偶には復習するのも大切だよね
この世界には魔法が存在する。
そして魔法には基本属性と一部特異属性が存在する。
そして以前知った無属性も存在する……と言うよりしていた。
それとは別に生活魔法と呼ばれる普段の生活で使える魔法と身体強化魔法がある。
上記2つは属性分けされる事無く別の魔法としてカウントされ、属性の素質が有る無しに関わらず全ての者が使用出来る。
それこそ少し練習すれば子どもから大人迄。
勿論、魔法それぞれで修得難度は変わるので細かい事を言えばその全てを使えるとは言えないが……。
そんな誰でも使える身体強化魔法。
しかし、極めようとすればそれこそ人生を掛けても足りない程とされている。
それを極めた人物こそが初代剣聖だった。
自らの身体はおろか、手に持つ愛剣すら身体の一部とし、強化を施したとされている。
現在では付与魔法として各属性毎に分類されているが、元々は身体強化の一部、つまり無属性だったのだと分かったのは最近の事だ。
話は逸れたけど、結局何が言いたいかと言えば「身体強化魔法を使える者は騎士なのか?魔法師なのか?」と言う事。
正解は、身体強化魔法を使う騎士もいれば、身体強化魔法を用いて剣を振るう魔法師もいる。だ。
つまりそれに明確な答えは無い。
ただし、それぞれがごく少数な事だけは確実。
剣(以外の武器でも)を得意とする者は騎士を目指す。
魔法が得意とする者は魔法師を目指す
それが当たり前。
では、身体強化魔法以外使えない魔法師はどうすれば良いか?
それこそが僕が今回ぶち当たった壁だった。
魔法を主に使うからやはり魔法師?
直接的な攻撃をするからやはり騎士?
結局は先程同様、どちらも正解であり不正解となってしまう。
両方極めれば文字どおり最強、しかし両方中途半端であればそれはとても扱いが難しくなる。
これは組織として考えればより顕著になる。
やれる事がハッキリしているならその役割の遂行のみを考えれば良いけど、どちらもそこそこだと何処に組み込んでも活躍出来ずに終わってしまう。
それだけなら良い、最悪足を引っ張る事も考えられる。
ならどうしたら良い?
バリーやオズみたいに身体強化のみしか使えず、近接戦闘が得意な魔法師は?
二人の様な本来強い駒が現在のシステムでは発掘出来ず活かせないのがこの試験の問題……いや、この国どころか世界での問題だと僕は考えた。
だからこそ、この場で提案に臨んだんだ。
「今し方ナーベラ学年主任が言われた様に、僕の受け持つクラスだとバリー=ケントとオースタスが該当する身体強化が使える魔法師達。この2人が弱いと、使えないと皆さんは思いますか?」
3人を見渡すも誰一人頷く事は無い。
「そうでしょう?2人は強い。バリーの模擬戦の成績はクラウス・オースタス・ヨルハに次いで4番目、オースタスに至ってはクラウス以外の全ての生徒に勝ち越しています。勿論、生粋の魔法師であるヨルハにも」
「「「…………」」」
3人とも無言のまま。
学園長が「続けろ」と目で促してくるのでそのまま話を続ける。
「中途半端に使おうとすれば、皆さんが考える様にどっちつかずの器用貧乏となります。ただ、二人の様にそれが突き詰めた形になれば―――」
「それ自体が他者に無い圧倒的な強みになる……か」
「…………はい」
ねぇ、聞いた?
この人今、僕の台詞だったんですけど!?
割と決め台詞的なところだったんですけどぉ!?
「まぁ、ガストンブルク先生の言い分は分かる。剣聖シリウス…………程は言い過ぎだが、そこ迄はいかなくても一定の練度に到達した者の有用性は確かだ」
「そうでしょう?ですが現状だとその殆どが宮廷魔法師と騎士団のどちらにも入れず、一般兵や衛兵・冒険者として燻っているのです」
まぁ、冒険者の場合は何でも出来る器用貧乏は一概にデメリットとは呼べないんだけどね。
「そんな人材を確保するに辺り、もう一つ目指すべきものがあっても良いのでは無いでしょうか?」
「騎士団と宮廷魔法師以外にか?」
「はい。身体強化魔法を用いて戦う……例えば魔法騎士団を設立する……とか」
「魔法騎士団……か…………」
再び学園長は椅子に深く腰掛けて思案顔。
秘書である母上も同様の表情をしていたが、1人だけ違った。
「ガストンブルク先生!貴方!学園はおろか国の方針にまで口を出すつもりですか!?身の程を弁えなさい!」
ナーベラ学年主任だけは考える事も無く、僕に食って掛かってきた。
その声に苦笑いを浮かべながら学園長が話を本題に戻す。
「魔法騎士団云々は置いておいて、だ。先ずはその者達を見出す為の試験の考案、その草案が先だろう?」
「学園長の仰るとおりです。そこで僕はこれを用意しました」
僕は一週間考えに考え抜いた方法とそれに必要な論文を3人に渡す。
「順に説明していきましょう。此等を取り入れれば確実に溢れていく砂を掬い上げられる筈ですから。勿論、直ぐに……とはいかないでしょうが……」
そう前置きして、内容について話し始めた。




