現実は小説より奇なりって本当だよね
リュツィフィエールに《雷神の裁き》を放ったものの、倒すには程遠く、対した傷を負わせる事が出来ずに気を失った。
しかし、不思議な事に今は真っ白な空間にふわふわと浮かんでいる。
(ここは……?夢…………?)
右も左も上も下も分からない、見渡す限りの純白。
何が起こっているか分からずにいると、頭に声が響いた。
『ここは私の存在する空間です。意識を失い倒れた貴方の魂だけをこの空間へと喚びました』
頭の中で考えた疑問への回答が示される。
「誰だっ!?」
『私は名も実体と持たぬ存在。貴方の世界では【精霊王】と呼ばれています』
「精霊王…………」
『そうです。貴方が借りを返せと仰ったので、返そうと思いまして』
つまり、俺をこの世界に転生させ、ロレミュリアとして新たな生を授けた張本人がこの精霊王なのか。
『その通りです』
「ナチュラルに心を読むんですね……」
『この程度、造作もありません』
「そっすか…………」
読心を悪びれる事も無く使う辺り、自分達とは一線を画す存在だと痛感する。
『そんなに褒められるとは思いませんでした。嬉しいです』
「褒めた……かな?」
『はい、褒められました』
「じゃあそれで良いっす」
何だろう?
少し天然なのかな、この人?
いや、この精霊王。
『さて。私としては何時までもこうしてお話していたいのですが、貴方はそうでは無いでしょう?』
「そうですね」
そうだ。
今、戦場は大変な事になっている。
ここで時間を無駄に費やして、目を覚ましたら誰もいませんでしたなんて洒落にならない。
『その心配は無用です。こちらとあちらでは時間の流れが違います。ここで何年過ごしてもあちらでは一瞬の出来事。勿論、過去では無ければ好きなタイミングに戻る事も可能です』
「うわぁ……。何でも有りですか…………」
『この世界は私が創ったので自由自在です』
え?待って待って。
そうなると精霊王と言うより創造神とかそのレベルじゃん。
『貴方の世界ではそう呼んだりしますね。全てその世界にいる人々が勝手に呼んでいるだけなので、私としてはどちらでも宜しいのですが』
あ、もうデフォで心の声と会話するつもりなのね。
じゃあ、この流れで質問良いですか?
『どうぞ』
でも、流石に失礼だから声に出して告げよう。
『でもその前に、姿が見えない相手に話し辛いでしょう。適当な姿になりますね』
ド級のマイペース。
そして、そんな事も出来…………ますよね、そりゃ。
『はい、勿論です』
「えっ……と……。オズ……じゃないですよね?」
『はい、貴方が一番親しみを感じている姿になりました。どうでしょうか?』
「どう?と聞かれましても……『オズだなぁ』としか……」
『つまり、私は完璧だと。そう言う事ですね』
「もうそれで良いんで質問をして良いですか?」
『何故か私の扱いが雑な気がしますが、寛大な心で許しましょう』
わーい、ありがとー。
「では、質問です。俺をこの世界に転生させたのは貴方なんですか?」
『はい』
「それは何故ですか?」
『何となく?』
え?嘘でしょ?理由無いの?
『はい』
……思った事を読まれるの、案外便利かもしれない。
『流石私です』
はいはい、凄いですね。
『その扱いに異議ありです。雑だと思います。あと、話してる相手に無言なのは如何なものかと』
「あぁ!面倒だな、この精霊王!」
『乙女心を勉強した方が良いと思われます』
「なあぁぁぁ!どうせ非モテの童貞だよぉぉぉぉぉ!」
この精霊、躊躇無く人の急所攻撃してきやがる。
何だ?敵か?敵なのか?
『私は貴方の味方ですよ』
オズの見た目で女神スマイルされて敵認定出来るかぁぁぁ!
『まぁまぁ、落ち着いて下さい』
オズ(の見た目の女神)が手を軽く振る。
「これが落ち着いて…………落ち着いた。え?何かしました?」
『心を落ち着かせました』
「流石精霊王」
『褒めても良いですよ。褒めたら私が大変嬉しくなります』
「わーすごいすごい」
話が逸れ過ぎている、修正せねば。
『こちらの世界に喚んだ理由は貴方が適任だと思ったからです』
「へ?」
『貴方の魂は善性が強い。誰にでも心優しく、他人を下に見たりしなかった。自分が幾ら凄いと言われようと、それに胡座をかかず、謙虚で居続けた。それが選んだ理由です』
……選んだ理由あるやないかーーーい!
『勿論、人並みの性欲や少々独特な性へ―――』
「女神様ストーーップ!それ以上は駄目!心が砕けるから!」
『大丈夫ですよ。それくらい私がいつでも元に戻せます』
そうじゃ無いんですよ、そうじゃ。
『ふむ。人間は難しいですね』
貴女が特殊過ぎるんですよ、貴女が。
「それで?こっちに連れてきて何をさせようとしているんですか?」
『特に何も』
「はい?」
『特に何もさせるつもりはありません』
「……何か転生者の使命とか?」
『ありません。強いて言うなら、身体を大事にして下さい』
「それそれは丁寧に…………って、違うでしょう!」
『ふむ。それがノリツッコミと言うやつですね』
「もうやだ、この精霊。話が噛み合わない」
『そんなに褒めても金銀財宝しか出ませんよ?』
「すっっっごい有り難いですねぇ!?」
どうしよう、本当に話が進まない。
女神と言えば【ツンデレ】【母性マシマシ】【ド天然】のどれかって相場ぎ決まっていますよね!ね!?




