地雷処理とか不発弾処理って任務の割に報酬安いよね
タイトルに深い意味はございません。
この世界のラスボスの登場により、場が異様な光景になった。
先程まで不敬がどうだと喚いていた二人は地面に跪いて口を一切開かず、場は静寂に満ちている。
そんな中、跪いているとは言え一人だけ他の者と違って床に両膝を付いて祈りを捧げる様な格好をしていた教皇猊下が口を開いた。
「発言の許可を頂いても宜しいでしょうか?」
僕は「そんな中で勇気あるなー」と思いつつ声の主を見る。
『構いません。しかし、顔を隠したまま私に直言しようとしているのは些か不敬では?』
「も、申し訳ございません。今直ぐ外しますっ!」
エレナーデの言葉に慌ててヴェールを取り、再び頭を下げる彼女。
『宜しいでしょう。顔を上げて直言を許します』
「寛大な御心に感謝を」
そう言って顔を上げた教皇猊下の顔は……やっぱり。
その顔立ちは綺麗ながらも幼さが少し残り、とても儚い様に見える少女だった。
歳は多分僕と変わらないか少し下かな?
そんな女の子が顔を青ざめさせながらも、しっかりと自分の言葉を紡いでいく。
「恐れながら、貴方様は精霊王様であらせられますか?」
精霊王を前に「精霊王ですか?」と聞くなんて不敬も不敬だが、彼女に……いや、ここにいる僕達以外の全ての者にとってはとても重要な問い掛けなのだろう。
『逆に貴方方に問い掛けます。精霊王の姿も名も知らずに精霊王の使徒と名乗っていたのですか?』
エレナーデから放たれている圧は更に重さを増した。
しかし、気絶する事を許されてない皆はその圧の苦しみを気絶と言う逃げ道すら塞がれ、意識を保ったままで受け続けなければならない。
「も……申し訳…………ありません……。お……姿が……伝承以上に…………美しく……神々……しい…………ので…………」
息も絶え絶えで何とか言葉を発する教皇猊下。
流石にやり過ぎだと心の中でエレナーデに伝え、圧を話すのに支障が無い程度迄抑えてもらう。
圧が弱まったのか、肩で息をしながら、エレナーデに対して失礼にならない様に息を整えて、続きを話す教皇猊下。
「恩情、感謝致します」
『もう一度最初から話しなさい』
「はっ。姿と名を知らず申し訳ありせん。精霊王様のお姿が伝承と違い、伝承以上に美しく神々しいので、無礼を承知でお尋ね致しました」
『そうですか。でしたら今の不敬は不問とします』
「寛大な御心に再び感謝を」
凄い。
外面は恐ろしい程に威厳があるのに、僕の頭の中には「ロイが決めた姿が美しいと褒められました。でもロイに褒めてもらった方が私は嬉しいです」とかずっと言ってる。
君は二重人格か何かか?
「お、恐れながら私めも直言を宜しいでしょうか?」
『…………良いでしょう』
あ、ドゥ枢機卿の許可を凄く嫌そうに許可出してる。
「我々、精霊王様の使徒はこれまでずっと祈りを捧げて参りました。にも関わらず、何故その様な者に―――ぐっ……かはっ…………!」
言葉の途中で苦しそうに喉を抑えてしまうドゥ枢機卿。
『使徒……?私がいつ、何処で貴方達を使徒と定めましたか?使徒は勝手に名乗るなど烏滸がましいにも程がありますよ。それに加えて私の定めた歴史上二人目の使徒にして、私の寵愛を受けし者をその様な者?ふざけるのも大概にしなさいっ!』
エレナーデの怒号に近い声と共に、ステンドグラスと精霊王を象った像が一瞬にして砕け散る。
『精霊王エレナーデがこの場にて宣言致します。自ら使徒と名乗り、永きに渡って人々を騙し続けたこの教会、そしてこの国は未来永劫、たとえ死に至ったとしてもその魂迄も苦しみ続ける事でしょう。それが貴方達の罪です。その魂が擦りきれるその時迄償い続けなさい』
先程の怒号と打って変わって、今度は宣言通り魂まで凍える様な冷たい声で宣言するエレナーデ。
そしてその宣言は教国の面々を絶望に叩き落とすには充分過ぎる様だった。
ドゥ枢機卿は縋るようにエレナーデに懇願する。
「せ、精霊王様!私達はこの身も心も、全てを貴方様に捧げこれ迄生きて参りました!どうか、どうか御慈悲を!」
「精霊王の使徒を自称して何を今更……」とも思わなくも無いけど本人の中では嘘では無いのだろう、エレナーデもそれを否定する事はしなかった。
『確かにそうなのかもしれません。ですが傍若無人な振る舞いをして良い筈はありません。何を信仰するかは個人の自由ですから』
「いや、エレナーデがそれを言ったら駄目でしょ…………」
思わず突っ込んでしまった。
だって崇められている本人が、自分を信仰しなくて良いなんて言い放つのは色々問題しか無い。
それにしたってこのままだと一向に話が進みそうに無い。
ただひたすらにエレナーデを教国の人達が怒らせるだけだ。
「あの、そろそろ話を本題に戻して良いでしょうか?教皇猊下」
僕はそう切り出して、話を進めていく事にした。
折角「無理矢理なチートが無くて良い」と評価をいただいていたのに、主人公がチート覚醒してしまった…………。
勿論、当初の予定通りなので修正はしませんし、分かり切っている事ですが、全ての方々に楽しんでいただける作品って難しいですね。
…………と素人が申しております。