4-2 上書きされ続ける古傷(2)
ご拝読していただきまして、ありがとうございます。
今月最後の投稿となります。
※行方不明者視点です。しかしながらオリジナルでありますが、自殺者志願な思考の表現しております。
苦手な方は、お閉じください。
楽しんでいただければ、幸いです。
よろしくお願いいたします。
――まだ…私じゃない。
ここに来て、どのくらい経ったかな?
父さんと母さん…――両親は…私の事、心配してるかな?…するわけないよね…二人とも、私の事なんて“いない子”扱いだった…心配してくれるのは、お兄ちゃんとお姉ちゃん…かな。
別に…親子喧嘩しているわけじゃないよ?そこそこだけど…仲は、いい方だと思う。
どう言えばいいかな?親…いや、大人特有の“兄弟同士を比べる”と、言えば分かりやすいかな…。
その行動が、嫌だった…本人達は、知らないうちの行動と言動なんだと思う…。
そうでしょ?お姉ちゃんのように文才が、あるわけじゃない…極めて平々凡々。
比べる基準というか比率が、おかしいでしょ?先に生まれた兄と姉が、変な言い方だけど『異常』なんだよね。
頭が、良かったり…運動神経が、良かったり…。
――当り前じゃない。
今日は、晴れてるけど…天窓に雨粒が、あるから…お天気雨かな…――急な雨だから洗濯物の天敵なんだよね。
直ぐに…約1分以内で、止む日があれば…約3分~約30分以上降り続ける日もある。
うっかり、布団を天日干しをした日は…お察しだろう。
よく慌ててたな~…布団干しだけでなく、バスタオルと衣類物が…犠牲になるんだよね。
乾燥機があれば、問題ないけど…自然乾燥派…――いや、悪くないよ?悪くないんだけど…こだわる人は、こだわる。
そんな当たり前な事を思い更けていても…部屋の外は、物音がない。
今日も“私”じゃないみたい…残念。
手間取ってるのかな…手伝えれば、いいんだけど…あの方は、望まない。
今の私は、すっかり『異常者』だ――…自分で言うのもなんだが、狂ったとしか言いようがない。
よくドラマや小説での誘拐・拉致された人が、連れて来られる場所って…誰もいないか誰も立ち寄らない廃ビルや廃工場内の場面が、多い気がする。
しかし、どうだろう――…衣食住完全完備で、冷遇どころか“優遇”してくれる。
でも…どんなに優遇されているからといっても『犯罪』なのは、変わりない――…それに間違えないでほしいけど、私は…あの方によって『監禁されてる』事くらい、理解できない馬鹿じゃない。
理解してる、分かってる。
――でも“一緒に居たくてたまらない”の。
私のように…比べるのも烏滸がましいけど『葛藤している』ように見えて…ほっとけない。
今でも…かさぶたを重ねに重ね続けてるようで――…ほっとけないの。
まるで、シャボン玉のように綺麗だけど…ちょっと触れただけで、割れてしまう儚げさを持っているの。
確か、犯罪心理学の特番に…どんなに極悪な犯罪者の事を好きになってしまう心理に陥ってしまうそうだ。
現に“獄中結婚”って、言葉があるくらいだ。
なんて言ったかな…確か『ストックホルム症候群』だったかな?犯罪者と長期間…過ごしていると“心情”が、芽生える。
――確か、ストックホルム症候群とは…精神医学用語の一つ。
誘拐や監禁などによって拘束下にある被害者が、加害者と時間や場所を共有する事によって…加害者に好意や共感、信頼や結束の感情まで抱くようになる現象だったかな。
それは、友情・恋情・愛情と言った“友愛な情け”だ――…普通なら勿論、どんな時間が経っても恐怖心による「早く終われ!」と、悲願する一方の方が圧倒だろう。
この経験談を聞いた時の私も『後者の考え』だった。
しかし、今の心境は――…前者になっている。
これには、私自身も驚いている。
よく「自分が、経験してしまう」と――…なんて、言葉を耳にした事あるけど…まさかのまさか、私自身も“想ってしまう”なんて…思いもしなかった。
ヤバいかもしれない…いや、かなりヤバい。
でも逃げ出せない――…いや、正確には『側を離れる』事を拒絶している私自身に驚いている。
ヤバいのは、分かってる。
命の危険に晒さられている事も分かってる。
それでも…逃げ出そうという意思が、私に存在していない。
あの子に初めて会った時から…同性だというのに私は、惹かれてしまっている。
それに…付け加えるとするなら…モヤついた家族関係の所に帰りたくない。
子供じみた駄々っ子のような言い訳だけど…親不孝だって、怒られそうだけど…家族に会いたくない。
だって――…私の“精神”では、決定事項となってるのは…確かだ。
それだけ…お父さんとお母さんは、自覚無しに私を『追い詰めた』んだから…勝手に期待して、勝手に失望しちゃってっ…。
どうして、私が“責められる”の?
頑張ったのに…一生懸命、頑張ったんだよ?これでも…!
――けど、聞き留めてくれなかった。
結局、肉体的に…精神的に参った私を救ってくれたのは…お姉ちゃんだった、けど…父と母に「甘やかすな」みたいな感じに叱られたみたいで…距離を置かれた。
仕方ないと思ってる…多分、お姉ちゃんなりに私を『守る』ためだったのかもしれない。
そう思わないと、前を向けなかった…家に帰れなかったし、学校にも通えなかった…ずっとずっと、足が竦みっぱなしな毎日に唯一の楽しみが…遠出先の買い物だった。
これは、自分なりのリセット方法だった――…と、言っても姉の受け売り。
よく自分の好きな飲み物や食べ物を食べると『勇気』が、出るって…昔、お姉ちゃんに教えてもらった。
今は、体系を気にしてダイエットを頑張ってるけど…私から見たら全然、痩せてる…姉自身の好みの服のサイズのせい、らしい…分かるわー。
私もショッピングに行って「カワイイこれ!」と、思って手に取って…サイズを見たらSサイズだけで…このワンサイズしかなかったりとか…。
絶句したわー…子供、いや…小柄専用かよ!って、心の中で…暴言吐きまくったわ。
それくらい、好み服だったんだよねー…結局、どうしたのか?二番目に気になっていた服を買ったよ。
二番目だけど…凄い機能性でさー!すっかり、お気に入りの服になった。
あー…でも…私が、死んだら…その服、着れないよねー…。
納骨の時に入れてもらえないかなー。
――我ながら意地悪に縁起でもない事を考えてる。
でも…もう“どうでもいい”んだよね。
人間、遅いか早いか…いずれ『お別れ』が、誰しも存在している――…勿論、私も例外じゃない。
誰にでも当たり前に存在している共通点――…生きる事を諦める事なく前向きに皆、長寿を夢見る。
――今だけだと思うけど…私は“死”を案外、恐れていない気がする。
でも…私も『死』を直面したら…その考えを変える事が、あるだろう…だけど“それだけ”だ。
それに…最期も好物を用意してくれるそうだ。
なんか、申し訳ない…おまけに私を『食べ終わった』ら…この手紙を出してくれる事を約束をしてくれた。
お姉ちゃんへの手紙…私の気持ちを分かってくれるよね。
早く…私の番にならないかな。
-完-