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超エリート貴族の長男は苦悩する〜転生したら主人公では無く、貴族の息子でした〜  作者: まっしゅ@


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23/70

後先考えずに行動した後って八割方後悔するよね

『こいつをどう壊してやろうか』 


 僕の胸の内はそんな気持ちで埋め尽くされていた。

 自分でも分かる位、ドス黒い感情が心と体を駆け巡っている。


「何を言ってるんだ、このクソガキが!俺は勇者だぞ!やれるもんならやってみろぉ!」


 聖剣を天に掲げ、光が集まる。

 その光は聖剣から()()()()様に立ち昇り、キラキラと輝いている。


「これが勇者であるの奥義の一つ〈極光剣〉だ!俺の持つ光属性の力を聖剣に集約し、その威力を劇的に跳ね上げる必殺の剣!それをお前程度が受けられるか!?」


 自信満々に自分の奥義のネタばらしをしてくる。


「馬鹿なのかな?そんな自分の手の内を堂々と曝す暇があったら、とっとと殴りかかってくれば良いのに」

「うるせぇ!雑魚が調子に乗るな!」


 僕の返答に逆上したユウジは大きく剣を振りかぶって一直線に突っ込んできた。


「さっきから黙って聞いていれば…………」


 僕は左手を相手に翳し、岩の弾丸を放つ。

 反撃をされるとは毛頭思っていなかったのか、ユウジのガラ空きになっている腹部に直撃し、その勢いで先程迄と逆方向に吹っ飛んでいく。

 ゴロゴロと転がり、壁にぶつかってやっと止まったユウジに歩いて近付く。


「痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃ!」


 情けない声を上げているのを無視して更に歩み寄り、のたうち回る相手から少し距離を置いて止まった後、先程の続きを口に出す。


「口を開けば「勇者」「勇者」って。そんなに勇者が偉いのか?」

「あ、ああ、当たり前だろ!ラリノア聖教国に認められた勇者なんだ!」

「お前、初代勇者を、この国を興した初代皇帝を知らないの?」

「そんな事、知っているに決まってるだろ!」

「なら分かるでしょ?『精霊王に見定められ、魔王を打ち倒した勇者』と『ラリノア聖教国に認定された、何も成し遂げていないお飾りの勇者』の違いを」

「お、俺が!ただのお飾りだと言うのか!」

「そうだよ。そんなの僕だって皇帝陛下に認めてもらえれば勇者って名乗れるって事になる。お前は所詮名前だけの勇者、ただの象徴だよ」

「うるさい!黙れぇぇぇ!」


 怒りで痛みもさっきの事も忘れたのか、また突っ込んでくる。


「それにその聖剣もその〈極光剣〉ってのも…………」


 僕目掛け横薙ぎに振るわれた聖剣に対して高密度の雷を纏わせた手刀を真正面から叩き付けて根本からへし折る。


「け、剣がぁぁ!俺の聖剣がぁぁぁ!」


 目の前で起こった事を信じられないと絶叫するユウジ。


「お前は聖剣って呼んでるけど、それ偽物でしょ?正確に言えば『勇者に持たせて、勇者と証明する為だけの聖剣風の剣』だ」

「う、嘘だ!」

「本当だよ。魔王を斬った剣を聖剣と呼ぶなら代々この国の皇帝に受け継がれてる。そんな無駄に装飾なんて無い、無骨な剣だけど」

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!」

「それに、〈極光剣〉なんて大層な名前付けた奥義だっけ?あんなもの、ただの属性付与でしょ?しかも、魔力操作の練度も甘い、未完成も未完成の。クラウスの方がちゃんとした属性付与が出来るよ」

「嘘だ!何で!?俺が……俺が!勇者だ!この世界に喚ばれて、特別な力を持ち、勇者として認められた俺こそが!選ばれた人間なんだ!この、春日 裕二(かすが ゆうじ)が!」


 壊れた人形の様に同じ言葉を繰り返し、まるで自分に言い聞かせる様に避けんでいる。


 てかやっぱり名前の順番間違えてるし…………。


 それはさておき、そろそろこいつはもう壊れるだろう。

 最後の一押しだ。


「知らないよ、お前が誰かなんて」


 僕は左手を天に向けて、あえて必要無い詠唱もどきを口にする。


「〈刻印術式、多重起動〉〈起動完了〉〈術式展開〉我が命に従い、ここに顕現せよ!〈雷神の槍(グングニル)〉〈巨人の涙(ギガンティスティア)〉」


 巨大な雷の槍と、巨人の涙と名付けた圧縮に圧縮(それでも一個が5m近くある)を重ねた石英の弾丸が僕の背後にある練武室の壁を隙間無く埋め尽くし、僕の合図で何時でも発射出来る様に準備する。


「あ……、あ…………」


 ユウジはその光景を見て後退りしようとするが、既に壁を背にしているので、無駄な行動となる。

 座り込んでいる場所は彼から漏れ出たモノでビショビショに濡れており、顔も涙と汗で酷い事になっている。


「自分が撒いた種だ。今更命乞いなんてしても…………許さないよ」


 この部屋では死ぬ様な怪我だろうと死ぬ事は無い。

 勿論、相応の痛みはあるけども。


 僕が魔法を発射しようとした瞬間、部屋の外に繋がる魔道具から室内に声が響く。


「そこまでだ、ロイ君!」


 振り下ろそうとした手を止めて、声の主がいるであろう部屋の外に視線を移す。




 そこには―――。




 ここに居る筈の無い、ガザニア帝国アルフォンス=ペンドラゴン現皇帝陛下がそこに立っていた。


「この勝負、私に預けてもらえるかな?悪い様にしないよ、悪い様には……ね?」


 そう言ってこちらに向けていたずらっ子の様な顔を向けてくる。


 あぁ、そういう事か。

 全部この人の掌の上だったって事か…………。


 僕は術式を全て解除し、深い溜め息をつくのだった…………。

『ロイはユウジの聖剣と心をへし折った!』


 参考までに、今回のロイが発動させた魔法が発射されていたら、誇張抜きで学園全てが吹き飛ぶ威力でした。

 勿論、ロイはそんなミスする様な子では無いので、仮に発射しても全く問題ありませんでしたが。



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