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結局、言って聞かない人は身体で聞かせるしかないよね

 何だかんだあった午前中が終わり、いつも通り学食で昼食を取り、午後の授業が開始された。

 予定では新しく思い付いた論文を纏め、良い感じに進めば実験も少ししようと思っていた。


 それなのに…………。


 今僕は特殊練武室の中に立っていて、いつものクラスメイトは外から見学中。

 僕の目の前にいるのはお察しの通り、あの勇者様だ。


「結局こうなるのね……」

「首席は今学期末に手に入れるとして、まずは実力でトップに立つ!さぁ、勝負を始めるぞ!」


 ユウジ曰く、とりあえず実力で一位ならそれで良いらしい。

 別に僕としては譲っても良いんだが…………。


「ロイ君ーー!頑張ってーー!」

「あんたっ!負けたら承知しないわよ!」


 と観客席からオズの応援とヨルハの激励?が降ってくるのに加えて、


「審判は俺がする。ロイ、お前に勝つのは俺だ。誰にも負けるなよ」


 審判である筈のクラウスも負けを許してくれそうに無い。

 それに一番気になるのは…………。


「お前を倒して権力で無理矢理従わされている女性陣を救い出してやる!俺はそんな事に屈しはしないぞ!」


 これだよ、これ。

 奴の頭の中では、「クラスの女子達は皆、僕の公爵家の権威によって無理矢理仲良くさせられている」と勝手に脳内変換されている。

 勘違いも甚だしい。


「キャー!勇者様ー!助けてー!」

「任せろ、コロンちゃん!」


 おい、コロン。

 マジで要らん事を言うな。

 お仕置きとして今度の魔道具の取引はあいつの紹介とはしない事に決めた。

 アルベルト=アインシュタインの直筆手紙付きで魔法ギルドに断る様に伝えてやる。


 さて、後の事はとりあえず置いといて、まず今をどうにかしよう。


「両者、準備は良いか?では…………始めっ!」


 クラフトの開始の合図で模擬戦が始まった。


「行くぞ!」


 ユウジが掛け声と共に全力で駆け出してきた。


 彼の獲物は細身の両手剣(ツーハンデッドソード)

 何でも聖教国に伝わる聖剣らしい。

 ただ、どう見ても実戦向きでは無く、ただの儀礼剣としか見えないなんだよなぁ……。


「はあぁぁぁぁ!せいっ!やぁっ!」


 煩い掛け声と共に剣を振るユウジの攻撃を躱しながらどう対応するか考える。


 はたして聖教国の勇者に勝っても良いのか?


 この模擬戦で負けるのも首席じゃなくなるのも別に問題は無いので()()()負けるのも有りだとは思う。

 勝って変に聖教国に目を付けられても嫌だし……。


 ただ、皆に応援されてる手前、負けるのも申し訳無い。


「はぁ…………」


 思わず溜息を零す。

 そんな僕の行動に何を勘違いしたのか……。


「はっはっは!俺の猛攻に為す術が無いのか!首席なんて名ばかりみたいだな!まぁ、一学園程度のトップなんぞ、勇者と比べればゴミ同然だよな!」

「…………」


 正直イラッとする。

 自分の事を馬鹿にされるのはまだ良い、実際自分が一番なんて思ってもない。

 ただこの学園、父上や母上やその他尊敬する人達が愛しているここを馬鹿にされるのは許せない。


 それでも敢えて言い返せずに飲み込む。

 しかし、その我慢故の沈黙する勘違いして受け取ったユウジは更に続ける。


「もう飽きたな。さっさと終わらせてしまおう。とりあえず一番になればお前に脅された女達も目を覚ますだろうさ。そして、いずれ俺の好きにさせてもらう」

「は?」

「オースタスと言ったか?あれは良いな。大人しそうに見えるが、ああいう女を手籠にして好きに出来るのは唆られる。それに確か……校長の秘書、お前の母親だったか?歳はいっているが、あの巨乳も好きにさせてもらおう。あぁ……楽しみだ」


 そう言って下品な笑みを浮かべ、舌舐めずりをする。


 こいつ…………。


「……ユウジ。勇者なんだったら品行方正を心掛けるべきじゃないの?」

「あぁ?勇者だからこそ、神に認められた最高権力だからこそ、好きにして良いんだろ?好きに女を侍らせて、好きに食い、好きに飲む!まさに酒池肉林!最高だよ、勇者はなぁ!」


 あぁ、分かった。

 こいつはゴミだ、もう人として終わってる。

 我慢なんてする必要、最初から無かったんだ。


「そうだ、お前の目の前であの女を「黙れ」っ!?」


 これ以上あいつの言葉を聞きたくない僕は、言葉を遮るように雷魔法を放った。

 ユウジはなんとか避けて、僕と距離を取り、驚いた表情でこちらを見ている。


「もう良い。もうお前は口を開くな。ここでは殺せないのは残念だけど…………それでも地獄を見てもらうよ」

「なっ……!?」


 それだけ言った僕はもう相手の返事など聞かず、全力の魔力を開放した。




「さぁ、お前の全力を見せて?その全力を僕が蹂躙してあげるよ」

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