主人公覚醒イベントって心躍るよね
最後の最後にド天然な誰かさんが超メタ発言をぶっ放します。
苦手な方はお気を付け下さい。
その後も、中々進まないながら、何とか聞きたい事を聞く事が出来た。
俺に使命は無い。
ただ、こちらに転生させられたのには一応理由がある。
それはこの世界の発展。
この世界は今、停滞期に入っている。
現存する魔法や技術で満足し、高みを目指す者がいない(正確にはいない事は無いが、少なく、知識等も足りていない)。
文化や技術の停滞は衰退と同じ。
つまり、俺がこの世界に来るまではこの世界は緩やかだが確実に滅びに向かっていた。
そんな時、偶然精霊王の目に留まった俺はこの世界に転生する事になり、現在ロレミュリア=ガストンブルクとして生を受け、好き放題やっている。
「つまり、今のままで良い。と?」
『はい。貴方の持つ知識はこの世界に存在しないもの。その知識を活用して大いにこの世界を発展させて下さい』
「精霊王様がそれをしないのは何故ですか?」
『世界は一度創ってしまえば後は勝手に盛衰していくもの。私が手を加えるのは理に反しますので』
「勝手に盛衰するのに、イレギュラーぶち込んで良いんですか?」
『私が直接手を加えるのはルール違反ですから』
「俺が勝手にするのは問題無いと?」
『はい』
何とまぁ見事な抜け道だろうか。
まぁ、精霊王=創造神だから『自分がルールだ』的な感じなんだろうけど。
『決まりは一度決めてしまうと私でも覆すのは難しいのです』
「やろうと思えば出来るって事ですか?」
『世界を一度滅ぼしても良いなら可能です』
「是非ともやらないで下さい」
再設定不可能だからゲームのセーブデータ消す的なアレか。
「とりあえず、その件は分かりました。ありがとうございます」
じゃあ次は何故このタイミングでこの状況になっているのかを聞こう。
『それはあのままでしたら貴方も他の方々もあの偽物の私に殺されてしまうからです』
「凄くスムーズに話が進んで俺困惑。……ってやっぱり俺じゃ無理でしたか」
『ですので、今から【転生ボーナス】とやらを授けたいと思います』
「はい?」
今?今なの?
そして俺は転生時に何か授かった訳じゃ無かったの?
『はい。何も授けていません。ただ転生させたのみです』
「チュートリアルも説明書も無しのクソゲーじゃないですか…………。って待ってください。では何故、俺はこんなに才能に恵まれていたんですか?親のおかげ?それとも転生したらそもそも能力が上がりやすいとか?」
『努力です』
「努力…………」
え〜…………っと、つまり?
『貴方は生まれてからずっと努力を続けてきました。自分で考え、自分で行動してきました。その一つ一つが貴方の身になり、力となりました。その努力を続けられたのを才能と呼ぶのであれば、そうなのでしょう』
「ははは…………。まじか…………」
俺は別に天才でも何でも無かったんだ。
ただ、人より少し早く、少し長く努力しただけだったのか。
「じゃあ、ずっと疑問に思っていたんですが、このロレミュリアって男の子。この子は存在していなかったんですか?」
『はい。ロレミュリアは貴方が転生するから生を授かったのです』
良かった。
俺のせいで他の誰かの身体を犠牲にした訳じゃ無かった。
『ロレミュリアも前世の貴方も。全て貴方本人です。ロレミュリアの才能は貴方の努力。何も案ずる事はありません』
そっか、そっか。
良かった、本当に良かった…………。
『貴方のその他人を思いやる心があったから、私は貴方を選びました。やはり私は凄いのです。褒めても良いですよ?』
そして何処までもマイペースだ、この精霊王。
いや、オズの姿をした女神様に感謝しかない。
生を受けてからずっと気にしていた事を、ここに来てほんの少しの時間で全て解決した上で、僕に自信をつけてくれたんだから。
「……素直に褒められますと照れますね」
『いや、さっきまで褒められてない自覚あったんかい』
そんなやり取りを経て、僕は転生ボーナスとやらを受け取る事にした。
「結局、僕は何を貰えるんですか?」
『貴方には私の加護を与えましょう。右手を前に出して下さい』
「え?はい。…………って熱っ!!」
『終わりました』
「根性焼きかなんかされたんで…………何これ?」
『それは【精霊紋】。私、精霊王から認められ、その使徒となった事を表す証です』
「あれ?精霊王の使徒って教国の人達じゃないんですか?」
『あの方々は勝手に名乗っているだけです。私はそんな事を一言も言った事はありません』
Oh…………まじか…………。
『それに、偽物の私を喚び出した時点で私の敵です』
「それは本当にそう」
そりゃ自分の偽物を、しかもあんな悍ましい姿で喚び出した相手なんだからそりゃ敵認定しますよね。
「ところでこの精霊紋の効果って?」
『私の力と同等…………とはいきませんが、それに近しい力を使えます』
「ひょえっ!?」
『正確に言えば私の力の内、無属性と精霊魔法の適正を得られます』
「無属性……?精霊魔法…………?そんなものがあるんですか?」
無属性魔法。
基本的に魔力が魔法に変換される際には、術者の適性によって何らかの属性が勝手に付与される。
僕なら雷と地属性みたいに。
それを付与しない魔法…………ただの魔力の塊じゃないとするなら…………。
「全ての属性の根源…………?」
『そのとおりです。全ての魔法は無属性から生まれました。圧縮された魔力とも呼べます。先程、貴方が創った魔力を圧縮した魔石、あれは圧縮された無属性の魔力に地属性が後から付与されて、形を成した物です』
「成る程。では、精霊魔法とは?」
『精霊王の使徒であれば、世界に存在する精霊にとって上位の存在。精霊達に命じてその力を借り受ける事で行使する魔法です。全ての魔法は同じ様に行使されていますが、精霊の力は約一割程度。それを十全の力で扱え、詠唱や魔法陣・貴方が開発した刻印すら必要有りません。全てその精霊紋を通じて行使可能です』
「無属性が属性の根源だとしたら、精霊魔法は魔法そのものの根源ですか…………」
『はい』
いや、『はい』じゃないのよ。
チート過ぎでしょ!?そんなもの貰ってどうしろと!?
『お好きにどうぞ。あ、偽物の私は滅してください』
「かっる!軽過ぎませんっ!?」
『授け忘れていた転生ボーナスを渡しただけですので。元から渡していても同じ事を言いますよ』
「今しっかり忘れていたって言いましたね」
『てへぺろ』
「そんな無表情なてへぺろあってたまるか!」
無表情のオズが舌を出してやってくれたけど、何か逆に怖いよ!
『それは失礼しました。では、全力でこの娘に寄せて―――』
「せんで良い!」
『中々我が儘ですね、貴方は』
「貴女のマイペース具合には負けますけどね!」
『私の勝ちですね』
「そうじゃないけど何か悔しいっ!」
話が始まると毎回精霊王様のペースに巻き込まれてしまう。
悔しいのは間違い無いけど、少し楽しいと思っていたりもする。
「あっ」
僕が不意にそう思ったのが運の尽き。
オズ(の姿をした精霊王)がとてつもなくニヤニヤ顔をして顔を寄せてくる。
『そうですか、楽しいですか。そう思ってくれて私も嬉しいです。良ければ貴方の好きなこの娘の姿でキスでもしましょうか?』
「…………それは遠慮させていただきます」
『ほう?それは何故ですか?』
「精霊王様の姿はオズですが、オズではありません。だから遠慮しておきます。貴女の本来の姿であれば有り難く頂戴致しますけど」
『ふむ、振られてしまいました。しかし残念です、私の本当の姿はありませんから』
「あれ?では精霊王の像の姿は……?」
『あれは先代の使徒に会った時にしていた適当な女性の姿です』
「ここに来てから色んな歴史が塗り替えられていく」
『本来の姿に戻った。と言うのが正しいかと』
確かにそうですねっ!!
本当に歴史なんてアテにならないなっ!!
『さて……そろそろ元の場所に戻りますか?』
「いきなり真面目な話!いや、えぇ、そうしたいと思います」
唐突に巻きに入ったよ、この精霊。
もうツッコむのも疲れたので、早く元の場所に戻ってあの偽物を倒さなきゃ。
『では、ロレミュリア。汝に幸多からん事を』
「ありがとうございます。では」
『はい。いってらっしゃい』
精霊王が軽く手を振ると、僕は光に包まれた―――
『そうでした。貴女にお願いがあったんでした』
「いや、今は良い感じ別れる場面だったでしょうがぁぁぁ!」
目を開けたら先程と一切変わらない景色と目の前にいる精霊王…………ってお願い?
「お願い?命令じゃなくて?」
『はい、そうです。断っていただいても構いません』
「出来るだけ聞きたいですが、長くなります?」
幾らここにいる時間は向こうと違うと言っても、結構な時間過ごしてしまっていたので、内心気が気じゃない。
早く戻りたいのが本音だった。
『いえ、そこまで文字数が必要ではございません』
「もじすう…………?何ですか、それ?」
『いえ、こちらの話です』
もじすう……文字数?本当に何の話?
こちらの困惑を無視して話を続ける精霊王。
『では私からのお願いです。それは―――』
精霊王=創造神=……………………私(作者)!?←違わないけど違う




