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超エリート貴族の長男は苦悩する〜転生したら主人公では無く、貴族の息子でした〜  作者: まっしゅ@


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59/70

気合を入れた時に限って肩透かしを食らうよね

 キリの良いところまで書き切ったのでちょいと長めです。


 〜お知らせ〜

 本日こちらの投稿時間と同じ時間に短編作品を投稿いたしました。

 良ければそちらもお読みいただければ嬉しいです。

 尚、勢いで書いたものですので悪しからず。

 はい、到着しました、問題の鉱山地帯に一番近い町ホリヤ。

 鉱山だけに「堀屋」ってか?


 …………ごめんなさい、魔が差しました。


 でも僕は悪く無いと思う。

 だって気合を入れて町に入ってみれば、鉱山封鎖の悲壮感なんて一切無い。

 寧ろ「お祭り中ですか?」って位に活気があるんだもの。


「これは……どういう事?」

「はて……?父上の話では大層困っていると聞いたがそうは見えないな……」

「逆にめちゃくちゃ景気良さそうじゃない?」

「何だか楽しそうだねー」


 僕達が唖然としながら門兵に通行の許可を貰うと、雰囲気を察したのか笑いながら話してくれた。


「驚いただろう?町の外では「ドラゴンが現れた」と騒がれているみたいだが、俺達からすれば逆の意味で大騒ぎだからな」

「逆ってどういう事ですか?」

「ドラゴンが現れればそれを討伐するなり一目見ようとするなりで人がわんさか町を訪れるだろ?そういった奴等が来ればそれ相応の物が必要になるし、宿もいる。商いをしている奴等からすれば「この機を逃せば今度は何時儲けられるか分からない!」だそうだ」

「なんとまぁ、商魂逞しいと言いますか……」


 門兵の彼が言わんとする事は分かる。

 分かるけど流石に危険地帯となったこの町で商売を続けるのは流石にハイリスク・ハイリターンが過ぎる気もするんだけど……。


 あ、因みに今僕達は冒険者としてこの町に入ってる。

 皇帝陛下の勅命と伝えてその書状を見せた方がスムーズであるにはあるが、それだと町の雰囲気とか住んでいる人の声が分からなくなるから4人で話し合った結果こうしている。


 理由を話してくれた門兵に僅かながらの心付けを渡して、そのまま町を纏める町長の家に足を運ぶ。


「ねぇロイ。これって私達悪者にならないかしら?」

「あぁ〜、ぼくもヨルハちゃんと同じ事を考えてたよ」

「どういう事だ?危険が排除され、平穏が戻るのであれば良い事だろう?」

「クラウスみたいなお偉いさんからすればそう見えるのもしょうがないか」

「ロイ、あんた下手すれば皇帝陛下よりも上なのを自覚しときなさいよ?」


 と、雑談に勤しんでいる間に到着した。

 門に立つ兵士に陛下の書状を渡すと、そのまま門を開けてくれた。

 そのまま敷地を進み、扉の前で控えていた執事が扉を開くと初老の男性が立っていた。


「皆様、お待ちしておりました。私はこの町を預かるキール=ラルトンスと申します」


 おっと、まさかの初手で町長さんがお出迎えしてくれるとは。


「本日は急な来訪にも関わらず招き入れていただきありがとうございます」


 一応僕が代表となっているので、クラウスを差し置いて礼を述べた。

 町長さんはクラウスが代表だと思っていたのだろう、目を丸くしている。


「帝国の位()()で言えば私が一番なのだがな。此度はロレミュリアに付いてきた立場だ。諸々の話は彼に一任しているので私の事は付き人とでも扱ってくれ」


 うん、無理だろ。

 町長さんもどうして良いか分からず何とか表情を保っているものの、明らかに狼狽えている。


 とりあえず、場の空気を変えて話を進める為に僕が再び口を開くとしよう。


「僕が言うのもなんですが、立ち話もなんですので何処か落ち着いて話が出来る所に案内していただいてもよろしいですか?」

「……あ、あぁ、はい。こちらへどうぞ」


 平静を取り戻した……もとい取り繕った町長さんに連れられて僕達は応接室に通された。




 使用人が全員分のお茶と茶菓子を並べ終えた後で人払いを願い、早速本題に入る。


「早速ですが、今回は皇帝陛下の勅命でドラゴンを討伐するため参りました。」

「はい、勿論存じております」

「そこで確認したい事が何点かあるのですがよろしいですか?」

「はい」

「先ずはドラゴン討伐の依頼を出したのはラルトンス町長ですか?」

「いいえ。ドラゴンが現れたと報告は致しましたが、討伐に関しては私もこの町の者も誰一人望んではおりません」

「やはりそうですか……」


 まぁ町の雰囲気を見るに今現在の好景気を支える存在がいなくなれば賛否両論……主に否だろう。


「貴方の意見がそのまま町の総意と考えても?」

「はい。有力者と何度も話し合いをしましたが、皆同じ意見でした」

「であれば次の質問ですが、皆さんはドラゴンをどうしてほしいとお考えで?」


 この質問の答えは彼等の中で既に決まっているのだろうし、僕も分かってはいる。

 しかし、それは明確にしてもらわなければいけないもの。


 今彼が黙っているのは、自分達の意見が帝国に矛を向ける事になるのでは無いか、不敬なのではないかと考えているからだろう。


 そこで僕は助け舟を出した。


「そうそう、忘れていましたがこの場での発言に一切の遠慮は要りません。仮に皇帝陛下を害する旨の発言をしたとしても罪に問われる事は無い事をお約束します」

「……本当ですか?」

「信じられないのであれば契約でもします?それとも僕がいの一番に皇帝陛下を侮辱したら良いですか?」

「おい」

「冗談だよ、クラウス。そんな訳ですので、まどろっこしい話は抜きにしてぶっちゃけてくださって構いませんよ」


 相手に安心してもらう為に、敢えて口調を崩して語りかける。


「では……恐れ多いですが我々の意見をお伝えいたします」

「どうぞどうぞ」

「我々としましては、ドラゴンをそのまま放置していただきたいのです」

「それは町の……ひいては帝国の危機を見逃せと捉えても?」

「どの様に捉えていただいても構いません」

「では、理由をお聞かせください」


 その後、町長さんは全てを話してくれた。




 この町は鉱山での仕事を担う者達が住むだけの町だった。

 その為、鉱山で働く坑夫とその家族、採れた鉱石を仕入れに訪れる商人、イレギュラーに対応する冒険者等が出入りするだけの小さな町だった。

 閉鎖的にも見えるがその実、町自体はいつでも受け入れをしているがそもそも周りから人がやって来ない。

 それにより更に身内同士の結束が高まり、更に人が寄り付きにくくなる悪循環が出来上がってしまっていた。

 実際、年に十数人程度は町に移住を試みる者がいるらしいのだが、いざ暮らし始めると元々住んでいた者達の縦にも横にも強い繋がりに疎外感を感じ、早々に町を出ていってしまうらしい。


 まぁ、長年お互いに支え合ったコミュニティにいきなり新参者が打ち解けるのは難しいよね。


 そんな町に転機が訪れた。


 それが件のドラゴンの襲来である。

 それによって普段悩まされていたワイバーンの被害が無くなった。

 更に、伝説でも語られるドラゴンを一目見ようとする者、討伐して名声を得ようとする者、その素材を手に入れようと画策する貴族や商人が挙ってこの町に集まり始め、瞬く間に潤っていった。

 勿論、外部の人間が増えたので別の問題も出てきているが、今まで抱えていた問題の殆どが解消されるのであれば些細な事。

 その結果町長さんや有力者のみならず、町の住人すらもドラゴンに感謝し、討伐には反対していると言う。




「勿論、ドラゴンが暴れてないからこそ言える話ではありますが……」

「そのドラゴンによってワイバーンが別の場所へ行き、少なからず被害が出ているのはご存じですか?」

「存じております」


 そりゃ町長なら他の町との繋がりもあるだろうし情報も入るよね。

 どうしたものかと考えていると、これまで大人しく座っていたクラウスが立ち上がった。


「被害が出ているのを知っているならば何故協力しない!?自分達は良い思いをしているのかもしれないが、他の者が苦しんでいるのだぞ!?」


 あらら、やっちゃったよ……。

 こうなる気がしたから態々代表を僕にしたのに。




 さて、ここから町長さんがどう出るか次第で僕の対応を変えなければならないな。






 やっぱり1人で来るのが正解だったかもしれない。

ドラゴンに対する考え方


皇帝・賢者・その他の人々→厄介だから討伐してほしい


ホリヤの総意→町に恩恵をもたらすから放っておいてほしい


ロイ→契約してドラゴンライダーしてぇ!!

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