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いくら愛する人でも24時間365日一緒には居られないよね

 今回長めです。

 入学式が始まり、学園長である父上が登壇し、開会の新入生への祝辞を述べる。


「本日、この素晴らしい日を迎えられた事を喜ばしく思う。私は長い話はあまり好きではない。今日の主役は君達であり私ではないからな、手短に済ませようと思う。これから3年間、この学園生活は楽しい事も辛い事もあるだろう。しかし、ここにいる限りは間違いなくこの学園の生徒であり、私達教師の可愛い教え子だ。ここで、様々な事を学び、自分の糧にしてくれ。そして、いつかこの学園に来た事を誇りに思える様に私達教師と手を取り合って、共に尽力しよう。これからの3年間、君達が良き学園生活を送れる事を切に願う」


 堂内に拍手が鳴り響く。

 流石完璧超人、短いながらも的確に心を掴む素晴らしいスピーチを披露してくれた。

 この後挨拶する僕の身になってくれよ……。





 この後も着々と式は進み―――。




「では、新入生代表挨拶に移ります。新入生代表、ロリュリュリャ=ガストンブルク!」

「はいっ!」


 いや、司会のお姉さん!?

 今俺の名前噛んだよね?絶対に噛んだよね!?

 何故『私達失敗しないので』みたいな済ました顔出来るの!?

 登壇の時に周りを見ると結構な数肩を震わせて笑い我慢してるじゃん!

 俺何もしてないのに既に笑い者じゃん!


 しかし、ここは侯爵家の長男として学園長である父の息子として、完璧な挨拶を披露しなければ!

 ……………………緊張で吐きそうだ。


「只今紹介に預かりました、ロレミュリア=ガストンブルクと申します。私の事は気軽にロイとお呼びください。そうすれば噛んだりしないと思うので」


 職員含めて、何名かが堪えきれずに吹き出した。

 司会のお姉さんは恥ずかしそうに顔を赤くして俯いている。

 仕返し終了、ざまあみろ。


「姓を聞いて分かる通り、私は学園長であるイーサン=ガストンブルクの長子にあたります。ですが、この学園ではそんな事関係ありません。貴族も平民も、男性も女性も、そこに優劣は存在しません。私達は等しくこの学園の生徒になりました。これから3年間、時に手を取り合い時に切磋琢磨しながら、自分自身を成長させ、将来の夢を皆で掴みましょう。父に倣って、手短ではございますが、新入生代表挨拶とさせていただきます」


 言い終わった僕は一礼する。

 父と同等の拍手を受けながら降壇するのは少し気持ちが良い。


 途中、司会のお姉さんに睨まれたのは些細な事だ。


 そして、入学式の締め括りに現皇帝陛下が登壇する。


「皆、知っているだろうが自己紹介するとしよう。余はガザニア帝国皇帝アルフォンス=ペンドラゴンである。本日は…………。いや、無理だ、無理。固い言い方なんて皆つまらないでしょ!普通に話させてもらうよ!」


 新入生達は皆啞然とした表情をしている。

 そりゃそうだ。

 現皇帝は父の友人だから昔から知っているけど、めちゃくちゃフランクな人だ。

 むしろ悪戯好きの無邪気な子どもみたいな人だし。


「新入生の皆!入学おめでとう!この学園は楽しいよ!俺もこの学園の卒業生だから分かる!ここは楽しい!だから不安にならなくて良い!人生楽しんだもん勝ちだ!以上、挨拶終わり」


 言いたい事を言って降壇していく皇帝。

 彼の本性を知っている人は笑っているか天を仰いでいる。

 席に戻ったら教皇様に怒られてるし。

 あれ?皇帝って国のトップじゃなかったっけ?




 そんな事があったけど、無事に入学式は終わり、各クラス毎に教室に案内される。


 今年の新入生は総勢130人。

 その内Sクラスは僕を含めて10人、それ以外が書く40人ずつらしい。

 Sクラスだけは特別で、一定の基準以上の実力を持つ生徒がいない年はSクラス自体が無い事もあるらしい。

 10人と聞けば少なく感じるが、平均3〜5人らしいので、多い方だと聞かされた。


 各々好きな席に着き、担任の到着を待つ。


「お〜し、全員いるか〜?いるな〜。俺がSクラスの担任のジンだ。元冒険者の平民で貴族じゃないからよろしくな」

「先生!ランクはいくつだったんですか?」

「あぁ?お前は確か…………」

「Sクラス第3席、ヨルハです」


 ヨルハと名乗った少女はオレンジ色の髪をハーフツインにしており、それよりも少しだけ深い同じオレンジ色の気の強そうな瞳。

 見た感じは……うん、スポーティなスレンダー美人だ。決して悪口ではないよ?


「一応Aランクだった。因みに基本は近接戦闘メインで魔法はあんまり得意じゃないからな。そこは期待するな」

「…………分かりました」

「よし、まずは自己紹介だ。成績の良かった上から順番に頼む。あ、話す時は皆が分かるように立ち上がってくれ」


 恒例の自己紹介。

 とりあえず僕からなので、言われた通り立ち上がり、自己紹介をする。


「代表挨拶でも自己紹介させていただきましたが、改めて。皆さん初めまして。自称噛みそうな名前第一位のロレミュリア=ガストンブルクです。ご存知この学園の学園長の長男にあたります。ですが、ここは身分は関係ありません。気軽にロイって呼んで下さい。因みに適合属性は雷と地属性です。よろしくお願いします」


 教室から疎らに拍手が上がる。


「俺は次席クラウス=ペンドラゴン。皇帝は俺の父さんだ。目標は父さんみたいに立派な王になる事とそこに座ってるロイに勝つ事だ。適合属性は光と火、剣術は得意だぜ!よろしくな!」


 俺を無駄にライバル視しているのは僕らが幼馴染だからだ。

 皇帝そっくりな見た目で短く整えられた金髪と金色の瞳を持つThe・勇者みたいな熱血漢。

 こいつとは親同士が仲良かったのもあって昔からよく遊んでいる。

 いや、遊んでるっていうか何かに付けて勝負を持ち掛けられて、その度に蹴散らしている。

 皇帝の息子だからといって容赦はしない、皇帝にも手を抜くなと言われているからね。


 その後も次々と自己紹介が続く。


 第3席は先程発言したヨルハという貧乳少女。あっやべっ、こっち見られた。

 ミ二アという町出身の平民で魔法適性が高く、陽属性の火・水・風を使いこなせるらしい。


 第4席、男爵家四女のキリエ。

 王都の法衣男爵家出身で、僕も何度かパーティで見た事ある。

 黒髪ボブと黒目のボクっ娘で寡黙、基本的にボーっとしている。

 割と胸があるのを覚えている。


 第5席も同じく見覚えのあるバリー=ケント、副都ノリンの法衣子爵家の長男。

 茶髪の丸坊主で茶色の瞳を持ち、大柄で筋骨隆々、同い年にはみとても見えない。

 父上の方が若く見えるまであるな、アレ。


 第6・7・8席は多分昔から3人でつるんでる三馬鹿だった筈。

 ロウ領のロウ伯爵家三男のマルアはツンツンの暗めの茶短髪と茶色の瞳のおデブ。

 ナーベル領のナーベル子爵家三男のガリントン=ナーベルは水色の髪で茶色の瞳、ピッシリ七三分けのヒョロガリ。

 ロウ領の法衣男爵メルガーネ=ルンスは緑色の髪と茶色の瞳に瓶底眼鏡を掛けているキノコ頭。


 第9席のコロンは王都の商家の一人娘で、ショートカットの水色の髪と瞳を持つ年齢不相応なロリっ娘。

 胸はヨルハより大きく、身長の割にスタイルは良い。


 第末席のオースタスは辺境の名も無き農村出身の平民でなんと8人兄弟の一番上らしい。

 父ちゃん母ちゃん元気だな。

 ショートに整えた黒髪黒目を持ち、本が好きで身体を動かすのも得意な代わりに魔法は苦手らしい。


 以上がSクラスのメンバー、僕のクラスメイトだ。

 余程の成績が悪いか素行が悪くない限りは下のクラスに落ちる事もない。

 極稀にAクラスからSクラスに上がっくるらしいが、それも可能性としては無いに等しいらしい。




 一通りの説明が終わり―――。


「今日はこれで終わりだ。この後は寮に戻っても良いし、校内を見て回っても良いからな。じゃ、俺は戻るぞ」

「「「「「ありがとうございました!」」」」」


 ジンが教室を出ると、皆の緊張が溶けた。


「おい、ロイ!鍛錬場で模擬戦しようぜ!」

「えー、やだよ。今日はもう寮に行きたいんだけど」

「じゃあ他で勝負だ!」

「相変わらず馬鹿なの?」

「何をぉ!!」

「うるっさいわよ!!」


 僕とクラウスのやり取りを怒鳴りで聞いてたヨルハが声を上げる。


「ごめん、ヨルハさん」

「話しかけないでくれる?私、貴族嫌いなの」


 おぉう。

 剛速球ストレート過ぎて、流石の僕も傷付くぞ。


「おい、平民の女!ロイ様になんて物言いだ!」

「そうだぞ!」

「ミリアの町という事は我が父の領土の町。そこの住人がロイ様に楯突いた事を深くお詫び致します」

「いや、別に気にしてないけど…………」


 唐突に話に割り込んできた三馬鹿。

 こいつら昔から妙に擦り寄ってきて気持ち悪いんだよな。


「馬鹿じゃない?ここでは貴族も平民も平等なんでしょう?こいつが言っていたじゃない。あんた、子分の教育くらいちゃんとしときなさいよ」

「「「俺様ボクチン(ワタクシ)がロイ様の子分っ…………!」」」

「いや、子分とかじゃないから。まともに話した事無いし」

「「「酷いっ!」」」

「いや、酷くな―――」

「しまった!ロイには既に仲間が3人もいたのか!くそ、俺とした事が……。このクラスの勢力図がロイに傾いてしまう……。誰か!俺の仲間になってくれる者はいないか!?」


 クラウスよ、何を言っている。

 三馬鹿は子分でも仲間じゃないし、勢力なんて興味無いんだが……。

 まぁ、他のメンバーがクラウスに賛同なんてしないだろう。


「オレは殿下に従うぞ!殿下、是非とも俺を仲間に!」

「おぉ。君はバリーと言ったな!こちらこそよろしく頼むぞ!」


 え?なんか暑苦しい男の友情が一瞬で完成したんだが……。


「ボクも……殿下の仲間に……なる……。良い……?」

「あぁ、キリエ!勿論だ!」


 おい、嘘だろ?

 あのボーっとしてる子が何故そこに興味を抱く!?


「はいはーい。うちも殿下にお世話になりたーい。そして、うちの家をどんどん大きくして……ぐふふ」

「おう!任せろ!」


 下心満載で動いたコロンがあちらに付いた。


「ヨルハ!君はどうする!?」

「そんなのどうでも良いけど……。そこの貴族のボンボン達に付くくらいなら殿下の方に加わるわ」

「ありがとう!」

「しょうがなくだから!」


 貴族嫌い=王族嫌いではないんだな。

 これで残り1人、とうせクラウス側なんだろう。

 いや、そもそもこの状況自体おかしいんだけど!?


「さぁ、残りは君だけだ、オースタス!どうする!?」

「あの……ぼくは……」

「男らしくないわね!はっきり言いなさいよ!」

「えっと……ぼくは……ロレミュリア様と同室だから……その……仲良くしたいな……」

「え?」


 まさかのオースタスは僕側だった。

 いや、僕側になりたいと言うより、同室の僕と仲違いすると学園生活が暗雲が立ち込めるからという事だろう。

 僕、そんな事しないけどね?


「くそぅ。結局は引き分けか…………」

「いや、勝負も何も皆で仲良くすれば良いんじゃ……」

「明日は負けないぞ!ロイ!では皆、また明日!バリーまた部屋で会おう!」


 悔しそうに教室を飛び出していったな。


「くっだらない。私は図書館にでも行こうかしら」

「ねぇヨルハ、うちも付いて行っていい?せっかくだから見て回りたいんだ」

「良いわよ、行きましょうか」


 ヨルハとコロンも教室から出ていく。

 その後もバリーは訓練場に、キリエはそのまま寮に向かった。


「よし、オースタス。長いからオズでも良い?」

「あ……はい。大丈夫です、ロレミュリア様」

「ロイで良いって。それに敬語もいらない。これから1年は一緒の部屋で過ごすんだから」

「はい!……じゃなかった、うん。ありがとう、ロイ君」


 ありゃ、結局呼び捨ては出来ないのか。

 まぁ追々で、無理強いは良くないしね。


「ロイ様!我々も是非一緒に!」

「嫌」

「「「えーーー!」」」


 落ち込む三馬鹿を無視して。オズと寮に向かう。







 初対面の印象が大事だと言うけど、これ…………大丈夫か?

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