1-4 好奇心は猫をも半殺しに遭い、苦い警告を味わう
6月事水無月見舞いを申し上げます。
未だにコロナの猛威は、弱まらないどころに付け加えるように毎年の夏恒例の“熱中症”の季節が、やってきてしまいました。
コロナと熱中症だけでなく、皆々様のご体調にご自愛を願っております。
※辻本蓬の『過去編』です。
苦手な方は、お閉じください。
そして、書き起こした単語を見た僕は「(絶対に違う…あの時、道路に何も無かった…トラックの運転手さんは「何かを引きそうになったからハンドルを切って爆走してしまった。」って、警察の人達に言ってるっぽいけど…どうして、そんな嘘を言うの?それに…友達が指差すと直ぐに聞いた“弾ける音”が鳴ったと、同時にトラックが停まった。)」と、モヤモヤを掃うために書いていったが…ピンと来なかった。
思い余って、好きな推理系のコミック本を取り出して捲った。
しかし、捲れば捲るほど、僕自身が体験した感覚とは『別』の事しか載っていなかった事に残念でならなかったが…何時の間にか黙々と、読み耽ていた。
しかし、どうしても…友達が指差した途端の事を思い出す――…すると、兄と姉の好きなジャンルを思い出した。
それは“サイキック”を用いた心霊探偵が活躍するマンガなのだが…内容が怖いという理由と僕が小学生低学年という年齢制限のあるマンガで、兄と姉に「まだ早いから読んじゃダメ。」と、禁止令を下されていた。
しかし、今ではネットで簡単に検索し調べられる幅広いが狭い世の中――…だが、まだ小学生だったため、そこまで考えが行き着くのに思いつかなかったので、兄と姉の禁止令を聞き入れていた。
そんなモヤモヤとした気持ちのまま、何時の間にか眠りについて朝陽が昇っていた。寝ぼける目を擦りながら重い身体を無理に起こし、学校に行く支度を始めた。
昨日、提出するはずだった宿題の算数のドリルと国語の漢字のプリントをランドセルに入れ忘れていないか、念入りに確認した。
念には、念をと言わんばかりに今日の曜日の科目も確認をした。
昨日は、事故の後で思わぬ両親と共に早めに帰宅したので時間があり既に支度を済ませていたが「(忘れ物は、ないか?)」と、不安に駆られ確認せずにいられなかった。
無事に確認を終え、着替え等の朝の支度を終えて自分の部屋のドアを開けると母が立っていた。
僕を起こしに来てくれた母に「おはよう、母さん。」と、挨拶をすると母は「おはよう、蓬…起きて大丈夫なの?」と、言われた。
母の言葉に僕は「(また、か…。)」と、落胆した。
また昨日のように今日も同じ事を言わないと駄目なのかと…ゲンナリした。
確かに昨日、事故に遭った事実は消えない。
でも――…頭を打ったり掠り傷すら負っていない事実は、既に警察の人にも手配してくれた病院で診てもらった先生からも聞いているはずなのに…心配してくれるのは、ありがたいが…もう勘弁してほしい。
心配そうな母に僕は「勿論、大丈夫だよ。」と、その『当たり前』な言葉しか言えなかった。その言葉を言い終えると自分の部屋から階段を降り、リビングに向かった。
リビングのドアを開けると、ダイニングにて既に父と兄と姉が出来立ての朝食を食べていた。
すると、僕の姿を見るや否や昨日と同じになった。
何度も同じ事を言うの本当に辛いし疲れるのにお構いなし…何度も「大丈夫。」と、言うのが『当たり前』の言葉になりつつある事実に恐怖を覚えずにいられなかった。
せっかく、作ってくれた朝ごはんの味が無味になり食べ勧められなくなっているにも関わらず家族の出る言葉は、掻い摘むと「心配!」の一言。
無理も無いのは、分かるが…そっとしておくことも支えなんじゃないかと思うが『大人と子供』の差なんだろうと、また思わずにいられなかった。
無理矢理だが、何とか朝食を飲み込みながら登校の支度をすると突然、父が「車で送ってあげるから少し待ちなさい。」と、言い出した。
その言葉を聞き入れた母は「そうしなさい。」と、父に賛同した。
しかし、兄と姉が異議を申し立てた。
兄と姉の言い分は「自分達が蓬の登校に同行する!」と、言い出し始めた。
僕以外の賛否両論の家族会議が開始してしまったのを尻目に退散するように急いで玄関に一直線をし、急ぐあまり靴に手間取ったが何とか履き終えると「いってきまーすっ!」と、リビングにいる家族に大きな一声を与えた後、直ぐに玄関扉を開けて閉めた。
ダッシュしながら何度か後ろを振り返ると、自宅前で慌てて出てきたのだろう…家族が勢ぞろいで走りゆく僕の姿を呆然としながら立ち尽くしていた。
何分…何十分、走っただろう?運動は、苦手だが僕は「(これ以上…これ以上、言われたら…変に泣きじゃくりそう…。)」と、息を切らしながら思っていると何時の間にか例の十字路に着いていた。
薄ら覚えだが、事故現場を恐る恐る見ると…まだ検証中なのか、何人か交通関係の人や警察の人達が行き来しながら調べていた。
信号が変わる頃になると、いそいそとしながら歩道用の旗を持ち歩道に向かった。
緊張の一瞬だった――…僕は、気にしていないつもりだったが…思いの他「(体が…震えてる…?)」と、自分の強がりの副作用のような感情が爆発したかのようだった。
僕以外の人達は、僕と同じ恐る恐るだったが『早く渡ってしまえ!』と、言わんばかりに早歩きする人が多かった。
僕はというと…恐怖心からだろうか?血の気が引く感覚に襲われかけていると『ポンッ』と、肩を軽く叩かれた。
叩かれた拍子に僕は「ふわっ!」と、間抜けな荒げた声を上げた後にへたり込んだ。
恐る恐る見ると…キョトンとした顔をした幼馴染が、立っていた。
幼馴染は僕に「ちょっ…大丈夫?」と、軽く引いていたが…尻餅をついている僕に手を指し伸ばしてくれた。
僕は、また恐る恐るだが…彼女の指し伸ばしてくれた手を掴んだ。
僕が、立ち上がると彼女は「んじゃ、先に行くね。」と、何時の間にか青信号になっている歩道に足早に向かった。
慌てて僕も彼女に続いた。
途中、歩道誘導してくれていた警察官の人に「走らなくても大丈夫だよー。」や「危ないから走っちゃ駄目だよー。」と、言われてしまったが「(怖い目に遭ったばかりなので、無理です!)」と、心の中で変な言い訳をしている。
無事に学校に到着し、幼馴染と一緒に教室に向かった。
――しかし、どうしても…思った通りの事が起こる。
教室に向かう途中でも…家族と同様に教師からもクラスメイトと友達からも「聞いたよ!大丈夫?」と…僕を見かける度に家族と同じ、もう聞き飽きている言葉に向けて「大丈夫だよ、心配させてごめんね。」と、昨日の今日で口癖になってしまった言葉を当たり前のように言葉を発した。
勿論、家族と同様ように心配からなのは分かってる…分かっているが、もう僕の心は満腹状態でほっといて欲しかったが…無理な相談だ。
既にフラフラな状態になっている僕を幼馴染は「…少しは、私の気持ちが分かった?」と、ボソッと言われた。
彼女の言葉に僕は、直ぐに分かった…昨日も僕は、しつこく彼女に『あの理由』を聞きまくっていた事を…今なら反省が出来るが…当時は「知りたい!」と、いう気持ちが勝っていたため、相手に対しての“迷惑”という名の『言葉』と『行動』が、思いつかなかった。
配慮が足りなかった事を今更ながら反省と後悔を噛み締めているが…後の祭り。
よく“同じ経験や体験をしないと分かってくれない”と、いう言葉を耳にするが『事実語』だ。
その後の事は、お察しの…質問攻めの幕開け。
担任の先生からもクラスメイトからも友達からも同じ質問を問われ、答え、問われ、答えの繰り返し…そして、何時限目だったか憶えていないが…何でも今日も警察から事実確認をすると、連絡が入ったり…もう一杯一杯になった心の満腹度が、ついに破裂し倒れてしまった。