表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐の嫁入り -土姫ノ章-  作者: ツカサシキ
6/37

2-1 菜種の鬱屈な日常と『古びたの汚点』

 本日から二章を開始させていただきます。

 初作品『想ヒ人-指切-』に登場した“無患子菜種”視点です。

※作中に暴言暴力沙汰の描写を書かせていただいておりますので、苦手な方は、お閉じください。よろしくお願いいたします。

 ある古びた町は、また雨が降り注がれていた。

 しかし、雨といっても晴れ間が見える雨――…お天気雨だった。


 とある館内の“秘密の場所”の小さな天窓から晴れの日差しと雨の音と、その雨音が窓にぶつかる音が響いていたが…直ぐに『グチャ…グチャ…』と、異様な音が乱すように掻き消されていた。


 一昨日も昨日も今日も…毎日、同じ音と共に鉄の臭いが充満していた。


 少女は、ただただ待ちながら――…自分の番を心待ちにしている。放心しているでも気絶してるでもなく、自分の意志で“彼女”が、この扉を開けるのを待ち続けていた。


 何気にドアの下を見ると、鉄の臭いと共に生温かい赤い液体が…ジワジワと流れてきた。


 ――そう『血液』だ。

 よく見れば…部屋中の彼方此方に赤黒い大小のシミが床に壁に天井に点々と散らばっていた。


 本来ならば、誰だって「逃げなきゃ!」と、危機感から脱出法を考えるだろうが…少女は「(まだ、かな?まだかな…今日こそ、私かな?)」と、まるで“恋”をしているかのように大人しく待ち焦がれていた。


 少女が居る部屋の外からは、まだ『グチャ…グチャ…グチャッ…』と、響かせながら時に「んぁ…」とか「ぅん…」と、若い女の人の喘ぎ声とも聞き取れる声が、共に聞こえてきた。


 少女は、その音と声を聞きながら「(まだ、か…残念だな…)」と、しゅんとしながら部屋の隅に体育座りに座り直した。


 だが、少女は「(待っていれば、あたしだよね)」と、前向きに思い直しながら何時ものように待つことにした。


 一方、少女が自分の番を今か今かと待ちわびている事を知ってか知らずか…無数の刃物を器用に使い分けながら『何』かを突き刺したり、切り刻みながら次々と一口大に切った『何か』を口を大きく開けながら頬張りながら美味しそうにムシャムシャと、食べ進めていった。


 時に塊目掛けてがぶりついたり、また刃物を器用に使い切り刻みながら食べ始めたりの繰り返し。


 繰り返し。

 繰り返し――。


 そして「ペロッ…――さて、と…」と、ボソッと…口にした後に席を立った。

 赤い血に染まった手を舐めながら…少女が、待っている部屋にと足を運んだ。


・・・・・


 ――某大学。

 次の授業が、始まる前にガヤガヤと賑わい会話を楽しむクラスメイトをよそに『メギッ』と、異様な音が教室に響き渡った。


 その音を聞こえた生徒は「何の音ー?」と、言いながらキョロキョロと見渡すと硬直し、青ざめた。


 青ざめた生徒に心配した生徒は「えっ?ちょ…どうし――」と、言いながら青ざめた生徒達の目線の先を釣られる様に見ると今度は、自分自身も同じように青ざめて絶句する…まだ『メギギ…』と、いう異様な音が響き渡る。


 何故なら一人の女子大生が無表情で、先程までケータイのメールを読んだのだろう…そのメールの内容が気に食わなかったのか、ケータイを『メギギッ…』と、音を立てながら凄い勢いで握り締めていた。


 先程まで、楽しくしていたのに…異様な音に釣られた一クラスの全生徒が彼女の行動を見て早々に青ざめて絶句している。


 思わずシン…と、静まる生徒と教室をよそに一人の生徒が、発端となっている彼女の元に静かに駆け寄った後に「如何なさいましたか?菜種様」と、声を掛けた。


 その言葉に気づいた彼女は「椿…?」と、言いながらケータイを握り締めていた手が緩み音がパッと、消えた。


 静まり返っている教室に気づいた菜種は「あー…また、やってたか?」と、椿と呼んでいた女性に確認すると「はい」と、言いながら深々とお辞儀をした。


 椿の返答に菜種は「そうか――…その様子は、また依頼か?」と、聞くと椿は「はい、菜種様に是非とも、と…」と、言うと菜種は「はぁあ~…本家か叔父さんに頼めよー…面倒くさい…」と、言うと椿は「御本元は、別件で動けないようで…(れい)様は、副業に専念したい、と…」と、淡々と説明した。


 椿の報告に菜種は、呆然としながら「またかー…何度目だよー…」と、ブツブツ言いながら椿に右手を差し出した。


 椿は「待ってました」と、言わんばかりにカバンから分厚く中身の入ったA4サイズの茶封筒を菜種に手渡した。


 椿から茶封筒を受け取ると早々に菜種は「まーた、増えてない?」と、確認すると椿は「気のせいです、菜種様」と、言いながら深々とお辞儀をした。

 椿の言動と行動に菜種は、深い溜め息を吐きながら茶封筒から中身を取り出した。


 分厚い紙の束…何かのリストだろう。

 リストを取り出すと早々に『パララ…』と、紙の束を指で滑らせた。


 すると、まだ数秒しか経っていないのに「…この人と…この人、この人…」と、リストの中から一枚一枚、丁寧に椿に渡していった。


 この不思議なやり取りと光景に対し、まだ現実が着いていけていないクラスメイト達は、ただただ呆然と立ち尽くしていた。


 無患子菜種――…大学を含めて、小・中・高の学生時代に『伝説』を持っている存在。


 本人は、全く無関心だが…ボーイッシュ系の絶大の美女として有名だが『別』の件でも有名だった。

 元は、東北出身にて有名な巫女の血筋を持つ分家の娘――だが…家庭の事情により叔父の居る東京に下宿させてもらっていた。


 その下宿先から近い小学校に進学して早々に次々と…問題が、起こっていた。


 菜種は、物心が付いた時から癖となっていたため、その問題を解決しようと動こうとするが…何故か、同年代のクラスメイトが必ず邪魔をするため、菜種(かのじょ)にとっては苛立ちの対象だった。


 例えば、参加していないのに無理矢理、交流を持とうとする。

 興味の無い会話を持ち込んで賛同を求める。


 トイレに行こうとすると何故か付いて来る…いわゆる“連れしょん”をしたがったり――…と、それも人との繋がりだ。


 人によるが…独りだと何も出来ない事実がある反面、独りだから出来る事がある事実があるし、別に頼りたくないわけではないが…菜種にとっては、同年代のクラスメイトは『障害物』でしかなかった。


 嫌な例えをしていると重々、理解している。


 しかし、まだ“癖”が抜け切れていない菜種にとっては、別の意味で苛立ちを隠せない日々を送る毎日だった。


 既に本家の従姉妹が『新たな巫女』として、決まっている――…しかし、哀しいかな骨肉の争いに物心が付いた直後に起こってしまう。


 まだ菜種が物心が定着するまでの間、本家の依頼主である“悩み”を意図も簡単に解いてしまったのが大きな原因だった。

 菜種の両親は、普通に愛情を注ぎ育ててくれた。


 しかし、母の姉であり菜種の伯母・緑子は、違った。


 自分の思い通りにならないと気が済まない変わり者であり困り者…自分の娘・美緒に『新たな巫女』として、厳しく英才教育を叩き込んでいた。


 自分がなれなかったのを何故、自分の子供にさせようとするのか…伯母自身の理想が高すぎれば過ぎるほど、伯母自身の首を絞め続けてしまうというのに…分かろうとしない。


 ――知ろうともしない。

【作者の会議(愚痴)室】 ※許可を頂き、投稿しております。


A「どうしたの?」

ツ「この前、生まれて初めてフルーツサンドを食べたんだよ。」

A「えっ?!あんなに美味しいのに??」

ツ「いや~…まるごとバナナで、満足している自分がおりまして…。」

A「あー…成程、納得。」

ツ「そして、とても危険な食べ物と認識したよ。」

A「えっ!何でって…食物アレルギー…。」

ツ「それもあるね。」

A「あれ?違った…。」

ツ「アレルギーもそうなんだけど…まるごとバナナを包んでいるスポンジ風ケーキは、一口食べただけでも満腹感と満足感が、一気に来るけど…フルーツサンドを挟んでいるサンドイッチ用の食パンって、淡泊とはいかないけど…何枚も食べちゃうでしょ?」

A「あー…確かにー…。」

ツ「それに果物は、酸味によるサッパリするから余計に食べ過ぎてしまう…デメリット。」

A「耳が痛いー…。」

ツ「それに…食べ過ぎると直ぐに吹き出物という宿敵が、出るからね。」

A「ぐふっ!」

ツ「…お互い、食べ過ぎないように注意しよう。」

A「だねー。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ