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超エリート貴族の長男は苦悩する〜転生したら主人公では無く、貴族の息子でした〜  作者: まっしゅ@


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職権乱用って上手く使えば便利だよね

 このままでは話が全く進まないので、強引に軌道修正をしていこう。


「エレナーデ、とりあえず落ち着こう。そして皆さん、一度席に着いてもらえませんか?話が進みませんので……」

「で、ですが…………精霊王様の前で…………」

「あぁ、そうか。エレナーデ、良い?」

『構いません。この場に限り許しましょう』


 エレナーデがいるのに立ち上がるなんて以ての外だと言うので、本人に許可を取って皆を着席させる。

 勿論、陛下と父上も立ち上がってもらった。


「話がかなり逸れてしまいましたが、元々はそちらの枢機卿の一人が我が国に攻め入った事に対して、そちらがどう責任を取るかを聞きに参りました。仰る通りこちらの被害は殆ど無く、攻め入ってきたそちらの方々は全て亡くなりました」

「だ、だからあれは奴の独断で…………」

「いくら独断とは言え、国の中枢を担う者の暴走です。それを「本人の独断だから国は無関係だ」とは無責任が過ぎませんか?」


 仮に向こうが主張する枢機卿の独断だから国は関係無いの言い分が罷り通るとしても、宣戦布告をした上であの規模の軍隊を送り込んできている時点でその動きを察していない訳が無い。

 結局、枢機卿の暴走を見て見ぬふりをしている事自体が有り得ない事だ。

 ましてそれが国のトップに近しい人間であれば尚更。


「我々も止めたが止められなかったのだ!」

「教皇猊下の命でもですか?」

「教皇猊下をその様な政に巻き込む訳にはいかん」


 は?

 国のトップを政に巻き込まない訳にはいかない?


 この発言に流石の僕も堪忍袋の緒が切れた。


「国のトップであろう御方が政に関与しない?だったらそんな存在いる意味が無いですよね?」

「猊下は国のトップであると共に霊王教の頂点に立つ御方だ。国の運営に口を出す事などする訳無いだろう」


 成る程。

 つまり、教皇であるその少女は所詮霊王教の象徴であり、実質的に枢機卿達の傀儡なのか。

 この場でほとんど発言しないのもそれが理由ね。


 じゃ……もうどうでも良いか。


「分かりました。もし貴方達が正しいとしましょう。宣戦布告はトレ枢機卿の独断であり国に否は無く、教皇猊下は国の云々に関与しない」

「そ、そうだ!」

「で、あれば。です。今から僕がこの場で大暴れしようと、ガザニア帝国に否は一切無く、教皇猊下はそれを咎める事は無いって事ですよね?」


 抑えている魔力を解放して、()()()僕の周りに稲妻を迸らせる。


「き、貴様!そんな事をすれば―――」

「すれば何ですか?国同士の戦争になるんですか?それとも精霊王の逆鱗に触れるとでも?自分の発言には責任を持ってくださいよ。ねぇ?」


 吹き出す魔力を更に強め、その余波で部屋の色々な場所に亀裂が入っていく。


「エレナーデの力を借りる必要も有りません。今すぐこの場を消し飛ばしてご覧に入れましょう」


 右手を上に掲げ、周りに放っていた魔力を全て掌の上に収束させる。

 これはリュツィフェール(失墜した精霊王)に放った雷神の裁き(ジャッジメント)と同等かそれ以上の魔法を起動出来る魔力量。

 リュツィフェール(失墜した精霊王)すら少しの間だが動きを止める事が出来た威力だ。

 この建物を消し飛ばすなんて造作も無い。


 あまりに高密度の魔力の収束に、聖教国の面々は疎か陛下と父上でさえも青い顔をしている。


「あ。陛下、父上、安心して下さい。二人には傷どころか汚れ一つ付けませんので」


 二人を見て笑顔でそう伝えるも引き攣った笑顔を返されただけだった。

 解せぬ。


 教皇と枢機卿の二人に向き直ると、枢機卿達の顔は絶望の色一色。

 対して教皇は目を大きく見開いているが、動揺している様子は見られない。

 更にそんな状況の中、自らの足で立ち上がり、僕の下へ歩み寄ってきた。


「猊下!その男は危険です!」

「御身に何かあれば―――」

「私に何かあっても代わりを用意するだけでしょう?」


 焦る二人に対して、淡々とそう告げる。

 この子、自分が傀儡だと分かっているのにあえてそうしていたのかな?

 多分、自分がその座を降りれば他の人に迷惑が掛かると考えていたんだろう。


「使徒様、ご怒りはご尤もです。ですが、ここにいる者の大半はトレ枢機卿の愚行を知らなかったのもまた事実。お許し下さいとは申し上げません。ただ、少しでも恩情をいただけるのであればどうか、この身一つでご容赦いただけないでしょうか?」


 僕の前に先程と同様祈る様に跪き、抑揚が無い声でそう告げられる。


 教皇が言っている事をそのまま受け取れば何と自分勝手な言い分だろう。

 しかし、何故そう言ったかを考えてみると中々理に適っている様にも感じた。


 この国と霊王教のトップである教皇の自分が精霊王とその使徒の怒りを一身に受け、他の者への許しを乞う。

 そうすれば国は救われ、霊王教としての体裁も保たれる。

 それがあちらのメリット。


 対してそれで全てを許せば、寛大な心で許したと周辺国家に周知する事が出来る上、使徒である僕は力を見せつつ、それを解決、更には懐の深さを示す事が出来る。

 こちらのメリットも中々だ。


 ただ、一つ落とし穴がある。


 教皇の身一つで許した場合、寛大だと思われる反面他国に「戦争を仕掛けてもトップが首を差し出せば許してくれる」という実績を作ってしまう事になる。

 一回許してしまうとその後、別の国に対して対応を変えれば反感をかってしまう。

 ここでの判断が今後の帝国の行く末を左右する場合があるので、簡単に首を縦に振る事は出来ない。


 だとすれば、僕が取るべき行動は―――


「教皇猊下、質問を質問で返して申し訳無いのですが、使徒と教皇、どちらが霊王教にとっては上になりますか?」

「それは勿論使徒様です。使徒様は精霊王様が直接見定めた御方。教皇はあくまで霊王教の象徴に過ぎませんから」

「そうですか。それでは、猊下の提案に対していくつかお願いがあるのですが―――」


 僕は一度確認をした上で、改めて今回の落とし所について幾つかの提案をした。






 本当は好きじゃないけど、今回ばかりは使徒の立場を利用した職権乱用をさせてもらうとしますか。


 今回で地味に長かったラリノア聖教国との戦争とその話し合いは終了、次話は後日談になります。


 本当は短く終わらせるつもりでしたが、作者の力不足で思った以上に長くなり、元々考えていた本題と若干(どころじゃない)ズレてしまったので、軌道修正していこうと思います。


 ロイの戦闘面での大きな活躍は今後あまり無い……予定です。




 

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