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たまには真剣になるのも大事だよね

 2週間あった休みもあっという間に残り半分になった。

 初日こそ色々あったけど、そこからは穏やかな日々。




 の予定だったのに…………。




「何でこんな事になってるんでしょうか?」

「息子の成長を確かめたいのは親の性だよ」

「そうよ、ロイちゃん」

『ロイ君ファイト!』

『皆怪我しないで下さいよ?』

『みんながんばれー』


 僕達は今屋敷の地下にある訓練場にいる。

 僕と父上・母上は室内で対面しているが、

 他の三人は部屋の外で観戦する気満々だ。


 発端はオズの


『ロイ君の本気ってどれくらい強いの?』


 っていう何気ない一言だった。

 それを運悪く居合わせた父上と母上に聞かれ、


『では久々に手合わせといこう!』


 とやる気満々になってしまった。


 父上は賢者の末裔で陰属性3種類を自在に使いこなし初代賢者の再臨と謳われている。

 一方、母上は風魔法と大剣を使った超絶パワータイプの前衛特化型の戦士だ。

 それを2人同時に相手しろと言われる僕。


『じゅ、準備は良いですか?』

「私は何時でも問題ない」

「私も大丈夫よ、オズちゃん」

「僕は出来れば完了したくないなぁ」

『お兄様、いつまでもウダウダ言わないで下さい!では……始めっ!』


 リリの強引な開始の合図と共に、三者三様に動き出した。


 風を剣と共に全身に纏って一直線に突っ込んでくる母上。

 距離を維持しながら詠唱を始める父上。

 僕は片手剣を左手に持ち、構えは取らずにその場に立っている。


「はぁっ!」


 母上は走り出した勢いのまま僕に目掛けて唐竹一閃。

 それ、息子に繰り出して良い技じゃないよね?

 目の前で我が子が真っ二つになるよ?

 勿論、それを易々と受ける訳にはいかないので、片手剣を大剣に沿わせる様に切り上げてその軌道を逸らす。 

 少し体勢を崩した母上の腹部目掛けて空いた右手で掌底を繰り出す。


「……っと。」


 が、当たる寸前で父上の氷の壁が母上を覆い、僕の掌底は氷を砕いたのみ。

 突如背中に悪寒が走り、僕は大きくその場から飛び退いた。


「あらあら。避けられちゃったわ」


 母上は氷の壁を横薙ぎで切り払い、壁ごと僕も斬るつもりだったらしい。

 いやだから息子に……もう良いや……。


「《氷槍雨(フロストランサー)》」


 僕の着地地点を氷の槍が襲う。

 僕は時に避け、時に剣で砕きながらその攻撃を防ぐ。

 しかし、その槍の雨の中を縫うように母上の剣戟が僕に迫りくる。

 正に防戦一方、ただでさえ強い2人のコンビネーションはお互いを更に高め合い、他の追随を許さない程に昇華していた。




 〜部屋の外〜




「ロ、ロイ君大丈夫かな?さっきから全然攻撃出来てないよ……」

「流石はお父様とお母様です。過去に2人でドラゴンを退けた実力は未だに健在ですね」

「えぇっ!?ドド、ドラゴンを!?2人で!?」

「知らなかったんですか?あの2人は昔、[氷雪の賢者]と[暴風姫]と言われていたんですよ?」

「え?え?あの近年最強って言われてる2人がロイ君のお父さんとお母さんなの!?」

「ふたりともすごいよねー」

「普通ならば2人を、しかも同時に相手すれば勝てる人間なんていませんでした」

「じゃあロイ君に勝ち目は無いじゃない!」

「聞こえませんでした?勝てる人間はいません()()()って?」

「それって……」

「続きを観ましょう、オズお姉さん」




 〜室内〜


(って感じで余計な事をリリィが言ってるんだろうなぁ……)


 そう考えている僕の現状はさっきよりも悪化している。

 父上は氷の槍に加え、時折、詠唱術式による上級魔法を放ってきている。

 母上は更に速度を上げ、二つ名のとおり暴風となって僕に凄まじい重さと速さの剣戟を繰り出してくる。

 最初に持っていた剣は既に折れ、僕は岩と雷の剣を両手に持ちながら何とか凌いでいる状況だ。


(いい加減隙を作らないとジリ貧だ)


 まずは多少無理をしてでも母上を止める。

 そう決めた僕は両手の剣を消し、刻印術式で魔法を発動。

 雷の衣を纏って暴風の中へと足を踏み入れる。


 恐ろしい速度で振るわれ、無数にあるように見える大剣も所詮一本でしかない。

 剣圧による掠り傷を増やしながらも暴風を起こしている犯人の懐に入り、剣を持つ手を掴み、そのまま電撃を流し込む。


「痛っ!」


 常人なら卒倒する電撃を流し込んで痛いで済むのもどうかと思うが、これでチャンスが生まれた。

 僅かな隙だが僕にとっては充分過ぎる。


 刻印術式、更にそれを多重起動する。

 僕の手元に金属で出来た弾丸が現れる。


「ミネア!()()を止めろ!」

「はあぁぁぁぁ!!」


 父上の声に呼応する様に母上は自身の最速を持って僕へ大剣を振るう。


 しかし、それでは遅い。


 僕の完成した魔法の発動は止まらない。

 金属弾丸は尋常じゃない雷の魔力を内包している。

 僕は右手の人差し指と中指を母上に向けた。

 そこに詠唱破棄の詠唱術式を重ねる。


「《極電磁大砲(ヴォルトカノン)》」


 僕の手から放たれた弾丸はまるで極大なレーザーの様に尾を引いて、射線にある全てを消滅させた…………。






「もう〜、また負けたわ〜。イーサン〜、悔しい〜!」

「よしよし、ミネア。私も悔しいが、息子の成長を素直に喜ぼうじゃないか」

「そうなんだけど〜」


 そんな父上が母上を慰めている(テイでイチャついているだけじゃね?)2人を遠目に僕はオズから質問攻めにあっていた。


「ロイ君ロイ君!さっきのは何だったの!?あれも魔法!?ぼくには何が起こったか分からなかったよ!」


 興奮しているオズを宥めながら説明をした。


 ハッキリ言おう。先程の極電磁大砲は前世で観たアニメのパクリ……いや、オマージュだった。

 地魔法で金属の弾丸を生成、その際に多重起動していた術式でその弾丸の内部と表面には僕の魔力総量の半分を注ぎ込んだ雷の魔力を組み込んである。

 それをただ飛ばすだけで良いのだが、折角だから格好良くと思ってあのポーズで撃ち出している。


 そうだよ、ただの厨二病拗らせてるだけだよ、こんちくしょう!!


 発射と同時に弾丸は稲妻と同じ速度で飛んでいき、纏った雷はその魔力を撒き散らしながら直進する。

 その結果が半径50メートルを消し飛ばしながら魔力が尽きるまで進み続けるアニメ等でよくある衛星レーザーとやらにも匹敵する極太レーザーだ。

 勿論、さっきのはそれの簡易版なので、全てを十分の一程に抑えているが、それでも村一つ滅ぼせる程度の威力はある。

 因みに本気でやれば多分王都を消し飛ばせる…………やらないけどね?


「そんな凄い魔法が使えるなんて、やっぱりロイ君は凄いね!天才だよ!」

「そんな凄いお兄様ですけど、子どもの頃にこの魔法を使ったせいでお父様にめちゃくちゃ怒られて涙目に―――」

「リリストォォォプ!」


 何を言い出すんだ、この妹は!


「何それ!涙目の子どものロイ君なんて可愛い!話を詳しく聞かせて!」


 オズが食いついてしまった。

 リリが話そうとするのを必死に止める僕を更に止めようとするオズ。

 その奥では相変わらずイチャついている父上と母上。


 そんな皆を遠目から見ていたマリィ。








「こんなときこそこのせりふだよね。『正に混沌(カオス)!!』」

 実はガストンブル句家で一番強かなのはマリィかもしれない……。

 マリィ……恐ろしい子っ!




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