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超エリート貴族の長男は苦悩する〜転生したら主人公では無く、貴族の息子でした〜  作者: まっしゅ@


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35/70

隠し事の一つや二つ誰にでもあるよね

 サクッと終わらせるつもりが筆が乗ったせいでシリアスが続いてしまう……。

 こっちはお気楽ほのぼのの予定だったのに……(この戦争が終わればほのぼのに戻ります)。

 それは、見た事も聞いた事も無い姿だった。


 上半身は人の姿……いや、多分精霊王を象っているのであろう三対の翼を生やした女性の姿。

 問題は下半身。

 腰から下の脚は無く、上半身の数倍はある球体だった。

 しかしよく見れば、それは球体では無い。

 先程の黒い魔力に取り込まれた人…………だった者達が押し固められ、球状になっているだけだ。

 もはや人としての原型は無く、顔や手脚の配置は無茶苦茶だ。


「ユウジ……」


 その一部にはユウジだったものの顔が見て取れた。

 別に悲しい訳では無い。

 だが僕とは違い、異世界から突如転移させられ、この世界の常識も何も知らないまま勇者として祭り上げられた挙げ句、辿り着いた先は異形の一部。


 もし立場が逆ならどうなっていただろう……。


 そう考えるだけで背筋が凍りつく。


 それに加えて、ワイバーン程(大体10m程)のサイズの異形が発する禍々しい魔力に、これだけ距離があっても何とも言えない気持ち悪さを感じていた。


『あれは……そんな…………』

『ルシア?アレが何か知ってるのか?』

『知っていると言えば知っている……と言うべきね…………』

『はぁ!?おい、どういう事だ!?』


 アレの正体に覚えがあるルシアお姉ちゃんだが、どうも歯切れが悪い。

 焦りなのか、苛立ちなのか、シリウス師匠の語気が強くなる。


『私だって詳しくは知らないのよ。それにこれは私達の一族の汚点だから…………』

『汚点だろうが何だろうが今は関係ねぇだろうが!』

『言い辛いかもしれないけど、話して下さい。今は少しでも情報が欲しいんです。あいつが動き出す前に!』

『……分かったわ』


 そう言いつつも、今は少しでも情報が欲しい僕達は話を促し、彼女は渋々話し始めた。




 あの異形の名は“リュツィフェール(失墜した精霊王)”。


 その昔、魔導姫の一族で初代に次ぐ力を持った子孫の一人が大精霊をこの世に顕現させる為に数え切れない程の奴隷の命と魔力、それに加えて自らの命を糧に召喚しようとした。

 しかし、現れたのは歴史に語られる精霊王の姿とは似ても似つかない異形の存在だった。

 召喚された直後に何とか送還して事なきを得たが、それは一族にとって恥ずべき事としてその事実を隠蔽、その時代の当主は行方不明として内々に処理された。

 この出来事は決して記録に残されず、代々当主になった者のみに先代から口伝で伝えられて今に至る。




『……って訳よ』

『あいつの正体は分かったが……』

『送還するにしたってその方法も分からないですね……』


 三人で頭を悩ませる。

 まだ召喚された魔法陣の上から一切動いていないがいつ動き始めるかも分からない。

 動く前にどうにか出来ないか。と、僕もルシアお姉ちゃんも魔法師団の皆も攻撃魔法を放っているが、最初に僕が攻撃した時と同様に散らされてしまい、本体に届いていない。


『本体に当たる前に消されてる……。そうなると障壁……いや、違う。障壁に当たった時はもっと―――』

『あぁ〜……。出ちゃったわね』

『ん?何がだ?』

『ロイよ。ずっとブツブツ言っているでしょう?あれ、昔からの癖なのよ』

『俺が指導してる時にはそんな事無かったぞ?』

『それは貴方の場合、ずっと身体を動かせ続けてるからでしょう?私が魔法を教えた時に疑問があるとああなってたのよ』


 僕の小さい頃からの…………何なら前世からの癖だった。

 分からない事・腑に落ちない事は分からなければ気が済まない。

 ひたすら自分の知識と現状を照らし合わせて、何故それが起こるか考える。


 見落としは無いか?

 知識が間違っていないか?

 常識に囚われ過ぎていないか?


 その間も皆は攻撃してくれている。

 攻撃が当たった時に弾かれる訳では無く、当たる少し手前で魔法が散る、つまり魔法が魔力に還元されている。

 還元された魔力は何処に行った?

 空気中に還ったのか?

 いや、そんな感じでは無い。


 そうすると答えは一つしか無い。


『ルシアお姉ちゃん。シリウス師匠。多分あいつを倒せます』

『えぇ!?』

『何!?』


 僕の突拍子も無い発言に二人も困惑している。


リュツィフェール(失墜した精霊王)は今、あの身体を動かす為に辺り一帯の魔力を吸収しているんだと思います。だから、いくら魔法を撃っても奴を覆っている高密度の魔力の鎧みたいなものに当たって魔力に還元されて、そのまま奴の餌になっている』

『だったら今すぐ攻撃を止めさせた方が良いんじゃねぇか?』

『いえ、むしろそのまま吸わせ続けましょう?』

『どういう事?』

『餌を勝手に食べてくれるなら、そのまま好きなだけ食べさせちゃいましょう』

『おいおい、冗談よせよ。そんな事したら力を取り戻して暴れ出すんじゃねぇのか?』

『そうなりますね』

『だったら―――』

『だったらお腹いっぱいで動けなくさせる。もしくはそのまま満腹を超えて破裂してもらいます』

『『……………………は?』』


『何言ってるんだ、こいつ』と声だけ表情が分かるような返事が返ってきた。

 むぅ……凄く真面目に言ったんだけどなぁ。




 僕は改めて僕の頭の中に描いた作戦を二人に伝えた。

 リュツィフェールはロシア語でルシファーの意味です。

 今回は堕天使としてではなく、堕ちた精霊王(堕精霊?)としてこの名前をお借りしました。


 ロシア語を選んだ意味は…………ありません。

 強いて言うなら一番発音しにくそうだったので!



騎士団長「そう言えば俺、戦争始まってから何もしてねえな」

魔法師団長「それを言い始めたらロイ以外殆ど何もしてないわよ」




二人の団長「…………これが主人公補正か」


 ざっつらいと!

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