだけ言った手前クラウスと同室なの気まず過ぎるんですけどっ!?

 ドラゴンまで辿り着かない……。

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