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先ずはお手本を見せるべきだよね

「じゃあ昨日言っていた通り、今日から【打倒剣聖・剛壁】に向けての訓練……じゃないや授業を始めます」


 翌日、HRが終わった後もそのまま僕の授業が続く。


「先ずは皆、自分専用の刻印術式を創ろうか」

「「「「「いやいやいやいやいや…………」」」」」

「え?」

「ロイ?刻印術式はお前の開発した最新式の術式だよな?」

「うん、そうだね」

「まだこの国でも使える者は僅かなのにそれを覚えろと言うのか?」

「だってクラウスとヨルハ、それにオズは使えるでしょ?」

「確かに使えるが、創るとはまた別だ」


 以前、ヨルハ個人と皆に刻印術式についての説明をした事があった。

 それ以降も、ヨルハやオズには教えてほしいと言われ、何度か簡略化を教えたものの、最終的には簡略化を完璧にする事は出来ず、僕が創ったものを刻印してしまったんだっけ。


「そうだった……。じゃあ忘れてる部分もあるかもしれないから、改めて刻印術式について説明するね。その後、実際に僕が何か一つ刻印術式を創ってみせるよ」


 僕はまた聞くと眠たくなる様な術式の説明をしていく。

 皆よく眠くならないなぁ……。


 そして一通り説明をした上で次の工程へ。


「次は実際に創ってみよう。クラウスとヨルハとオズは既に幾つか渡してあるから…………キリエ、何が良い?」

「ボク……?逆に……何が良い……?」

「うん?えっと……そうだなぁ……。キリエの場合は相手に悟られない様に戦う暗殺者タイプだから攻撃魔法よりも補助関係が良いかもね」

「じゃあ……そうする……。後は任せた……」


 結局丸投げかいっ!


 ……と、まぁぶっちゃけそうなる気もしていたから良いとして、キリエの戦術の幅を広げるならどれが良いだろう?


 事前準備の時であれば詠唱すれば良いから優先順位低いし、そうなると接敵した直後か戦闘中に使えるものの中で、詠唱破棄もしくは無詠唱によって効果が落ちたら意味が無いものをチョイスするべきだよな…………。


「よし、決まった。キリエ、《不可視の衣(インビジブル)》にしよう」


 《不可視の衣(インビジブル)》。

 それは文字通り姿を消す魔法……なんて便利なものじゃない。

 この魔法は自分に待機中に漂う魔力と近い魔力を体に纏わせて、魔力感知や相手の意識から探知されにくくする魔法だ。

 勿論、物理的に掴まれていたり、完全に捕捉されていたりした場合は効果が全く無い。


「《不可視の衣(インビジブル)》……。でもそれ……あんまり役に立たないって……教わった……」

「誰に?」

「色んな人……」

「じゃあ何故役に立たないか聞いた事はある?」

「…………無い」

「だよね?折角だから、他にもこの魔法が役に立たない理由を聞いた事がある人いる?もしくは理由を説明出来るならそっちでも良いよ」


 返答が出来ないキリエから視線を外して、皆を見渡す。

 しかし誰からも返事が無い。


 まぁしょうがな―――


「そりゃあれだろ?見つかり難くなるとは言え、事前に使うならいざ知らず、戦闘中にこっちを完全に捉えられてたら意味無いからだろ?」


 予想外のところから答えが飛んできた。

 昨日、今日とこれまで口を開かなかったジン先生だった。

 多分答えを聞いていたとかじゃなく、実際に今までの経験から戦闘していた場合に使う事をシュミレートした上で自ら答えを導いたのだと思う。


「ジン先生、正にその通りです。他にも、体の一部を掴まれてたり、物理的にも拘束されてる場合も同じですね」

「じゃあ……何で……その魔法なの……?」


 キリエの疑問は尤も。

 役に立たないし、その理由を明確に提示された上でその魔法を教えようとしているのが僕だ。


「簡単だよ。皆、この魔法の可能性に気が付いていないからだよ」

「可能性……?」

「そう、可能性と言うより有用性かな?実際に見た方が早いからやってみようか」

「おいおい、実践を教室でやるのは禁止だぞ?」

「大丈夫ですよ。戦闘では無く、ただ不可視の衣(インビジブル)を使うだけですから」

「ん〜……物を壊すなよ……?」

「勿論」


 許可も得たところで実際に使ってみようと思ったけど、キリエには最初はみてもらった方が良いかな。


「では、ジン先生。こちらに立って下さい。今から僕が左と右のワンツーの突きを上半身の何処かに出すんで、躱してもらって良いですか?」

「俺がか?キリエじゃなくて」

「彼女には見ていてもらった方が良いかなと。それに、魔法無してあればこの学園最強との呼び声も高い先生ですから僕の突き程度躱せますよね?」

「言ってくるれるじゃねぇか。やっぱり役に立たなかったと思われても後悔するなよ?」

「そりゃ、その時は別の魔法にしますよ。では、良いですか?」

「いつでも来い」


 僕はジン先生の対面、手の届く範囲で構えを取る。

 それに対してジン先生は両手を下げてほぼノーガードの姿勢だが、膝を柔らかくし、少し重心を落としていつでも動ける姿勢を取る。


「「「「「…………」」」」」


 僕とジン先生の雰囲気に圧され、教室全体に静寂が訪れる。


 さて、大見得切ったけど、本当に通じるだろうか?

 相手は元とは言え、Aランク冒険者であり、校内において魔法無しの戦いは学園長……つまり父上を除いて最強。

 僕なんかじゃハッキリ言って手も足も出ずやられてしまう相手だ。



 でも、だからこそ、そんな格上相手に通じる事を彼女に見せ付けなければいけないんだよね。


 僕は一度緊張の糸を緩め、ふっと口元に笑みを浮かべ、その直後に左ジャブを先生の顔面目掛けて放った。




 さぁ、勝負はここからだ!

 刻印術式の説明等に関してはep.9とep.10に載せてあります。

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