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転校生って響きは何だかわくわくするよね

 ジン先生が来た事で、僕を誂うモードのクラスメイト達も静かになってくれた。


 教壇に立った先生は僕等を一瞥し、全員が揃っている事を確認して話を始める。


「よし、全員いるな。誰も問題を起こしていなくて何よりだ。問題を起こされると俺の監督不行き届きで賞与が減るからな」

「いや、そっちの心配ですか……」

「当たり前だろ〜?俺はお前等と違って平凡な人間なんだから稼がなきゃ食っていけないんだよ」

「学園の教師ならある程度貰えると認識しているが…………。どうなんだ?ロイ」

「いや、僕もジン先生の給料に関しては流石にそこまで詳しくは知らないけど……」


 ジン先生の発言に僕とクラウスが疑問を呈す。


 それもそうだろう。

 この学園の教師はこの帝国内でもかなり優秀でないとなれない筈だ。

 その為給料もかなり高い。

 Aクラスの冒険者がコンスタントに依頼を受ければ流石にそちらの方が高いがその分危険を伴う、正にハイリスクハイリターン。

 一方学園の教師は違った責任があるのでノーリスクとはいかないが、給料とのバランスを考えるとローリスクハイリターン、もしくはミドルリスクハイリターンの部類だ。


 因みにこの学園の教師の月収は最低50万【F(フェン)】。

 F(フェン)とはこの世界の共通単位で、大体『1F≒1円』。

 あくまで僕がこちらに来てから色々見た上で換算した数字なので誤差は許してほしい。

 なお、ファンタジー定番の貨幣のみ。かと思えば何と紙幣もある。

 そこは少し吃驚した。


 …………っと話が逸れた。


 つまり、ジン先生はかなりの高給取りなので、多少賞与が減っても問題無い筈なのだ。

 それをクラウスにそっと耳打すると「だよな……」と彼も頷いた。


「大人には色々あるんだよ。とりあえず、俺の賞与の為に皆頑張る事。良いな?」

「「「「「は〜い」」」」」

「やる気だせよ!やる気をよぉ!」


 あまりの必死さに皆が笑い声を上げる。

 勿論、先生は貶める為に手を抜く事なんて皆しないだろう。

 第一、そんな事しても結局自分の評価を下げるだけなので、メリットが一切無い。

 それを分かってて先生も言ってるんだろうけどね。


「とりあえず、だ。また学園生活が始まるからな。休暇前迄はこの学園に慣れてもらう事を主としていたが、今日からは本格的に様々な事を勉強してもらうぞ」

「ジン先生が先生っぽい事を言ってる……」

「ロイ!うるせぇぞ!そんな事言ってると金の無心の為に四六時中お前に張り付くからな!」

「現実的且つ絶妙に怖い脅しをかけるのやめてもらえます!?」


 そんな僕等のやり取りにまた皆が笑い出す。


 おい、誰だ。『それは良いかもしれない』とか怖い事言った奴は。

 …………コロンだな、絶対。

 目が合うと露骨に逸らされたし。


 そんな他愛無い会話(無駄話)を挟みながらホームルームが進んでいたんだけど……。


「おいっ!いつになったら呼ばれるんだ!」


 教室の扉がバァァァン!と音を立てて開かれた。

 その音に驚き、皆一斉に扉の方に視線を向ける。


 そこには黒髪をツンツンに立たせ、少しツリ目でプライドが高そうな起伏の少ない顔立ちに黒に近い茶色の瞳を持ち、同世代のド平均の体格の少年が仁王立ちしていた。


 一目見て分かった。

 あれが父上が言っていた勇者だ。と。


「そうだった、そうだった。悪い、忘れてたわ」

「忘れてただと!?ふざけるな!」


 本当に湯気が出るんじゃないかと思うくらい顔を真っ赤にしてドカドカと足音を立ててジン先生に詰め寄る黒髪の少年。


「だから謝ってんじゃねぇか。こいつは今日からこのクラスに入る、つまり転校生だな。本来有り得ないが、今回は特例的にそうなった」

「カスガ=ユウジだ!ラリノア聖教国より勇者として異世界から召喚された!俺が来たからにはこの学園のトップの座は譲ってもらう!申し訳無いな!あ、そうそう。俺の事は気軽にユウジ様と呼んでくれ。なんたって勇者だからな」


 そう言って高笑いをする勇者。

 ツッコミどころ満載の自己紹介に皆ポカンとしている。


 気軽にと言ったのに様を付けろとか正に何様だよ……。

 いや、ユウジ様(笑)なのか。


 皆とは言ったが、そんな転校生にキリエは興味が一切無いらしく、相変わらず眠そうにしているけど。


「……まぁ、なんだ。とりあえず仲良くしてやってくれや」

「勿論だ。勇者たる者、全ての者に慈愛を持って接するのは当たり前だからな」

「いや、お前に言ってねぇよ…………」


 僕等にかけた言葉を何故か自分に言われたと勘違いして、返すユウジ様(笑)に呆れて、小声で呟くジン先生。

 お疲れ様やで。


 それにしても全ての者に慈愛を持って接するって……。

 某マザーなテ◯サかよ。

 いや、ユウジさ…………。


「流石に天丼は面白く無いか…………」

「何!?天丼があるのか!?」

「うえぇ!?」


 思わず漏れた心の呟きに激しく反応したユウジ様(笑)がこちらへ向かって一直線に歩いてくる。


「なぁ、お前。天丼を知っているのか!?俺の大好物なんだ!何処にあるか教えろ!」

「テンドン?ですか?申し訳無いですが僕は知りません。別の事を考えてたら思わず口に出してしまっていただけです」

「そうか、使えないな。それに人が自己紹介をしているのに考え事とは良いご身分だな」

「はは……。今後気を付けます」

「そうしてくれ」


 だって公爵家の跡取りで、一応一部界隈ではそこそこ有名だからね、割と良いご身分だよ?

 まぁ、そんな事を誇るつもりは無いけどさ。


 それより、カスガ=ユウジと名乗っていたが、この世界は名=姓の順番だからこいつの言ってる事って『気軽に苗字+様って呼んでくれ』って意味だ。

 それに加えてその特徴が無さ過ぎて逆に特徴的な見た目。


 それで僕は確信した。




 こいつ、絶対に俺と同じ日本人だろ!と…………。

勇者(笑)の登場です!


因みにロイの考えた通り日本人で本名は春日(カスガ) 裕二(ユウジ)

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