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狐の嫁入り -土姫ノ章-  作者: ツカサシキ
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5-6 昔噺の追憶(6)

5月事皐月見舞いを申し上げます。

ご拝読いただきまして、ありがとうございます。

今回もよろしくお願いします。


※苦手な方は、お閉じください。

 蘭医の先生曰く「患者さんから」も含まれているそうな――…あっという間に大荷物となってしまった手荷物に…思わず、頭を抱えてしまった。


 しかし――…どれもこれも村の者達が、喜びそうな品々。

 皆の喜ぶ顔を思い浮かべたのが、効いたのか…やる気を出しながら肩こりと腰痛悪化覚悟を決めて、薬売りに新調した丈夫な背負子(しょいこ)に乗せていった。


 道中、ずり落ちてしまわないように調整をし直した――…着替えとかの荷造りは、あっという間であったが…思いの外、土産への“気遣い”に神経を尖らせてしまいし過ぎたようだった。


 何とか、背負子に乗せた土産を改めて見ると…積み木のように積み上げた土産の数々に絶句しつつ、また笑みを零した。


 また皆の喜ぶ顔を思い浮かべてしまったのもあるが、笑みの理由は――…兄から奉公修行を終えたと手紙が、届いたからだ。

 僧侶である父と蘭医の先生から手紙の書き方を習っていたため、兄との連絡を取り合っていた。


 もしかしたら…村の入り口か実家周辺の道中とかで、かち合うかもと淡い期待を籠めながら――…大荷物な背負子を少しだけ戸惑ってしまったが、頑張って帰路についた。


 ――まさか、あの出来事になろうとも知らずに…。


 残念ながら兄とは、かち合わなかったが…行き違いで、兄も帰宅した。

 しかし、師匠と負けず劣らずの大荷物を持って帰ってきた事に出迎えた両親と一緒に驚いてしまった。


 あまりの疲れ切っている様子に直ぐに水瓶から湯飲み茶わんに水を汲んだ後、兄に手渡した――…手渡すと直ぐに体が、欲していたのだろう『ゴクゴクゴクッ』と…喉を潤していた。

 喉を潤した兄から礼を言われて聞かされたのは、幼馴染の話だった。


 奉公修行を無事に終え兄の目に飛び込んできたのは、しつこく村娘に言い寄っている一人の浪人――…師匠は、知らなかったが…両親は、知っていた。


 ――知っていた、が…嫌われ者として“有名人”だった。


 両親は、要らぬ心配として考えたために師匠に知らせていなかったのだ――…色々、文句を言いたかったが…幼馴染の安否確認に集中した。


 兄の話では――…しつこく言い寄り続ける浪人に村娘は「止めてください!」と、必死に拒絶していた。


 その拒絶し続ける村娘に対して、下手すると切り捨てられる勢い――…そして、ついに恐れていた事態になる前に直ぐに駆け寄った師匠の兄が、二人間に割って入った。


 突然、割って入ってきた僧侶に驚いた二人であった――…が、村娘の方は「助けてください。助けてくださいっ」と…師匠の兄の背中に縋るように悲願した。


 浪人の方は、師匠の兄に対して…つまり、怒り狂っていた。

 あっという間に板挟み状態となってしまったが、恐怖に震えている幼馴染に「大丈夫だよ」と――…あやすように慰めた。


 幼馴染さんは、初めて僧侶の兄である事に気づいたのだろう――…まだ恐怖で、震えているものの…ゆっくりと、不安を下ろしているように見えた。


 その様子に一瞬だけ、安堵を取り戻しつつ…問題の浪人に頭を悩ました。


 ふてぶてしい浪人の褒められたものではない態度に…次第に静かな怒りを乗せて、僧侶以前に人として怒りたいのを堪え――…僧侶としての心得をとして、懇々(こんこん)と説法を聞かせた。


 突然の説法に浪人は、馬鹿にしていたが――…それでも説法は、止む事を知らない。


 ――しかし、あっという間に終わりを告げた。

 兄の説法に聞き飽きたのだろう…浪人は「チッ。興醒めだ」と、舌打ち含めに吐き捨てながら来た道に去っていった。


 浪人の背中が、遠くなると同時に師匠の兄は「(何とか切り抜けた)」と――…ようやく、息を吹き返すように深呼吸をした。

 すると、背後から幼馴染さんが「ありがとうございます!ありがとうございます!」と、師匠の兄に何度も礼を述べた。


 その後――…改めて再会を喜びつつも師匠の兄は、幼馴染さんに「また同じ事があるかもしれないから家まで送るよ」と、願い出た。


 願ったり叶ったりの申し出だったが…幼馴染さんは、遠慮した――…直ぐに家に帰って、家族に会いたいだろうと思ったからだ。


 しかし――…師匠の兄から「さっきの浪人が、待ち伏せしているかもしれない」の続けられた言葉に先程の浪人に会うかもしれない事への恐怖心が、勝ってしまい「お、お願いします」と…言葉を発していた。


 幼馴染さんの言葉に兄は「うん。では、行こう」と――…行こうとした。


 ――すると、幼馴染さんは「修業だったから一度も帰っていないでしょ?後回しにしていいから生まれ育った所を巡りませんか?」と、提案された。


 彼女なりの礼だったのだろう――…兄は、少し考えたが…幼馴染さんの好意と提案を受け入れた。


 師匠の兄は、幼馴染さんに左の片手を差し伸べた――…子供の頃からの慣れと言うか癖で、師匠か幼馴染さんと手を繋いでいた。


 師匠の兄の行動に幼馴染さんは、一瞬だけ驚いたものの…恐る恐る、手を握った。


 戸惑っている幼馴染さんの手を取ると――…昔のように優しく握ると「相変わらず、優しくて頑張り屋さんの手だ」と、兄から伝わる手の温もりと懐かしむ言葉に…幼馴染さんは、思わず…噛みしめる。


 ――幼馴染さんの懐かしい記憶と想い出。

 嬉しさ半分、恥ずかしさ半分と…複雑な気持ちになりながらも自ら提案した村巡りに繰り出した。


 しかしながら…もう正午過ぎだったため村の半分しか、見れないが…一箇所、また一箇所と見て回っていった。

 子供の頃に見た光景だけでなく、新たに建った家屋や立て直した物置小屋も――…懐かしさと新鮮味に染まった。


 最後に幼馴染さんの両親が、担当している田畑――…師匠の兄からの申し出だった。


 幼馴染さんは「もう収穫を終えて、米を作る準備中だから何も無いよ?」と、言っても兄は「構わないよ。おすそ分けで、多めに持たせてくれた香の物…修行先で、世話になったから礼を述べたいんだ」と――…思わぬ申し出であったが、案内した。


 しかし――…修行に出る前まで、使っていた道路ではなかった。


 理由を聞くと――…以前まで、使っていた道路は“溜め池”になっていたからだ。

 元々、雨や雪の季節になると作業に支障をきたすほどの水の溜まり方が『深すぎる』のが“きっかけ”だった。


 どうする事も出来ずにいたところを運良く…地層を研究している学者さんが、立ち寄り調べてもらったそうだ。


 調べてもらった結果――…川の一部が、自然に塞がった『埋立地』であったのだ。

 急遽、水を逃がす目的として溜め池を作り上げたのだそうだ。


 その溜め池にも案内してもらったが、とても立派な溜め池だった。

 この前の長雨により増水したからだろう…泥鰌(どじょう)(なまず)等の淡水魚が、気持ち良さそうに泳いでいた。


 ――その光景に思わず、ほっこりしてしまう。

 師匠の兄は、村の新たな助けとなった溜め池に感謝を捧げた後に畑へと足を運んだ。


 到着した畑は――…聞いていた通り、既に収穫を終えていた。

 そして、畑から田んぼに変える田畑転換をしている準備をしている段階だった。


 何気に畑の周りの土手に目を向けると――…タンポポの黄色い花が、咲いていたが…大半は、綿毛種となっていた。


 季節の変わり目に感じていると風が『フワリ…』と、躍り出た――…風が、吹くと同時にタンポポの綿毛種と一緒に舞い上げた。


 吹かれた風に綿毛種も「待ってました」と、言わんばかりに舞い上がる――…風と共に舞い上がった綿毛種は『ピタッ』と、時を止められたかのように…その場に留まった。


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