嘘って本当の事を混ぜないとバレやすいよね
カスガ=ユウジ。
見た目も名前もどう考えたって日本人。
僕の転生と違ってこの世界に呼び出された転移者。
そして、転生先のラリノア聖教国で勇者と認められた男。
(父上から聞いた時は他人事だと思ってたけど、まさか同じクラスになるとはなぁ…………)
そんな事を考えながら、転校生が来た日恒例の自己紹介が始まった。
一人一人自己紹介していき、最後に僕の番が回ってきた。
「ガストンブルク公爵家長男、ロレミュリア=ガストンブルだ。長いからロイって呼んでほしいかな。この学年の首席で一応クラスのリーダーって事になってるから、分からない事があれば何でも聞いて」
「ふんっ!」
僕の自己紹介に対して、大袈裟な鼻息で返事を返してくる。
(この野郎…………)
さっきから聞いていれば女子の自己紹介には「よろしく」だの「仲良くしよう」だの言うくせに、男子の自己紹介は全部この返事だ。
他の男子を分かりやすくライバル視?敵視?しているのが見て取れる。
そんな自己紹介が終わり、それをいつの間にか座って眺めていたジンが再び教卓に戻って話し出す。
「じゃあそろそろ授業を始める…………と言ってもいつもどおり、各自好きな事をしてもらって構わない。午前中は他のクラスが訓練場と特殊練武室を使ってるから、他の座学を聞きに行くかここか図書室で自習くらいしか出来んけどな。勿論、訓練場で行われてる武器術や魔法の訓練に参加しても良いが…………まぁ、お前等は自習している方が良いだろうな。それとユウジ、お前は今からこの学園内の施設や規則を教えるから俺に付いてこい」
以前、ヨルハが『あんたの話を聞いてる方がマシ』と言っていたとおり、ここは学年トップ集団の集まりなので、他のクラスの授業に行っても得る事は少なく、各々で自分なりに勉強する方が効率的だった。
そしてユウジ様(笑)はジン先生の案内で施設案内に行くらしい。
よし、関わらずに済ん―――
「大丈夫だ、ジンよ。俺は既に全てを把握している。何だって勇者だからな!」
「あー……。勇者だからかは知らんが把握してるならそれで良い。じゃあお前も自由にやりたい事をしてくれ。俺は事務処理で教室を離れるから何かあれば職員室まで来い」
「あぁ!分かった」
結局、ユウジ様(笑)は教室に残る事になり、ジン先生だけが教室を去っていった。
先生が居なくなり、各々が何かしらをし始めた。
自分もまた適当に論文を書くかと紙を取り出していた所に隣りに座っていたオズが話しかけてくる。
「ロイ君、そう言えば実家で作ってた魔道具って完成したの?」
「ん?あぁ、アレね。もう造り終わって論文も書き上げたよ。後は今度の休みにでも魔法ギルドに持っていこうかと思ってる」
「そうなんだ。もし邪魔じゃなければ僕も一緒に良い?」
「勿論。ついでに買い物でも行こうか」
「良いの!?やったぁ!」
胸の前で小さくガッツポーズをするオズ。
何だこの生き物、可愛いかよ。
その会話を聞いていた前の席に座るヨルハが口を挟んできた。
「ロイ。あんたちゃんと責任を取りなさいよ?」
「え?責任?何の?」
「はぁ…………。オズ、あんたも苦労するわね……」
「全然だよ。ロイ君はしっかりしてるから」
「え?え?何の話?何で僕の話なのに僕が分からないの?」
「本当にあんたは…………。まぁ良いわ、それよりも新しい魔導具って何よ?」
自分で振ってきといてそれは酷くないですか、ヨルハさんやい。
と、ツッコんだところでまた溜息を疲れそうなので、賢い僕はヨルハに聞かれた魔道具の説明をする為、実物を取り出そ―――
「おい、お前」
―――うとしたところに突然声が降ってきた。
声の主は勿論ユウジ様(笑)…………てかもう(笑)面倒だ。
普通にユウジと呼ぼう。
ほら、本人も気軽にユウジと呼べって言ってたし?
それよりも呼ばれてたのは僕?
「おい、そこのお前。聞こえているなら返事をしろ」
「ぼくの事?何か分からない事でも?」
やっぱり僕で間違い無いようだった。
それにしても、ヨルハと同じで基本名前で呼んでくれないタイプの人なのかな?
「お前がこのクラスのリーダーなんだろ?だったらその座を賭けて俺と決闘しろ!これは勇者命令だ!」
「……………………はい?」
何言ってるんだ?こいつは。
いや、言ってる事は分かるんだよ、共通言語で話してるし。
内容そのものが理解出来ない。
「え〜っと……。リーダーの座を譲るって点なら問題無いよ?特に僕が皆に指示をしたりする事も無いし。ただ、序列に関しては首席を譲る事は出来ない」
「はぁ!?ふざけるなよ!より強いものがトップに立ち、その集団を率いるのが当たり前だろう!?俺はお前に勝って首席を頂く。そして、このクラスのリーダーとなるんだ!」
うん、話が通じていないみたいですね。
隣にいるオズは苦笑いしてるし、ヨルハなんて某高速で動くGを見ているかの様な表情だ。
「あのですね、勇者様―――」
「オースタスちゃん、俺の事はユウジと呼んでくれて構わないんだよ」
「いえ、大丈夫です。それで序列についてですが、入学時と毎学期の終わりに試験がありまして、それの成績によって決まります」
「だから、あんたがこいつに勝とうが首席は取れないのよ。分かった?」
入学当初は人見知りしていたオズがユウジにしっかりとした物言いをしている。
性別を隠す事を辞めたからか自身が付いたからか分からないけど、良い傾向だ。
お父さん、嬉しいよ…………って誰がお父さんやねんっ!
それに、ヨルハも補足して説明してくれて少し嬉しいのは内緒だ。
「むむむ……。そうだったのか…………」
いや、一人で唸ってるけど、全て知ってるって言ったよね?
どうするの?この空気。
皆こっちを直接見てないけど、耳が大きくなる勢いで聞き耳立ててるよ?
クラウスはキラキラした目でこちらを見るな。
…………三馬鹿、お前等もだ。
何だか平穏な学園生活に煩いのが現れたな……本当に。
以前までの投稿で目に付いた誤字脱字や明らかにおかしい表現をちょこちょこ修正してます。
内容に大きな違いはありませんので、わざわざ振り返る必要はありません。
もう一度読み直してくれても良いんですけどね!?




