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狐の嫁入り -土姫ノ章-  作者: ツカサシキ
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5-21 昔噺の追憶(21)

書き溜められましたので、今月最後の投稿となります。

 これには、大人達も呆れるが――…狐様親子の眠る墓の掃除だけでなく、秋になると山菜や茸狩りや栗や柿の果物狩りもできるので“ついで手伝い”もしやすくなっていた。


 タンポポの季節ではなくなると、季節の野花を墓花――…村の特産保存食である泥鰌の焼干しや鯰の燻製に近い干物を供えた。


 時折、町の流行である干し菓子も供えたが…虫の食事と化してしまうため、お供え禁止となった。


 因みに焼干しは――…高級だしとして、知られています。

 現在『青森県内』の“むつ市脇野”か“外ヶ浜町平舘”等が、主な産地――…いずれも陸奥湾に入ってくる『まだ脂の乗らない』鯵や鰯等を炭火で、焼いて作られます。


 魚を煮てから乾燥させる“煮干し”と異なり、旨みを逃がさずに純粋で『濃厚なダシ』が出ると言われています。


 ――マタギさんからは、好物の鴨肉だけでなく…例の退治された熊肉を逸早く、奉納されていた。

 狐様の命を落とした“きっかけ下手人”であるが…熊は、森の『門番』とも呼ばれる神獣であると同時に厄介害獣。


 ――滅多に『お目にかかれない』期間限定獣肉。

 それに例の熊肉を食べた者達からは「美味しい」お墨付き――…亡き狐様親子にも食べてほしかったと、思うのは…贅沢だろうか。


 その間にも…未熟児であるが、狐様の最後の子狐も…気抜けできない状態だった――…ちょっとの冷えでも風邪を引いてしまい、何度も三途の川へと行き来してしまっていた。


 しかし――…運は、見方をしてくれた。

 羊の存在が、大きかったのだ…狐様の忘れ形見の子狐の側を片時も離れようとしなかったのが、功を奏した。


 そして、マタギさんの手土産も大きかった――…熊を仕留めたマタギさんは、狩猟だけでなく…実は、漁師もしている。

 貴重な海の幸を塩漬けや糠漬けにして、村に届けているのだ。


 気づけば、子狐の乳歯から永久歯に生え変わり始める頃――…羊は、かつての我が子のように子狐の乳離れ行動を起こした。


 何時も優しかった羊の行動に子狐は、しょんぼりしていたが――…もう羊の母乳を飲まなくても大丈夫だと、子狐自身も分かっていた。


 しかし、乳離れはすれど――…肌寒い日になると継母羊は、子狐を風邪引かないように寄り添い温めるのは…母心。

 子狐が、大きくなった後も継母羊が…亡くなるまで、続いたのは…別の話。


 母乳から離乳食を食べれるようになった子狐は、寺の飼い犬ならぬ“飼い狐”となっていた――…寺の『ウチの子』化となったからには、毎日欠かさずに継母羊と一緒にブラッシングをする事となった。


 また微笑ましい光景である――…ブラッシング用にしている和櫛を見せると、いそいそと尻尾を振りながら足元に“ちょこん”と…待機状態。


 二匹は、楽しみなのだろう…今か今かと尻尾の振り方が、徐々に高速するのを見ても微笑ましい。


 じんわりと汗ばむ時間帯は、木陰のある日陰場所に移動し…井戸から水を汲み、二匹分を器に注ぎ入れる。

 初めは、住処にて水飲み場から飲んでいたため…飲まないが、徐々に水を飲み始める。


 待ちに待ったブラッシングを始めると――…猫のようにゴロゴロと、喉を鳴らしているんじゃないかと錯覚するほど…顎を徐々に上がってゆく。


 ブラッシングを終わらせると、お散歩の時間――…子供達との散歩前に安全確認をするためだ。


 お散歩の支度をすると、子狐の尻尾は『ピンッ』と…一直線に伸ばし、またいそいそと、言わんばかりに八の字を描くように右往左往していた。


 その様子に継母羊は、目を細めていた――…まだ若かりし頃の狐様と、同じ行動をしていた事を思い出していたのかもしれない。


 ――散歩への支度を済ませると、開始である。

 子狐は、いそいそと継母羊の隣に陣取るように歩みを合わせた――…その様子に微笑ましいと、思ってしまうのは…親馬鹿心だろう。


 散歩道は、決まっている――…が、何度も変えようとしたのだが…継母羊の狐様への墓参りをしたいらしく、そのまま継続している。


 しかし、警戒を怠らない。

 熊だけでなく、動物の多くは『縄張り意識』を持っているから侮ってはいけない――…大まかに縄張りも“中心領域”と“居住領域”と“狩猟領域”の三種類を持っている。


 理想郷を“追われたら”場所を離れるが『返り咲き』を模索している――…返り咲きという名の“復讐劇”でもあるのだ。


 別の村の話であるが、ごみを荒らしていた子熊を追い払った。

 追い払われた子熊は、2年の年月を得て――…かつて、追い払った人間を次々に食い殺していったという。


 熊は、気に入った餌場や餌に対しての執着心は『異常者』そのものだ――…現在でも獣害事件は、有名である。


 ――因みに例として挙げた熊は、駆除されたという。


 あっという間に散歩道を抜けると――…今日も狐様親子の墓は、華やかだ。

 既に誰かが、水飲み椀に綺麗な飲み水を注いがれており…供え皿には、パリパリに焼かれた油揚げ。


 ――こちらも狐様の好物である。

 もう母狐である狐様と同じ体格になってゆく子狐も母狐と好みが、同じなのだろう…目をキラキラと輝かせながら生唾を飲んでいた。


 今にも食いつきそうな様子に「メェメェ」と、声を掛ける――…継母羊により、止められた子狐は…残念そうに耳を後ろに垂らしていた。


 しょぼんの表情である――…申し訳ないが、可愛いと思ってしまうのは…意地悪だろうかと、変な葛藤をしてしまう。


 子狐に帰ったら焼き魚の解し身を乗せた冷や汁とパリパリに焼いた油揚げを食べさせると言うと――…耳が、瞬時にピンッと伸ばしたと思ったら…目を輝かせながら尻尾を振り子のように振った。


 薄々、気づいていたが…子狐も狐様の“人語の理解”を受け継いでいるし、引き継いでいた。


 ――その後。

 継母羊と一緒に墓参りをし終えると、また継母羊の歩みを合わせながら…もと来た道へと下りた。


 何気なく、空を見上げる――…狐様親子を埋葬した日のように雲一つのない晴天。

 また暑さ籠った日照りが、強まるだろう。


 未だに親愛なる狐様の生前でも亡き後でも…過ぎ去る日にちと喜怒哀楽とも取れる天候と気温は、変わらない。


 どんなに悲しみに暮れても『後追い自殺』なんて、しない――…亡くなった悲しみは、嫌でも分かる。


 しかし、個人的な解釈だが“後追い自殺”は――…衝動買いの『セールや限定品への弱さ』か『恋の盲目』と、似ている。


 全くの別物ですが、共通しているのは“不安感”と“後悔”だ――…失った絶望感は、計り知れない。

 よく「失って初めて」と――…小説やドラマの決まり文句は、現実に起こるものだ。


 生きるのが、辛くとも『生きない』といけない――…でも亡くなった方を“思い出す”だけでも『供養』になる。


 周囲が、忘れてしまっても“あなた”が『憶えて』いれば――…亡くなってしまった相手は、喜んでくれるだけでなく“後押し応援”してくれます。


 いくら悲しいからと臥せってしまっても『生きている』あなたを“心配させる”だけですし、逆に嫌われます。

今月もご拝読いただき、ありがとうございました。

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