追放
お母さんに縁を切られ、私が帰る家は無くなった。
どうして……?
これって、私が悪いの……?
お父さんが亡くなって、お母さんから憎まれて。
茫然自失な状態で、トボトボと故郷の集落を歩く私。
顔馴染みの人達を幾人か見掛けたものの、誰一人として挨拶すらしてくれない。
お母さんが言った通り、私は故郷を失ってしまったんだ……。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
それから3日を掛けて、私は隣接する領地に入った。
馬を走らせれば半日の距離だけど、履いていた靴は既にボロボロになってしまっている。
ようやく辿り着いたジャンの家。
けれど。
ジャンの父親から私に向けられたのは、激しい怒りだった。
「儂に顔を見せに来るとは、いったい何を考えているんだッ!」
「あの、話を聞いて下さい! 私、エスペン王子に操られて……」
「適当な嘘を吐くな! 貴様のせいでジャンは……」
いつも優しく私を歓迎してくれていたジャンのお父さん。
なのに、貴様呼ばわりされる程に嫌悪されているのはショックだった……。
「お願いします、ジャンに会わせて下さい! 私、ちゃんと謝りたいんです!」
「謝るだと? ふざけるなッ! 息子に会わせて欲しいのは儂の方なんだぞッ!」
どういう事なんだろうか?
此処には、ジャンは居ない……?
「地獄の様な国境警備の任務から還って来たジャンを、国外に追放したのは貴様らだろうがッ!」
涙声で叫ぶジャンのお父さんの声に、私の身体は硬直してしまっていた。
国外に……追放……した……?
ジャンはもう、この国に居ない……?
もう私は、ジャンに会う事が出来ない……?
「貴様が密告したそうじゃないか……ジャンが国境警備から帰還出来たのは、魔族と結託して国家転覆を画策しているからだと……」
「な、何ですか、それ? そんなの、私は……」
「惚けるなッ! 王子の妾である立場を利用してジャンの人生を壊したくせに! 貴様には人の心があるのかッ!」
実家に帰った時と同じだ。
私が知らないところで、取り返しのつかない事態になっていて。
その罪は、全部が私のせいにされていて。
それなのに、私の話は聞いてくれない……。
「帰れッ! もう二度と現れてくれるなッ!」
辛辣な言葉と侮蔑の眼差し。
お母さんの時と一緒だ。
どうして、こうなっちゃったのかな……?
私、本当に何も知らないのにさ……?
もう、元には戻れないの……?
これで、私が帰る場所はどこにも無くなってしまった。
「ジャン……会いたいよぉ……貴方に、会いたい……よぉ……」
その場で泣き崩れようと、手を差し伸べてくれる人は誰も居なかった。




