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超エリート貴族の長男は苦悩する〜転生したら主人公では無く、貴族の息子でした〜  作者: まっしゅ@


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慣れてきたら見えてくる部分ってあるよね

 今回はロイの独り言のみになります。

 教師として学園に勤務し始めてから早一ヶ月、あっと言う間に過ぎてしまったと言って良い位の早さだった。


 僕は今、屋敷の自室で机に向かってひたすら書き物をしている。


 刻印術式を皆に渡した事でクラス全体がレベルアップしたのは喜ばしい反面、クラスメイトとしてでは無く教師として接すると分かってしまう事があった。


 それはクラスそのものの問題では無い。


「やっぱり、実力と順位が比例してないのは問題だよなぁ……」


 この学園では入学時・毎学期末・卒業前に各個人の成績が発表される。

 学科・実技(魔法)or実技(武器・格闘術)の各科目毎とそれを合わせた総合順位だ。


 現在のSクラスの学年順位は、


 首席:クラウス=ペンドラゴン

 次席:ヨルハ

 3席:キリエ

 4席:マルア=ロウ

 5席:ガリントン=ナーベル

 6席:メルガーネ=ルンス

 7席:コロン

 8席:バリー=ケント

 9席:オースタス

 ……

となっている。


 まぁ、Sクラスがそれ以下になったらそれこそ問題なので、それは良い。


 入学当時と比較すると、バリーが下がり、マルア・ガリントン・メルガーネの三馬鹿が繰り上がった変化はある。

 それも僕が悩んでいる問題だ。


 ここ、ガザニア帝国騎士魔法学園は文字通り【騎士】と【魔法師】の育成に力を入れている。

 つまり、成績にはこの二つの要素が大きく関係する。


 更に細かく言えば、魔法≧武器・格闘術>学科の順で重要視される。


 魔法での首席と学科で首席では、総合順位で魔法で首席を取った者が優先される。

 それは最悪しょうがないと割り切れる。

 だって、魔法が大して使えないのに頭でっかちになっても役に立たないから。

 勿論、作戦立案や指揮に回ればそうでは無いけども、やはりある程度実力が伴って初めて信用を得られるからね。


 僕がずっと頭を捻っているのは実技の魔法においての格差。


 例えば、ヨルハは中・遠距離から状況にあった魔法を撃ち、敵を殲滅する完全な後衛タイプ。


 逆にオズやバリーの様に身体強化や体に魔力や属性を纏って近接戦闘で敵を倒す前衛タイプ。


 因みにクラウスはそのどちらも熟す超万能タイプなので除外。

 そりゃ首席になるわな。って感じ。


 まぁ、この前衛と後衛での評価の差が僕が問題視する部分。


 どうしても魔法を戦略的なもので評価すると「如何に相手を近付けず、此方に被害無く殲滅出来るか?」になってしまう。

 そうなれば近付かなければ力を発揮出来ない者達の評価は相対的に下がってしまい、直接戦闘で幾ら勝ち越していても試験においては順位が下る。


 この傾向はSクラスのみでは無く


 勿論「強い方を高順位にするべきだ」とも言い切れないが、そこを加味して判断するべきだと僕は思うんですよ。


 だってオズの場合、直接戦闘だけ見ればここ一ヶ月負け越しているのはクラウスにだけ。

 つまり、オズは中・遠距離の魔法を持たずとも、相手の攻撃を全て捌き切った上で接近戦に持ち込んで勝利が出来る、所謂魔法師殺しの素質がある。




 かと言って評価方法を変えるとなると根本から変えなければいけない。

 直接戦闘させるにも相性があるのに加えて全員総当たりとかやらせてたらキリが無いし、数が増えれば運の要素も強くなる。

 そもそも怪我の危険がある事はさせられない。


「いや……待てよ。近接戦闘魔法の有用性を遠距離攻撃魔法と同じベクトルで考えるからおかしいのか……」


 キリエに「決めつけるのは良くない」と教えたくせに自分がその考えをしている。


「確かあまり実用性が無いから保留にしていたアレの論文が確かあった筈……」


 魔箱の中に手を突っ込みゴソゴソと中を探る。

 この中にはお蔵入りとなった大量の論文が眠っているから、探すのも一苦労だけど…………。


「…………あった、これだ」


 探し当てた一束、これこそ僕が今回使おうと思っている論文。


「あぁ〜……やっぱりまだ途中だよ。これの消費魔力を抑えて簡略化して……刻印術式にするのはとりあえず後回しで詠唱術式か魔法陣術式に…………」


 数年前に書いたものだから不完全な点が多過ぎる。

 でも今の僕ならこれを完成させられる……筈。


 時間を忘れ、それが完成する頃には日が昇ってしまっていた。

 今日の授業中、寝ない様に頑張らなければ…………。

 いや、教卓で教師が寝るってどんな状況?とも思わなくも無いけども。

 それでも学園の問題点を改善する雛形が完成したのは素直に嬉しい。


「あとは父上……学園長を含めた教師陣が納得するかどうかだよなぁ……」


 そろそろ皆が動き始める頃、僕は何時もより早めに身支度を済ませ、食堂に向かう。

 朝食を取りながらどうやって考えが凝り固まっているであろう教師陣の皆を説得するかを考える。


 これは学園始まって以来の改革の一手。

 これからの学園の在り方を変えていく小さいながらも大きな一手。

 僕独りで、新米教師が本当にそんな事を出来るのか。


 結局、その日一日、僕は眠気よりも悩みで授業が中途半端になったのは言うまでも無い。






 いや、「これ父上の面子潰す事になるんじゃないか?」と言う嫌な予感を考えないようにしながら…………。

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