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狐の嫁入り -土姫ノ章-  作者: ツカサシキ
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4-1 上書きされ続ける古傷(1)

三月こと弥生見舞いを申し上げます。


1月頃に投稿を予定していましたが、投降後に予期せぬ我がパソコントラブルにより悪戦苦闘を強いられてしまい、約二か月間も投稿不可となってしまいました。

申し訳ありませんでした。


※行方不明事件関係者視点です。

 家族差別発言が、含まれております。苦手な方は、お閉じください。

 ――マダカ?


 ああ…申し訳ございません。


 ――何時マデ、待タセル?


 申し訳ございません、お許しください…。

 今は、まだ――…いえ…いいえ…!お待ちくださいっ…必ず…!必ずっ…!


・・・・・


 ああ――…私が“目的”のためにっ…貴女様になるのにっ…何故っ…何故っ…何故っ…!


 ――土葬様…。

 貴女様に選ばれた『存在』なのに…!


 はあ…。

 自信なくす…。


 本来“土葬”様に選ばれるのは――…姉・みどりになるはずだった。

 しかし…姉は、亡くなってしまった…。


 あの時は、酷かった…ずっと雨で…そのせいで、母は「洗濯物が、干せないわ」って…よくぼやいてた。

 長雨による影響で、とある場所の地盤が緩んでしまい…土砂崩れが発生した。


 お姉ちゃんが、家から出て…たった約数十分…私も学校に行くため玄関で、靴を履いていた時だった。


 突然、朝早くから居間の電話が鳴った――。


 電話に出たのは、母だった。

 朝早かったこともあって…一瞬、父が務めている会社からかと思ったら…近所の大学病院からだったそうだ。


 普段ならやんわりとした母の口調が、大きな声になり「はいっ…!はいっ…!今直ぐにっ…!」と、慌てていた。


 正直に言うと…お姉ちゃんの代わりなんて、出来るわけないのに…父さんと母さんは、私を…亡くなった姉・みどりの代わりをするよう強要され続けた…。


 ――そう…小学2年生から中学3年生になった今でも、だが…しかし、ようやく“現実”を少しずつ受け入れ始めた両親から受ける『お姉ちゃんのフリ』の強要は、微妙に緩和…した。


 お姉ちゃん…。


 大丈夫だよ、私――…私が、絶対に“()()()()”からね。

 生き返ったら…また、お出かけしようね?オシャレにコスメにカフェで、ご飯食べたり…お気に入りの雑誌の読みあいっこしたり…。


 待っててね――…みどりお姉ちゃん。


「みどり!みどりっ!!」

「どうし、て…どうしてよぉ…!!」


 父と母の悲痛な叫びが、警察署の遺体安置所の一室を響き渡らせる――…小学校の日直のために何時もより早く家を出た姉・みどりが、享年8歳で…亡くなった。


 みどりが、亡くなった現状は…土砂崩れだった。


 ――当時、集団登校中だった“土屋みどり“を含む8名の男女の児童が、土砂崩れに巻き込まれる死傷事故が起こった。


 しかし…その土砂崩れには『原因』が、遭った。


 住宅街や通学路とは、離れた場所に枯れた森林公園が、あるのだが…約5年の歳月を得て、ようやく整備工事の目処が立った事で半年前に始まった。


 だが…始まった時期が、梅雨入り――…この事故が、起こった時の当初は「まさか」と、誰もが口を揃えた。

 土木工事中だったのだが、運悪くバケツを引っ繰り返ったような大雨が…約一か月半が、降り続けたのだ。


 ――その結果は、お察しだろう。

 何故なら…事故現場となった道路兼通学路と工事現場の距離は、離れているからだ。


 ただし、いくら離れているからと言っても…決して“安全”ではない『土は、繋がっている』からだ。

 例えるなら――…雪山で起こる『雪崩』と、同じだ。


 連動型誘導・誘発現象と言えばいいだろうか…。

 小さな被害――…どんな被害でも最悪だが…当時、そう思われていた。


「本当に運の悪い…」


 ――誰かが、思わず零すように口にした。

 その言葉を耳にした者からしたら…どう思うだろうか?当時の責任者一同は、誰一人とて“注意”しなかった――…そう、しないのだ。


 大人の『不要なプライド』が、今後を左右するというのに…贖罪が待っているというのにだ。

 そんな『出来事』が起こっているというのに…何故か、学級閉鎖にならない事に不満を持っている


 まるで――…何も“期待”するな。

 何も“希望”を抱くな。


 ――声に出さずとも…取り付く島もない言葉を言われている気がした。


 その日以来、だろう。

 私は『疑心暗鬼』を抱かずに生活出来ない――…今も尚、私達家族関係ぎくしゃくしている。


 特に母との関係が…後継者である“姉”が、親より先に亡くなってしまった事により私への接し方が…変化した。


 なんてことは、ない…私が『姉』の代わりを要望し始めただけだ。


 よく周りの人は「早く忘れろ」って、簡単に口走る癖に自分の立場になると「どうして、こうなったんだ!」と、身勝手な振る舞いに早変わりする。


 批判する資格なんて、ないのにね。

 お陰様で…私の“心”は、今もなお…親を含める大人達に殺され続けている。


 そんな接し方を受ければ、病むでしょ?

 でも…そんな心情になっているのに『誰一人』気づかない。


 勇気を出して「苦痛だから止めて」と、言っても…親も大人達も「甘え垂れるな」の一言で、済まされた。

 壊れないわけないでしょ…私は、この先ずっと…親ですら“味方ではない連中”に心身に鞭を打たれ続けなきゃいけないんだから…。


 お姉ちゃんは…今の“私”のように遭っていたのだろう。


 ――何も知らなくて、ごめんね…お姉ちゃん。

 違う…知ろうとしなかったんだ、私…私もアイツ等と同罪。


 口癖である「家の跡取り」として、大人に…アイツ等に身勝手な期待を押しつけがましく与えられ続けたんだね?お姉ちゃん…。

 私に…心配させないように笑っていたんだよね…?


 アイツ等に復讐を決めた瞬間だった――…馬鹿な真似は、止めろ?止めない。

 父さんも母さん…親族…!アイツ等のせいで、お姉ちゃんはっ…!お姉ちゃんは、死に急がせられたようなものだっ!


 狂ってる?それが、何?

 私が、狂ってるなら…アイツ等も狂ってるっ!


 そうでしょ?お姉ちゃんが、受け続けた馬鹿馬鹿しい『理想と思念』を…期待外れにされていた“私”にっ…みっともなく、縋りついてきたんだから…!


 なんて…なんて、手のひら返しなのかしらね?

 本当に腹が立つわ!


 ――だから願った。

 願ったの…!我が家『自慢』の家宝である“稲荷の仮面”に宿る地主神様にっ…!


 お姉ちゃんほどではないけど…!私は、お姉ちゃんの『妹』だもん!

 子供の頃から一緒に…お姉ちゃんの見様見真似し続けた…!お姉ちゃんのように上手くいかずに何度も挫折しかけたけど…諦めなかった“ご褒美”のように頑張った甲斐あって、答えてくれたっ!


 私の『悲願』を叶えてくださる地主神様との神託を“実行”していった――…敬愛なる土葬様。

 私の身体を引き換えに…貴女様『そのもの』になる役目を…!宿してください!


 そして――…私に“お姉ちゃん”を返してくださいっ…!


 ――ダメ。

 まだ『満たしていない』みたい…今日も“食べなくちゃ”駄目なんだ…。


 食べて…食べて…食べてっ…!


 待っていて、ね。

 お姉ちゃんが、安心して帰ってこれるように…私が『土葬様』として、役目を務めるから…!


 私は「待っててね、お姉ちゃん…必ず…」と、願い事は静かに自室が聞き入っていた。




   -完-

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