場所が変わると話せる事ってあるよね
母上との模擬戦を終え、一度汗を流した後に夕食の時間になった。
「久々に激しく動いたから身体が痛い……。明日絶対筋肉痛だ……」
僕はフォークとナイフを置いて背伸びする。
「お兄様、食事中にお行儀が悪いですよ」
「ぎょうぎわるいー」
「ごめん、ごめん」
妹2人に窘められてしまった。
それを見てクスクスと笑うオズ。
うん、可愛いじゃないか。
「ところで、母上。父上はまだお戻りになられないのですか?」
「イーサンは秋まで忙しいと思うわ。ほら、今年は英雄祭の開催校だから」
「あぁー。もうそんな時期なんですね」
「えーゆーさいってなーにー?」
「英雄祭っていうのはね―――」
英雄祭。
それは帝国にある5つの学園の生徒達の代表が集まり、互いの力をぶつけ合う場。
期間は、なんと2週間。
種目は『騎士祭』『魔法祭』『総合祭』の3種類、簡単に言えば魔法無し・魔法のみ・何でも有りだ。
それを各学年別で分けて、更にそこから個人戦と5人一組の団体戦で分けられ、合計18種の戦いが行われる。
一つの祭りで個人戦最大15名と更に団体戦も各5人の計15名の一学年から最大15名まで選ばれる。
勿論、あくまで最大であり、重複して出場する場合はその人数は絞られる。
各祭で優勝した生徒は、最終日の3日間帝国騎士団の団員との模擬戦を行う事が出来き、名を挙げるチャンスなので、生徒は皆全力で英雄祭に挑む。
「ってところかな?つまり、同い年で一番強い人決めようってお祭りだよ」
「じゃあ、おにいちゃんといっしょのひとたちはかわいそうだねー」
「へ?何で?」
「お兄様、考えてもみてください。お兄様が同い年の生徒に負けるとお思いですか?五学園最大の学園の学年別とはいえトップのお兄様が」
「そうだよ。ロイ君が出る部門は優勝で決まりだよ」
「そうかな?でも出るって決まった訳じゃないし」
「あら?何を言ってるのかしら?首席のロイちゃんが出ない訳ないでしょう?」
「え?」
「むしろ、イーサンが悩んでいるのはその人選よ。ロイちゃんは個人・団体全ての祭に出てほしいけど、そうしてしまうと流石に息子贔屓過ぎると周りに見られてしまうから」
「あぁ〜……」
学園長である父上の息子の僕が全部祭りに出たとしよう。
そうすれば、学園長は自らの権限で代表の一人に捩じ込んだと捉えられる場合があるのか。
かと言って、出ないのもそれはそれでも問題だ。
「そうだ!ロイ君は総合祭に出て、残りは監督に就けば良いんじゃないかな?」
「監督?」
「そう。騎士祭と魔法祭に出る皆の練習を見たりするんだよ。そうしたら、面目は立つし、角は立たないよ」
「あらあら!それは良いわね!帰ってきたらイーサンに言ってみるわ!」
「えっ、ちょっと!?僕はまだ何も言ってないけど!?」
「お兄様。ああなったお母様は止まりません。諦めて下さい」
「えぇ……。諦める前にせめて戦いの場には立ちたかったんだけど……」
「おにいちゃんがんばってー。マリィもおうえんにいくからー」
マリィが来るなら頑張るしかないじゃないか。
そうして、夕食は英雄祭の話題で盛り上がり、賑やかに幕を閉じた。
夕食が終わって各々自分の部屋に戻る。
僕も例に違わず自分の部屋に戻ってきている。
とは言え、まだ寝るにも早いので今は魔力操作の訓練中。
無属性・雷属性・地属性の大小様々な魔法球を頭上で不規則に動かしながら、手の上で更に地属性魔法を使って動物の石像造りをする。
同時にいくつもの魔法を操作する事で、より細かい魔法の操作が可能となる。
毎日やっていた日課だが寮内では中々出来ないので、久々(と言っても1ヶ月)家に帰ってきたので絶賛練習中。
作った石像が20を過ぎた頃、部屋の扉がノックされる。
入室の許可をして扉を開けたのはオズだった。
「失礼しまー……っ!これ何?え?」
「あ。オズは初めて見るっけ?説明するからとりあえず入りなよ」
「う、うん。お邪魔します」
入ってきたオズをソファに座らせ、訓練を続けながら何をしていたかの説明をする。
「じゃあぼくには無縁の練習かなぁ。属性魔法使えないし……」
「そうでもないよ?魔力操作の精度を上げればより効率良く魔力を行使できるから、身体強化魔法の運用にも影響するよ」
「そうなの?じゃあぼくも一緒にやりたい!」
「分かった。じゃあ無属性の魔法球のやり方から教えるよ」
「お願いします、先生」
「先生じゃないんですけど……?」
この無属性の魔法球、実は結構難しい。
魔力は魔法に変換せずに放出するとすぐに大気中の魔力の影響を受け、霧散してしまう。
そうならない様に、魔力を無属性の障壁魔法で包み込む。
その際に中に込める魔力量と障壁に使用する魔力量のバランスを考えないといけない。
内側の魔力が多過ぎると障壁が弾けてしまうし、障壁に使用する魔力が多いと発動葉出来るが無駄が多くなってしまう。
そのギリギリを見極めなければいけないのだ。
「障壁の魔力が多い…………。そうそう、今で大体釣り合ってるか、まだ障壁が多いね」
「ん〜……これ難しいね。これを何個も同時に、しかもこうやって話しながらやるなんて……」
「小さい頃からしてるからね。慣れだよ、慣れ。寮内では出来ないけど、訓練場とかでなら学園に戻っても出来るからやり続けたら良いよ」
「うん、出来るだけ―――あ、割れちゃった」
「初めてでここまで出来るなら充分だよ」
「えへへ。ありがとう。ロイ君は褒め上手だね」
頬を赤らめながら、はにかみながらの笑顔を向けてくる。
その笑顔に心臓が跳ねた。
今日まで同性だと思っていたから、それが異性だと言われて否が応にも意識してしまう。
男女が夜に二人っきりで部屋にいるなんて……。
男と思ってた時でさえ、ドキッとさせられてたのに、それが異性になると加速してしまう。
てか、隠す事を辞めたせいかいつも以上に話し方や仕草が女の子だ。
普段と変わりない部屋着姿だけど…………あれ?いつもと違う部分が……。
「そういえば一つ聞いても良い?」
「んー?どうぞー?」
「普段胸ってどうやって隠してるの?今は明らかに分かるけど……」
「えっ!?えっ?えっ?むむむ、胸!?僕の胸見てたの!?」
言われて思い出したのか、胸を両腕で隠し、更に足をソファに上げて体育座りの様に丸まるオズ。
「え?あっ!違……わないけど。その……なんていうか、つい視線に入って……。いや駄目だ。ごめんなさい。今、普通にしっかりちゃんとガッツリ釘付けでしたっ!」
「そ、そこまでハッキリ言われるとむしろ清々しいね……。恥ずかしいけど……。その……小さくてごめんね?」
「え?そうなの?小さいかどうかよくわからないけど……」
「だってロイ君の周り皆……」
「あぁ〜。確かに皆大きくてつい目が―――」
「やっぱりー!ロイ君の馬鹿ーーー!」
「やっ……、これは、ちがっ!」
こうしてオズが女子と分かり、心の中がバタバタした休暇一日目は幕を閉じで言いった。
ところで、拗ねたオズに僕のベッドで盗られたんですが僕はどこで寝れば良いのかな?
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