2-2 混雑する苛立ち (1)
7月の残り僅かですが、再び暑中お見舞い申し上げます。
よろしくお願いいたします。
他人からの注意・警告すら聞こうとしない。
現実と言う名の事実を目の前にしない限り、初めて愚かさに気がつかないものだろう。
一体、何を見聞きしてきたのか?
一体、何を学んできたのか?
一体、何を経験してきたのか?
知らぬ間に『味方』と思っていた相手が“天敵”ならない限り『自分の幸せ』が、粉々に壊れないのだ。
そんな伯母自慢の一人娘の初仕事を…菜種が、あっさり解決してしまった事が引き金となり…伯母独りの暴走と嫉妬の対象として、日に日に異常な嫌がらせを受けるようになってしまった菜種のため…両親は、菜種を逃がすように一族の中でも理解力のある叔父の元に逃がされた。
しかし、逃がすには遅すぎていた…既に一族の間では、派閥争いが起こっていた。
分家だが、一番『血の濃さ』と『素質』がある菜種と本家筋の従姉妹・果歩――…二人を支持する派閥争いと言う名の醜い大人の勝手な大人の事情で、未来があり将来のある幼い娘を振り回すなど、考えられなかった現当主・曾祖母と菜種の両親と叔父・零と菜種と果歩の乳母である女中頭・百合と一部の女中達が考えた苦肉の策だった。
幸いなのが…菜種と従姉妹・果歩は、大の仲良しであることだ。
よく二人で、学校帰りにて好きな本や服とかの買い物を楽しんでいる。
勿論、この事を知っているのは、曾祖母と菜種の両親と叔父・零と女中頭の百合の限られた人数だが――…何時かは、バレてしまう事に恐れた叔父は、菜種に“術”を教えた。
――だが、的が外れた。
伯母・緑子は、大が付くほどの人見知りで、対人コミュニケーションと能力が極限なまでに低いので、探偵等を頼めずに問題にならなかったが…何故か女王様気質で、高飛車の強欲の持ち主にて「自分は、凄いの!愛されてるの!」と、言って聞かない…言わば、悪い意味での“イタイ人物”として、一族から軽くお荷物扱いをされているが、本家の人間なので悪く言えずにいる。
しかし、品格と素質とカリスマ性と『ある心』を必要とする巫女という名の当主の席は、完全に除外されている大きな存在にて障害人のため、一生を掛けてもなれない。
――だが、例外がある。
子供が、居るかどうかだ。
伯母・緑子には、一人娘・果歩がいる。
大の人付き合いの悪い伯母のために一族総出で、お見合い結婚をさせたまでは、いいのだが…子供が生まれて早々に『自分の果たせなかった夢』をグイグイと、押し付けるように育て始めた。
結果――…お見合いだが、結婚ができて大人しかった伯母・緑子が“野望”と、言わんばかりの悲願が再燃焼させてしまい…夫をぞんざいに扱うようになり、抗議をした夫を強制的に離婚した。
しかし、主導権を握っているのは現当主である曾祖母。
流石の伯母も曾祖母に耳を貸さない理由にならず…離婚をした夫の要望である『娘との面会』を泣く泣く承知させられ、愚痴り同情を引こうとしてもドン引きする一族に対し、猛抗議をするかのような毎日を送り続けていた。
その問題視だらけの実母を持ってしまった従姉妹である果歩は、不幸中の幸いと言う言葉が似合うだろう。
何故なら、大暴走気味の実母の教育に危機感を覚えた曾祖母を筆頭に何とか実母の『毒』を沁みこまずに心優しい子に育ってくれた。
また…母親のワガママのせいで、まだ赤子の時に別れてしまった父親とは、仕事の休みの日に会ってお茶を楽しんでいる。
果歩の父は、案の定と言うべきか…別れた妻の妨害で、会えないと曾祖母や菜種の両親達に連絡をするや否や、直ぐに「果歩の成長写真で申し訳ないが…」と、直ぐに果歩の幼い写真から幼稚園、小学生、中学生、高校生の時の入学式や運動会等の行事写真と卒業式の写真を送っていた。
そして、同い年である菜種とも大の仲良しで、よく休みの日に買い物に行っているが…勿論、伯母・緑子以外は、知らない。
写真の事もだが…毛嫌いしている菜種と仲良くしている事を知ったら知ったで、発狂による大暴走する姿が目に浮かぶからだ。
実の娘である果歩自身でも…成長すればするほど、周囲と見比べた実母の異常さに恐怖を覚え、うろ覚えな“付かず離れず”の距離を取るように心がけているが…理想欲が強すぎる実母には、無効。
たまに『仲良し親子』というテレビの特集で放送するが、憧れているのか…我が娘の成長する姿を拒む行動なのか定かではないが…常に一緒に居たがるようになるが、大人の階段を一歩一歩と歩み続けながら大学生となった娘・果歩にとっては「止めてほしい」と、拒否をすると「果歩が…わたしの果歩がっ!反抗期っ!」と、豪語しショックを受けて寝込むが…直ぐに復活して、またベタベタとくっ付きながら私生活を監視するように口を挟むようになった。
これまでの果歩の学校での勉強や恋愛話等の話は、聞く耳あらずだったのに…今更、聞くようになって「しんどくて辛い…習い事のバレエでも口出すようになって…バレエをさせたの母なのにっ…!」と、愚痴を言うようになってしまい元気が無くなっていった。
伯母・緑子は、まだ3歳の果歩に「新たな当主としての教育!」として、体力と精神力を鍛えさせるためにバレエを習わせ始めた。
初めは、嫌々だったらしいが…少しずつ上達していく、バレエの楽しさと面白さと達成感に感激した果歩は、母親の“夢”を退け『自分の夢』として、歩もうとしていた。
しかし、勝手を許す訳が無い事を知っている。
ましてや『自分の夢』を持ってしまい、念入りに教育したはずの娘・果歩の“裏切り行為”が許せず「バレエの役目は、終わったの!早く止めてしまいなさい!」と、言われて口喧嘩をしたそうだ。
何度も『イタイ人』である事を知っていた――…つもりだった事を痛感している従姉妹の相談と言う名の話に菜種は、祖父母と自分の両親、叔父に相談したら全員揃って、頭を抱えてしまった。
それが引き金になってしまったのだろう…曾祖母が倒れてしまった。
巫女としての重役の身であるのに、多々の血族の問題が重ねに重なり心身に限度と限界が超えてしまったのだろう…直ぐに曾祖母は、病院に運ばれ緊急処置された。