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狐の嫁入り -土姫ノ章-  作者: ツカサシキ
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5-15 昔噺の追憶(15)

四月事卯月見舞いを申し上げます。

休載期間中の手直し投稿と今回の投稿をご拝読いただきまして、ありがとうございます。


仕事とはいえ、2月(如月)と3月(弥生)を休載してしまい申し訳ありませんでした。


今月から投稿を開始いたしますので、よろしくお願いいたします。

※苦手な方は、お閉じください。

 もう既に指導を受けても幼い子供達と子羊達の悲鳴により、完全に無理な話である――…若いとはいえ、滅多に人の前に現れない熊を初めて見る子も多いのも(あだ)となってしまった。


 まだ緑生い茂る森林の季節である、が――…稀に食料調達や嫁探しの最中に人里へと興味本位で、立ち寄ってしまう。


 それに食料調達では、食糧難になっても…人里から出る生ごみを扱った堆肥・肥料を作っている場所もあったのも原因の一つだろう。


 調べによると、ツキノワグマは――…植物や果実、昆虫等を食べる雑食性の動物。


 特に秋には、冬眠に備えて食物の中でも『ドングリ』を好んで食べるそうです――…残念ながら今回の散歩道中での小休憩の場に熊の追い求めていた大好物であるドングリの樹木もあったのも驚異的かつ不要な出会いであった。


 更に調べてみましたら――…ドングリ不足が“原因”と見られる熊が『大量出没』するというデータが、存在しています。


 ――失礼いたしました、話を戻しましょう。


 ツキノワグマの口元からは、先程の体当たりの痛みからか…涎が、溢れて垂れ流しながらも子羊達と人間の子供達の動きをチラ見していた。


 しかし――…途中、その雄羊の後を追いかけてきた大人達と合流して早々に事態を把握し…子供達と子羊達が、まだ泣き叫びながらも…もう既に距離を離れており、子羊の父親である雄の羊に狙いを定めた。


 狙いを定められても…臆する事無く雄羊は『パカ…パカ…』と、右の前足を土を蹴る動作を取った。

 この場に居る者達は「(何とも頼れるのだろう…狐様のように“英雄”だ)」と、不謹慎だが…思わずにいられなかった。


 一触即発な空気と場を離れながらも…父を心配して子羊が「メェメェ!メェメェ!」と、必死に鳴きながら今にも駆け寄りそうなのを年長者さんに止められていた。


 子供達と子羊達は、まだまだ泣きじゃくっているのを必死に宥めながら…まだ距離を開けていく――…本当は、今直ぐにでも雄の羊の許に駆け寄りたいが…何とか、羊の許に行っても羊より先に死傷するだろう。


 それでも雄の羊は、また『パカパカ』と…ツキノワグマに挑発するかのように音を立てながら土を蹴る。


 またツキノワグマが、よそ見した――…その時だった。

 羊が『今だ!』と、ばかりにツキノワグマに体当たりをしたのだ。


 聞きなれた――…訳ではないが『ドガンッ』と、ツキノワグマの腹部に体当たりを成功させた――…しかし、ツキノワグマの目は“嗤っている”ように見えた。


 体当たりを利用したツキノワグマは、まだ体当たりの姿勢を取ったが――…そのまま羊の首を『カジブッ』と、噛みついた。

 熊に咬み付かれた羊は、悲鳴を上げた――…後に『グンッ』と、首を噛みつかれたまま羊の身体を浮揚した。


 羊の体重は――…雌で、約45~100キログラム。

 雄の体重は、約45~160キログラムだと言われている。


 因みにツキノワグマの体重は――…約70~140キログラム。

 人の成人と大差ありませんし、背の高さ的にはさほど大きくないそうです――…今回のツキノワグマは、約100キログラムに達しているだろう。


 噛みつかれている羊も中々の大きさで、重厚感あるが――…相手が、悪かった。


 ツキノワグマは、羊を浮揚させたまま『ガジュッ!』と…また嫌な音が、離れていても聞こえた――ツキノワグマが、羊の首を噛み潰された音。


 ――羊は、悲鳴を上げなかった。


 そして――…そのまま『ドガンッ』と、地面に叩きつけた。

 一番避けたかった出来事だ――…避けたかったというのに“現実”は、とても惨く…残酷で…無情である。


 その衝撃的な出来事を目の当たりにした子供達は、恐怖により――…また子供達の「きゃあああっ!!」と、悲鳴を上げた。


 子供達の悲鳴に便乗するかのように子羊達も「メェエー!メェエー!」と、悲鳴も上げた――…その悲鳴が、ツキノワグマを煽らせたらしく…ピクリともしない雄の羊に止めを刺そうと右腕を振り上げた時だった。


 ドガンッ――…と、ツキノワグマの顔面に黒い『何か』に衝撃を与えた。

 その衝撃にツキノワグマは、また痛みに怯みながら状況を理解しようと見渡した――…その黒い“何か”は、突撃後に着地した黒い狐。


 その黒い狐を見るや否や子供の誰かが「狐様!狐様だ!」と、言うと…伝染するかのように他の子供達も「狐様が、来てくれた!」と、大喜び。

 子供達の歓喜に大人達もハラハラしながらも…狐様の登場に子供達と負けず劣らず、静かに歓喜した――…しかし、直ぐに思い直すと顔色を悪くした。


 何故なら――…狐様は、少しだけ腹部を膨らませた身重だからだ。

 身重の身体だというのに…狐様が、またしても駆けつけてくれた事に喜びと同時に「(逃げてくれ!狐様!)」と、思わずにいられなかった。


 そんな思いをしている人間を余所に…また痛みに怯むツキノワグマの前に狐様は、これでもかと犬歯を剥き出しにし…ツキノワグマに威嚇した。


 ――また勇ましい姿の狐様に思わず、目を見張ると同時に感心してしまう。


 腹部と顔面に突撃されたツキノワグマの堪忍袋は、もう限界を迎えており…仕留めを邪魔をした狐様に血走った眼で、睨みつけながら咆哮を上げた。

 ツキノワグマの雄叫びは、大の大人でも怯む――…咆哮の次に恐怖したのは、羊を叩きのめそうとした鋭き爪。


 その鋭い爪から邪魔をする“獲物”を欲するように…まるで、風に揺れ動く草のように動かした。


 だが――…先程の咆哮に加え、不気味な指の動きを前にしても狐様は…物ともせず「だから?何?」といった淡白な反応を示していた。


 狐様の反応にツキノワグマは、癇癪を起した子供のように「ガアァッ!」と――…また雄叫びを上げた。


 そんなツキノワグマの行動に終止符を打つかのように狐様は、また駆け出した。


 ツキノワグマは、一瞬だけ反応に遅れたが――…頭を庇うように低くした。

 しかし、狐様は“読んでいた”のか…一瞬にして横跳びをし、ツキノワグマの左わき腹目掛けに体当たりをした。


 その後も狐様は、勇敢にも『ドカンッ、ドカンッ、ドカンッ』と――…ツキノワグマの背中、時に片腕、片足と続いて、最後とばかりに頭に目掛け…以前より大きくなったとはいえ、狐様の小柄な体格を生かして場所を変えながら体当たりを繰り返した。


 ――狐様の“体当たり”は、猫の『親愛頭突き』と同じ威力である。

 子狐時代中期から人間に育てられたせいもあり、とても人懐っこい狐様――…しかし、ちゃんと“距離感”を把握しているだけでなく…人の言葉をも理解している。


 子狐時代の時と変わらずに妊婦となって帰郷した狐様は、今でも作物の実る田畑を荒らさずに害なネズミやモグラ等を直力的に狩猟し続けてくれていた。


 森に入ると番犬をするかのように果物や山菜、薬草摘みだけでなく…猪や鹿の狩猟にも協力してくれていた。


 その狩猟してくれた礼に洗い食べやすいように切った根菜や川魚を差し入れる程『村の守り神』だ。


 何より――…妊婦となって、警戒心を曝け出していたのもあり…村人総出で“見守り隊”を実行する毎日を送っている。


 ――狐様も人間からの好意を有難く受け入れていた。

 まだとはいえ、そろそろ出産の準備をしないといけないというのに…不穏な空気か臭いを感じ取り、狐様自身の危険を顧みずに駆けつけてくれたのだった。


 恐らくだが――…狐様の友達である羊の『友の子供』が、今回の散歩に参加していたからだと思いいたるまで時間は、掛からなかった。

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