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狐の嫁入り -土姫ノ章-  作者: ツカサシキ
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5-3 昔噺の追憶(3)

2月事如月見舞いと共に新年あけましておめでとうございます。


被災された皆々様にお見舞い申し上げます。

早い復興を心よりお祈り申し上げます。


先月分の仕事が、ひと段落いたしましたので、今月から始動いたします。

また書き直すかと思いますが、よろしくお願いいたします。

 フラフラ…と、酔っぱらいのような足取りで…祠に近づいた。


 祠の中には――…狐像が、祀らわれている。

 狐像の前には、活けられた季節の花と…皿に盛られた稲荷ずし、お椀に注がれた温めの茶。

 飲みやすいようにとお椀にしているそう――…元女中も此処に越してきてから住民から説明を受けていた、が…担当から外されていた。


 理由は、何の事もない――…挨拶どころか、世話をしなかったから他の住民から外されたのだった。


 一歩一歩と、虚ろな目をしながら近づく元女中の行動は…明らかに様子が、おかしい元女中の態度と風貌に…草刈りを担当していた住人は、ハラハラしていた。


 ――そして、祠の前に立った。

 ハラハラしつつも…一瞬、拝むのかと…疑問に持たなかったものの、草刈りの続きをしようとした時だった。


 浮浪者と化した元女中の右手に握られているのは、綿棒のような木の棒――…その木の棒で、あろう事か…木の棒で、狐像を殴りつけた。


 そう――…殴りつけたのだ。


 ガツンッ!――…と、変な音を聞きつけ…パッと、振り向いたら…元女中は、狐像を目掛けに『ガツンッ!ガツンッ!』と、一心不乱に…まるで、恨みを晴らすかのように息も絶え絶えになりながらも何度も何度も殴り続けた。


 思いもよらぬ光景に唖然するしかなかった――…しかし、鬼女と化した元女中に恐れおののいてしまい…恐怖で、その場で動けずじまいだった。


 何分経っただろうか…ようやく、静かになったと思ったら…もう既に息も絶え絶えだというのに怒り狂った表情のままだった。


 あまりの光景に動けぬままの状態で、更に何分経っただろう――…動いたのは、元女中の方だった。


 荒々しかった息遣いも今や、落ち着いていた――…元女中の憂さ晴らしは、成功した瞬間だった。


 まさか、見られているとも知らずに…手に持っていた木の棒を投げ捨てた。

 投げ捨てるや否や、晴れやかに自宅に帰っていった。


 そして、遅れながらも…ようやく、動けるようになった住人は「罰当たりな…」と、呟きつつも直ぐに狐像に駆け寄った。


 駆け寄るや否や、また絶句する――…せっかく、供えたというのに滅茶苦茶な惨状となっていた。

 先に目に入ったのは、狐像の前足部分が…痛々しく、大きくかけていた。


 そして、次に目に入ったのは――…皿に盛られた稲荷寿司は、木の棒に叩かれながら…ぐちゃぐちゃになり、皿も割れ被害に遭っていた。

 稲荷寿司だけでなく、供えた花も温い茶の入った椀も…割れていた。


 ――見るも無残な光景だった。


 この光景を見るや否や住人は、慌てて手を合わせて狐像に向けて「直ぐに新しいのを持ってきますので、お待ちください」と――…頭を下げて、また慌てながら新しい食事を用意するために草刈り道具を放置して足を急がせた。


 その時――…狐像の目は、怒りの色に染まっていた。


 ――その後の元女中の行動は、また飽きずに懲りずに…悪評を触れ回っていた。

 既に誰にも相手にされていないのにも関わらずに…そして、この一件に聞きつけた他の住民達から元女中を非難した。


 しかし、非難されても目撃者されても元女中は…どこ吹く風。


 最後まで、知らぬ存ぜぬの素知らぬふりを続ける元女中の呆れた言動に態度に住人の関係に火に油を注ぐ如く――…悪化したのは、当たり前だった。


 そして、何日かして逃げるように引っ越すまでに行き着いてしまったのである。


 ――丁度、あの一件の後に…不幸にも同期は、問題児の元女中と会ってしまった。

 物珍しく上機嫌だったために理由を聞いてみた――…が、直ぐに後悔をした。


 元女中の住まう地域は、無人であるものの稲荷神社――…つまり、狐様が“護ってくれている”大事にされている場所だ。

 その祀られている狐像を…憂さ晴らしに木の棒で、叩きつけたというのだから愕然と…唖然とするしかなかった。


 その話を聞いた同期は「(絶対に罰当たるわ…)」と、白い目を向けながら元女中の自慢話を聞かされ続けた。


 気が済んだのか…元女中は、意気揚々と帰っていった。


 見送った同期は、今聞いた事を直ぐに雇い主である女将さんと…一件の重役となってしまった少女に報告した。


 同期から話を聞いた女将さんは「何やってんだよ、あの子…」と、厭きれ…少女は「私のせいで、狐様…」と、祀られている狐像を案じた。


 実は、あの狐像――…本当に“宿っている”からだ。

 ここ一帯は、古くから『狐』に守られ続けられている土地――…土地神様であり“地主神”様でもある。


 付かず離れずの絶妙な距離感に佇む『狐』様は、よく子供達の面倒を見てくれる“ありがたい存在”だ。

 少女も例外なく…よく母から「危険から助けてもらったのよ」と、話してくれた。


 ――その『危険』とは、何だったのか?少しだけ、昔話をしましょう。


 当時、亡くなった少女の父も元気であった頃――…まだ少女が、母のお腹の中にスクスクと成長していた。


 しかしながら…父の勤め先が、町はずれの遠方に出向かなければならず…途方に暮れていた時に女将さんに出会ったのだ。


 実は――…父と女将さんは、異母兄弟だった。


 ――残念ながら実家のあった故郷は、既に存在しない。

 かつて、父と女将の暮らしていた故郷は…運悪く、縄張り争いをしていた山賊に襲われてしまい…焼け野原と化した。


 不幸中の幸いにも…山賊は、場所だけが欲しかったらしく…村民の命は、助かった。

 しかし“それだけ”だった――…幼い頃の思い出話しとして語られたのは「他にも兄妹が、居たのだが…両親すら音信不通」の真実だけだった。


 ――その後。

 命辛々逃げ延びた先は、身寄りのない子供達と暮らしている寺子屋だった。


 その寺子屋は――…元々、戦時や飢餓の流行により寂れてしまった廃寺を元大工をしていた僧侶自らの手によって…立て直した寺であった。


 寺子屋の主ある僧侶に事情を話すと、直ぐに保護者となってくれた。

 その後、僧侶と寺子屋の年長者である少年から相部屋であるが…部屋に案内され、身の回りの世話や役割分担がある事を教えられた。


 その話を聞くや否や村で、両親や世話になった村民から教わった畑の世話を買って出た――…そして、僧侶から読み書きだけでなく数字の数え方や計算の仕方を習っていった。


 読み書きや計算の仕方を教える前に必ず僧侶から「まだ時は、掛かるが刃に頼る争いなど終わる。刃の代わりになるのが、学徳の有無を制するからだ」と――…今現代なら宗教のようにも聞き取れてしまうが、知らないままよりも『どんな知識を得た方が、良い』だと直ぐに思い至った。


 不幸中の幸いにも…彼等の居た場所は、周辺に住む集落の子供達や大人達にも読み書きと計算の仕方を無償提供にし…物々交換にて作物や干し柿などの保存食を得て飢餓から守られていた。


 そして、じわじわと拡張していたものの…戦場から離れた立地だったのも功を奏した。


 しかしながら“時間の問題”というのは、遅かれ早かれ…やってくるものだ――…立て直した僧侶も分かっていたのだろう。


 僧侶は、戦場と化すのを見越して…自らを犠牲にし、避難誘導を行った。

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