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超エリート貴族の長男は苦悩する〜転生したら主人公では無く、貴族の息子でした〜  作者: まっしゅ@


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何事も上から目線の人っているよね

「はぁ〜……帰りたい」


 僕の呟きに対してこの場にいないエレナーデが『帰りますか?』と聞いてきたので、心の中で『冗談……じゃないけど、大丈夫だよ』と返しておいた。


 現在、僕は陛下と父上と共にラリノア聖教国の大聖堂にある応接室のソファに座っていた。


「それで?いつまで待たせるつもりかな?教皇猊下は」

「も、もうしばらくお待ち下さい」


 陛下は苛立ちを隠そうともせず、扉の前に待機していた神官に圧を掛けながら話し掛ける。

 気持ちは分かるけど、少し神官の人に同情してしまうな……。


「そう苛立たないで下さい陛下。あちらからこの時間を指定しておいてこんなに長時間待たせるという事は、教皇猊下はさぞ豪華な歓待をして下さるのでしょう。ねぇ、神官殿?」

「ひゃ、ひゃいっ!」


 父上、凄い笑顔なのに凄まじい圧が…………。

 神官の人も顔が青いを通り越して白いですよ?


 そんなタイミングで部屋の扉がノックされ、「準備が整いました」と別の神官が僕達を呼びに来た。

 部屋に待機していた神官は心底ホッとした表情をしている。

 ごめんね、名も知らない神官の人。


 呼びに来た神官に案内されるまま付いていき、大聖堂でも一際大きく豪華な装飾が施された扉の前で立ち止まった。


「ガザニア帝国の方々をお連れ致しました」

「ありがとうございます。中に入られて下さい」


 神官の声に返ってきたのは女性の声だった。


 いや、あれは女性と言うより―――


 扉が開かれて中へ進む。

 扉に勝るとも劣らない美しい部屋、少し高い位置にある玉座……とは呼ばないか、王じゃないもんね。

 そんな椅子の頭上にはエレナーデらしき人物が描かれた巨大なステンドグラスがあり、真後ろには同じく巨大な精霊王の像が祀られている。


(あれは誰でしょう?)

(え?エレナーデじゃないの?)

(あの様な姿で姿を現した事は……無いですね)

(まぁ、口伝の伝承とか書物なんてそんなもんでしょ。前の世界みたいな写真がある訳じゃないし)

(私はUMA扱いですか?)


 こちらの世界でUMAなんて言葉を使わないでほしい。

 笑いを堪えるのに一苦労だ。


 そんな会話をしつつ、僕達は教皇猊下が座る椅子から少し距離を置いたところで立ち止まる。


 本来ならばここで僕達は跪くべきなのだが―――


「わざわざ時間をお取りいただき、ありがとうございます教皇猊下」


 陛下はそのまま頭を下げる事もせず、教皇猊下に直言する。

 それを見て、教皇猊下の両隣に立っている男性の一人が声を荒げた。


「無礼者!ここにおわすは精霊王の使徒であり、全人類の長でもある教皇猊下であらせられるぞ!頭が高い上に直言など失礼であろうが!」


 顔を真っ赤にして僕達の非礼を咎める男性、多分枢機卿の一人なんだろう。


「おや?それは心外ですね、ドゥ枢機卿。我々は()()()()()()()()()話し合いをしたい。そう、お伝えした筈ですが?」

「ふざけるな青二才めが!平等とは同じ立場に立って始めて成り立つもの!そもそも我々より下の者が平等を求めるとは片腹痛いわ!」


 成る程、元から相手は「自分達が上、お前達は下」と決め付けている。

 だからこそ、こちら側の要望を異常なまでに快く受け入れたのか。


「我々より下?武力を持って戦争を仕掛けてむざむざ負けたそちらが上?その上、精霊王様を崇めると言いながらリュツィフィエール(失墜した精霊王)を喚び出すという、精霊王様を最も愚弄した貴方達がですか?」

「貴様っ!?いい加減に―――」

「いい加減にするのは貴方の方ですよ、ドゥ枢機卿?」


 更に激昂したドゥ枢機卿を静かに嗜めるのは猊下を挟んで逆側に立った女性。


「しかしアン枢機卿。奴等は猊下に不敬を働いているのですぞ!?」

「この度の会談は猊下が平等な立場を受け入れての事です。猊下が申し上げた事を無碍にするのはそれこそ不敬では?」

「ぐっ……」


 アン枢機卿と呼ばれる女性。

 彼女は優しく丁寧な口調ではあるが、あくまで「猊下が受け入れたから」のスタンスであり、根本的な考え方はドゥ枢機卿と何ら変わらないのが透けて見えている。


「失礼致しました、ガザニア帝国の方々。それで?今回の会談の本題をお願い出来ますか?猊下はとてもお忙しい身。手短に済ませていただけると幸いです」


 うん、もうこの宗教というかこの国、要らないんじゃないかな?

 纏めて吹き飛ばしてやりたい気持ちを抑え付け、陛下が口を開くのを静かに待つ。


「こちらとしてもそれは有り難い限りです。今回の目的はただ一つ。先も申し上げたトレ枢機卿による宣戦布告並びに侵略行為、それについてどう責任を取られるのかを聞きに参りました」


 陛下は至って冷静に本題をつらつらと述べていく。

 やっぱり政が出来る人ってどんな時も冷静なんだな。

 こっそり顔を見ると血管が千切れそうな笑顔だけど…………。


「責任?あれはトレ枢機卿の独断です。猊下は疎か、同じ枢機卿である我々にすら伝えられていませんでした。その張本人は聞くところによれば術式の発動に巻き込まれ既に死亡、その現れた偽物(リュツィフィエール)は討伐されたと聞きます」

「そのとおりです」

「それに加えてそちらの方々の死者は無かったと。逆にこちら側はトレ枢機卿に()()()()従わされた者達の全てが亡くなりました。つまり被害を被ったのは我々だけです」

「…………何が言いたい?」

「単刀直入に申し上げましょう。戦争を仕掛けたのはトレ枢機卿でしたがそちらに被害は無く、こちらの被害は甚大。よって痛み分けとしましょう」

「痛み分け……だと…………?」


 陛下の笑顔が消え、拳を強く握り、手からは血も滲んでいる。

 多分切れそうと表現した血管の壱拾や二十は切れてそうだ。




 開幕から不穏な空気が流れる今回の会談。

 落とし所を何処にするか、行く先は神のみぞ知るってやつかな。









(神は私ですよ?)








……………………君は少し黙ろうか?

 外はギスギス、仲は天然、それローイ。

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