起きてほしくない事って大体起こるよね
現在周1更新ですが、頻度上げた方が良いのかな……?
ストックはある程度溜まってきてるのですが……。
次の日、いつの間にか眠っていた僕は、ルシアお姉ちゃんの部屋のベッドで目を覚ました。
目を覚ましたは良いが、僕の体はまだ寝ている彼女に抱き枕の様にガッチリホールドされ、相変わらず甘い凶器に顔を埋めたままの状態である。
抜け出そうにも、動いたら起こしてしまいそうだし変な所を触ってしまうかもしれない。
素直にこの昨日よりもっちりとした包容力(物理)をもう少し楽しもうと諦めた時にふと視線を感じ、なるべく動かない様に上を向く。
「あら起きてたの?それなのにそのままの体勢だったなんて…………えっち」
色気漂う笑みと声色で囁かれたら、ロイのロイが…………って駄目だよ!
そんな作品では無い!至って健全な作品なんだから!
え?今の何?僕、魔法か何かで操られたの?
思ってもない言葉が脳内を駆け巡ったんだけど。
とまぁそれは置いておいて、起きてる事が分かったのであれば、ゆっくりと体を離し、ベッドから起き上がる。
が………………。
あれ………………?
「ルシアお姉ちゃん?」
「どうしたの?」
「何で僕はパンツ一枚なの?」
「この部屋に貴方の着替えが無かったからね」
「じゃあ何でルシアお姉ちゃんも下着姿なの?」
「いつも寝る時はこうだからよ?」
「ソウナンデスネ」
ベッドから立ち上がれば僕はパンツ一枚、ルシアお姉ちゃんは下着姿で、溢れんばかりの包容力(物理)とスラリと伸びたお御足をこれでもかと披露している。
こんな状況、誰かに見られでもしたら―――
「おい、ルシア!坊主が何処にいるか知らねぇか!?部屋に行っても誰も―――悪い、邪魔したな…………」
「違う、違うからーーー!」
ほら、やっぱりこうなるじゃん…………。
この後、説明するのにそこそこの時間を費やした。
まぁ、説明しても結局恥ずかしい思いはしなきゃいけないんだけどさ…………。
既に凄まじい精神的ダメージを負ったけど、それでも敵は待ってくれないので、身支度を済ませて布陣の準備をしていく。
準備と言っても魔箱の中身を確認するくらいで、今から準備しておくものは無い。
手早く済ませた後、僕は部屋を出て廊下をうろつきながら目的の人物を探す。
「こんな日まで鍛錬してるなんて…………。シリウス師匠〜!今少し良いですか〜?」
結局居たのは本部の中庭。
そこで剣を振るシリウス師匠に声を掛けた。
素振りを止めて振り返った彼は滝の様な汗をかいている。
「おぅ、坊主。どうかしたか?それとも今朝の「違います」お、おぅ……」
朝の事を振り返そうとするもんだから食い気味に否定する。
僕の剣幕に流石のシリウス師匠も後退った。
「全く……。それよりこれを」
「ん?何だこれは?」
「お守りみたいなもんですよ。生命の危険があった時に一度だけ所有者を助けてくれます」
「…………それはお守りなんて代物じゃねぇだろう」
「どうせ、いの一番に敵陣に突っ込むでしょうから。持っておいて損は有りませんよ」
「確かにそうだな……。で?何だ、この量は……」
シリウス師匠には分厚い本の様な枚数の身代わりの紙。
以前、陛下と父上との話し合いの際に陛下が持っていたものと同様の物だ。
因みに名前をその場で聞かれてとっさに“守りの護符”と名付けたのでそれが正式名称。
「とりあえずこれだけあれば余程の事が無ければ死ぬ事は無いでしょう?」
「そうだけどよ……。俺一人が持っていても意味はねぇ。部下達に配っても良いか?」
「えぇ。その為にそれだけの枚数お渡ししましたから。流石に全員分になると用意が……」
「分かってる。かの高名なアルベルト=アインシュタインでも無理な事くらいあるわな」
「いえ、用意するのが面倒なだけです」
「出来るのかよ…………」
何故か盛大に呆れられた。
結局、部隊を指揮する部隊長や副団長達に配ってもらう事が決まり、これの発動条件を詳しく説明してシリウス師匠と別れる。
「さて次は…………」
シリウス師匠の次と来たら、相手はもう決まっている。
僕は朝目覚めた部屋を訪ねた。
ノックをすると中から「どうぞ〜」と許可が降りたので部屋に入る。
「失礼しま―――っ!何で着替えてるんですかっ!?」
急いで部屋を出て扉を閉める。
あの人、絶対誂って遊んでるだろ……。
5分程経ち、中からまた声が掛かったので今度は慎重に扉を開ける。
そこには着替えを終え、いつもの格好をしたルシアお姉ちゃんが座っていた。
「そんなに警戒しなくて良いわよ」
「誰のせいですか、誰の!」
「あら?昨夜はあんなに激しく絡み合ったのに」
「絡んでませんから!いや、感謝はしてますけど!」
「素直で宜しい。それで?話があるのでしょう?」
結局いつも戻りルシアお姉ちゃんの手の上で転がされっぱなしだ。
そればかりだと癇に障るので、僕はさっさと本題を切り出した。
「ルシアお姉ちゃんと師団の中でも上の立場の人達にこれを渡してほしくて」
「あら?これは?」
僕が取り出したのはシンプルなブレスレット。
勿論、ただのブレスレットでは無い。
本当は指輪の方が嵩張らないし便利なんだけど、また何か言われそうだったので今回はこちらにした。
「これは“護身のブレスレット”です。魔力を通すだけで対物理・対魔法障壁が二重展開出来ます。形状と範囲は所有者の任意で指定出来るので、前方からは勿論上空や後方からの攻撃も守る事も防ぐ事が可能です」
「障壁と言っても私達は大体展開出来るから、そこまで画期的とは呼べないけど……。因みに効果はどの程度かしら?」
「範囲重視なら前方へ壁状に展開して最大500mですね」
「……どのくらいの攻撃なら防げる?」
「最大範囲なら中級魔法1万程で破られちゃいますね」
「…………最小範囲なら?」
「さっき試したんですが、一番小さい状態の対物理障壁だったらシリウス師匠の八割程度の斬撃なら何とか防ぎきれました。ただ、こちらも割られたので良くて七割が限界と思ってもらって良いと思います」
「前言撤回よ…………。私達の存在意義が揺らぐくらいの代物ね」
あれ?また呆れられた?
おかしい、皆の為を思って渡したのに…………。
「ただ、これだと渡すのは部隊長よりも平団員が良いわね」
「そうなんですか?」
「役職持ちは火力面で重要だわ。それよりも平の団員に渡して完全に役割を分担した方が火力・防御のどちらも確保出来るもの」
「そうなんですか……。でしたらその辺りはお任せします」
「えぇ、任せておいて。…………ところで、この戦が終わった後、これの扱いは……?」
「え?まだまだ沢山ありますし、差し上げますよ」
「貴方ねぇ…………。これはイーサンが頭を抱える訳だわ…………」
「えぇ!?何でそうなるんですか!?」
「自分の胸に手を当てて聞いてみなさい」
シリウス師匠にもルシアお姉ちゃんにも呆れられっ放しだ。
おかしいな。
喜んでもらえると思ったのに…………。
僕は自分の胸に手を当てて考えたが、結局理由は分からなかった…………。
参考までに、守りの護符も護身のブレスレットもこの世界で値段を付けるなら貴族用の馬車一台を買える額になります。
そんなもんが魔箱の中に大量にあるロイの総資産は現金やその他諸々を含めると国家予算に匹敵します。
そんな金持ちになりたかった……。
いや、そこまでじゃなくても良いけど……。




