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狐の嫁入り -土姫ノ章-  作者: ツカサシキ
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5-20 昔噺の追憶(20)

書き溜められましたので、立て続け投稿をさせていただきます。

よろしくお願いいたします。


※苦手な方は、お閉じください。

 その手前に祭壇が、置かれており…献花は、タンポポの花束――…タンポポは、狐様と友達の羊の思い出深い花。


 まだ子狐と子羊だった頃――…あの熊との格闘地の傍らにタンポポの花畑が、あった…今では、村の子供達…特に女の子達が、よく花冠にしたり薬草としても摘まれるため…あっという間に花畑は、縮小されてしまっている。


 そのタンポポ花畑にて、じゃれ合った拍子に…狐様と友の羊の片耳あたりに一輪のタンポポが、偶然にも引っかかっていたのだ。


 まるで、神様が『花飾り』として二匹の耳元に挿してくれたかのよう――…その光景を目撃した者は、二匹の愛らしく微笑ましく見守った。


 懐かしく、微笑ましい思い出を憶えていた村の子供達が…一生懸命に摘んで、献花として届けてくれた。


 これまでも…動物供養は、何回か参加してきた者でさえも“今回”は――…悲しみに無理に耐えきれなくなった嗚咽が、何処も彼処から聞こえ始めた…父である住職様も住職補佐を務めた兄も必死に涙を堪えながら耐えた…いや、耐えるしかなかった。


 ――父の…お経を無事に終えると、埋葬式を行われた。


 村の『守り神』であり“英雄”は、お見送りでも燦々と輝く太陽のような存在であった狐様と…その傍らに成長を楽しみにしていた数匹の子狐の亡骸と――…もう一体の英雄である狐様の友の夫も埋葬をを行った…が、悲しみに暮れているというのに雲一つない晴天だったのは…村人達から放っていた辛気臭さに対して、狐様と友の夫の『ムスッ』とした表情をしているのを…村人全員に脳裏に思い描いた。


 ――いかにも“ご機嫌斜め”の表情をしながら「逝けないでしょ」と、主張しているかのような天気だった。


 不思議な現象であったが、妙に納得してしまった――…狐様と友の夫の心配りを無下にするわけにもいかない、と…無理矢理な解釈をするしかなかった。


 ――ありがとう。


 目と鼻の先の盆と彼岸には、是非とも『里帰り』をしてください――…それまで、さよなら。


 誰かが、つぶやいた…誰もが「さようなら」ではなく「おやすみなさい」だろうと――…思ったかもしれない、が…間違っていない。

 動物だけでなく、人も植物も昆虫も“生”を受ければ“死”も授ける。


 何より『不必要な命』なんて存在しない――…それは、将来を語る子供の夢語りを否定する愚考者と同じだ。


 あれよあれよと――…桐を使用した木棺には、狐様親子と…友の夫を納棺された。

 二つの納棺の“花入れの儀”にも子供達、一人一人から一輪ずつタンポポを…ご遺体の周りを置いて行った。


 ――この花入れの儀に初めて、狐様親子と友の羊夫の安らかな顔を見る者は「触れたら起きるのでは?」と…錯覚を起こす者が、多かった。

 参列者の中には、思わず…触れようとする者が、居たが『ピタッ』と…挿し伸ばした手を止まる。


 何故ならば、嫌でも分かる…ご遺体を触れそうな距離で“冷たさ”を感じたからだ――…もう逢えない『現実』を目の当たりにし、崩れ落ちた。

 その光景を見た者も伝染したかのように…一人、また一人と泣き崩れた。


 ――その後も…葬儀は、続行された。

 葬儀の流れが、一つ一つと終えていくと――…遂に“埋葬”と、なってしまった。


 まだ火葬する文化ではなかったため、土葬である――…いや“認めたくない”という『支配』であり依存を羽織っているだけだ。


 あっという間に…棺は、土の中へと納まってしまった――…それでも『実感』が、湧かないのは…執着心。


 友の夫は、友の羊親子の暮らす寺にある“動物供養”の墓地へと埋葬された。

 狐様親子は、よく子供達と子羊達との散歩道の休憩地点にと埋葬された――…あのタンポポの花畑のある小川付近だ。


 実は、葬儀の始まる手前――…狐様との一騎打ちを果たした熊が、退治されたと知らせを受けたのだった。


 偶然にも村からの申請を受けて駆けつけてくれたマタギさんだった――…マタギさんも元、この村の出身だった…が、出稼ぎのために引っ越したのだ。


 元々、村のマタギ専門職にしていたのだが…ご親戚さんからの強い希望により、引っ越したのだった。

 時々だが、作物荒らしにより狩った猪や鹿や兎の獣肉を村に届けてくれていた。


 勿論、狐様への手土産も忘れない――…好き嫌いなかったものの特に鴨の肉が、大の好物だったため『必ず持参』していた。


 因みに退治された熊は、他の獣肉と同様に血抜きされながら加工される――…熊の前足と後ろ脚は、珍味としての高級食材のため…毛皮と共に高位貴族へと売られる。


 血抜きされた熊の血は、マタギさん一家の滋養強壮剤の代わりとして飲用。

 熊の臓器と骨は――…漢方薬や生薬の原料として、取引されていた。


 ――よく“いい知らせ”と“悪い知らせ”は、同時に起こりやすいと言われているが…その通りだった。

 狐様への手土産である鴨肉持参で、熊を仕留めた報告をしに村へと立ち寄ったら…まさかの訃報である。


 訃報を聞いたマタギさんは、居ても立っても居られずに手土産の鴨肉そっちのけにし…慌てて、家族に知らせて葬儀に参加したのだった。


 慌ただしくも…淡々と進められていくため、

あっという間に土葬された墓前に『ポクポク』と、狐様の親友の羊が…ゆっくりとした足取りで、歩んできた。


 羊の片耳には、子供の誰かが…挿してくれたのだろう、一輪のタンポポの花飾り。


 墓前に立つと――…まるで、人のように…しっかりと目を閉じて、亡き友と子狐へと黙とうを捧げていたように見えた。


 その後、黙とうを終えたのだろう――…暫く、動かなかった…羊の目を静かに開け終えると時折『メェ…メェ…』と、話しかけていた。


 羊が、話しかけると『フワリ…』と――…木々すらも揺れぬ心地よい涼風が、参列者のほほを優しく撫でた。


 ――まるで、先ほどの羊への返答のようだった。


 その光景に…また参列者の中から嗚咽が、響いた――…同時に大人が、泣いているせいもあり子供達も泣き始めてしまった。


 子供も泣いてしまった事もあり、お開きとなってしまった――…丁度、狐様と羊との話を終えた頃でもあった。


 不意に羊を何となく見ると…耳の花飾りが、消えていた。

 また思わず、キョロキョロと見渡すと――…直ぐに見つかった。


 見つかった場所は、狐様親子の墓前に『ちょこん』と…置かれていた。


 ――羊からの墓花。

 たった一輪のタンポポ…儚げで、何処か神々しく見えたのは…涙の影響だろうか…。


 タンポポの花言葉は――…愛の神託・幸せ・神託・真心の愛。

 ヨーロッパにて、古くからタンポポは“恋占い”に使われてきた事に由来しているそうです。


 まだ花言葉は、分からない時代であるが――…狐様と羊の大切な友愛の思い出花。

 きっかけに過ぎなかったが、思い出場所であるタンポポの花畑を持続と維持の取り組みを開始したのは――…葬儀後だが、次の日の話。


 丁度、田んぼに堆肥と肥料を混ぜ込み耕したばかり――…村人達は、話し合いをして…まだ田んぼの水張り前の一部分の土をタンポポの花畑に土を少しずつ耕す事となった。


 これには、子供達にも火を付けた――…田畑の仕事は、嫌々の渋々な協力に対して…タンポポの花畑となるや否や、立候補するほどに協力的であった。

ご拝読いただきまして、ありがとうございました。

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