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喧嘩両成敗って都合の良い言葉だよね

 脱線をしながらも話を進めていく。


「じゃあまずはロイ君。今回の経緯を説明してくれ」


 陛下にそう言われ、僕は何故ユウジと模擬戦を行い、あの様な状況になったのかを詳しく報告した。

 勿論、ユウジに言われた言葉も一字一句違える事無く。


「うん、ガストンブルク公爵に聞いていたのと、練武室の魔道具に録音されて居たものと相違無い。ありがとう」

「疑われていたんですか?」

「まさか。一方の視点から見ても真実は見えてこないからね。念の為だよ、念の為」

「はぁ……」


 陛下の言う通り、一方の証言だけ聞いて盲目的に信じてしまえば、真実が分からなくなる可能性がある。

 だからこそ、僕・ユウジ・周りの人達や魔道具の情報を確認し、主観的・客観的な事実や感情を踏まえた上で今回の事の顛末を把握して裁決を下すのだろう。


「本来、勇者君の回復を待ってから全てを決めるべきだけど、今回の件に関してはあの子の証言は然程重要じゃないと判断した。だからこの場で、皇帝である私自ら裁決を下そう。ミネア、ジンの両名は私の勅令を聞いた証人並びに裁決の立会人として、これからの私の言葉を一字一句違える事無く記録せよ」

「「「「はっ」」」」


 陛下の纏っている雰囲気が変わる。

 今から彼の口から発せられる言葉は父上の友人のアルさんの発言では無く、皇帝アルフォンス=ペンドラゴンとしての勅令だ。

 僕と父上は腰掛けていたソファから立ち上がり、母上とジン先生はその場にそれぞれ跪く。

 その動作を挟み、母上とジン先生は言われた通り、記録を書き残す準備をした。


「用意は出来たみたいだね。では先ずラリノア聖教国の異世界から召喚された勇者カガミ=ユウジ。彼は回復次第事の経緯を聞き、ラリノア聖教国へと強制送還とし、問題を起こした張本人を無責任にこちらへ差し向けた聖教国には弁明並びに賠償金を求める事とする」


 立会人とそれた二人はその言葉を各々復唱しながら記録していく。

 その後も陛下の言葉は続いた。


「次にガザニア帝国騎士魔法学園並びに学園長イーサン=ガストンブルク。生徒達の逸脱した戦闘行為を止められず、他国からの留学生がとしてこちらに来た生徒が命の危険が無かったとは言え危険な目に合い、あと一歩間違えれば取り返しのつかない事になっていた。その罰として向こう1年間、帝国は学園への支援を一切行わない。また、学園長であるイーサン=ガストンブルクも同じく1年の間、学園長職における給金は一切無しだ」

「はっ。謹んでお受けいたします」

「次にガストンブルク公爵家並びに当主イーサン=ガストンブルク。ガストンブルク公爵家子息であり、次期当主であるロレミュリア=ガストンブルクの蛮行を止める事が出来ず、先程の述べた様に聖教国との友誼に罅を入れた。事は重大だと判断し、ガストンブルク公爵家への貴族報酬は3年の間無しとする。イーサン=ガストンブルク現当主は現在の職務に加え、聖教国との対談において私と共に尽力してもらう」

「はっ。重ね重ね謹んでお受けいたします」


 これを聞いた時に後悔した。

 父上は公爵家の当主であり、学園の学園長でもある。

 その生徒であり息子である僕がやらかしてしまったら、どちらの立場としても罰を受ける事になってしまうのは簡単に分かる事だった。

 父上は学園と学園長として1年間、公爵家として3年間、一切給料を受け取れず、しかも今度のユウジの話し合いにおいて陛下付きで参加する。

 給料無しの上、業務量倍、精神的負担数倍だ。

 普通の会社員なら即辞表提出案件だ。


 更に言えば、学園への支援が無いのであれば、その運営資金を全て学園長自ら補わなければならない。

 言われた通りの文面以上のマイナスが公爵家に伸し掛かる。

 本当に後悔先に立たずだ…………。


「そしてロレミュリア=ガストンブルク。他国の勇者に挑発されたとは言え、精神的に壊れる後一歩まで追い込んだ。これは他国の者では無くても問題だ。それに学年首席で公爵家の次期当主、生徒として貴族として模範となるべき立場でその様な行為に及ぶなど言語道断。それを踏まえ、ロレミュリア=ガストンブルク。君は今学期末終了時点で学園を退学とする。それに加え、ロレミュリア個人として、今回の件に巻き込んだ迷惑料をガストンブルク公爵家と学園に相手の言い値の分で支払う様に」

「…………謹んでお受けいたします」

「また、私自ら決めた強制労働に就いてもらう。詳細は追って知らせる」

「はっ」


 迷惑料に関しては全く問題無いが退学と来たか…………。


 まぁ、そうだよな。

 今回は本当に考え無しで動き過ぎた。

 元々良い歳した大人だったのに、まるで子どもみたいな行動だ。

 肉体に精神が引っ張られてるのか?……いや、これも体の良い言い訳だ。


「最後にラリノア聖教国への対応だ」

「え?」


 ラリノア聖教国に?

 さっきユウジの時に賠償を求めると言ってたけどそれだけじゃ無いの?


「ラリノア聖教国は勇者の問題性についてこちらには一切報告をせず、一歩間違えれば彼が暴走し、未曾有の事件に陥る可能性もあった。この行為は我が帝国への敵対行為並びに事実上の宣戦布告とも取れる行為だ。私はこの行為を一切許す気は無い。徹底した責任追及を行い、場合によってこちらから宣戦布告も辞さない」

「!?」


 まさかの相手の態度によってはこちらから宣戦布告する発言。

 しかも公式の場では無いとは言え、正式に文書を残す場での発言だ。

 普段は温厚で、むしろ人が良過ぎる程の人格者である陛下が言ったのだ。

 事をかなり深刻に捉えているんだろう。


「以上を持って、勅命とする。皆、楽にして良い。ミネア、ジンもご苦労。その書類は……誰か。「はっ」この者に渡してくれ。こちらで宰相に届けよう」


 オボロさんと別の人が今度は天井から降ってきた。

 何?月影の方々って何か一芸を極めた方々なの?


「よし、これで終わり!いやー真面目にやるのは疲れるね。とりあえずこれで喧嘩両成敗…………に見えるでしょ」

「へ?」

「いや、だってさ。明らかに向こうが悪いでしょ?でも、それを追及だけしているとなると何か言われた時に弱いからね。()()()学園・ガストンブルク公爵家、そしてイーサンとロイ君には少し重めの処罰にしたんだ。『こちらの者はここまでされてるんだぞ?そっちが知らぬ存ぜぬなんてないよな?』って牽制の意味で」

「だからといってロイの退学はやり過ぎでは?」

「ん?問題無いよ。後で知らせるとは言ったけど二学期からロイ君は生徒では無く先生として学園に戻ってもらうつもりだから」




「はい。…………はいぃぃぃぃ?」



 そんなこんなで勇者ユウジが起こした事件は本当の一件落着を迎えた…………のか、これ?

 新たに出てきた月影の方の名前は考えていません。

 能力は闇属性で、透過を得意としており、ある程度の厚さまでの壁や床はすり抜ける事が可能。

 って設定くらい。

 後々必要があれば名前をつけて再登場するかもしれませんが、あまり影がぽんぽん出てくるのもおかしいですしね。

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