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狐の嫁入り -土姫ノ章-  作者: ツカサシキ
15/39

3-6 小話・トラブルメーカーを持つ苦労人は、飼い猫に癒される。

12月事師走見舞いを申し上げます。

誠に勝手ながら今年最後となる投稿をさせていただきます。


今年もご拝読いただきまして、ありがとうございました。

次回の投稿予定は、来年2023年1月10日火曜日頃とさせていただきます。

宜しくお願い致します。


※苦手な方は、お閉じください。

 ――私は、うんざりしていた。

 幼馴染である“辻本蓬”だ…ご丁寧に今朝も馬鹿げたメールを送ってきた。


 げんなりするし、うんざりもする…そんな憂鬱気分を晴らしながら黒猫で、飼い猫である“セラ”の夕飯の支度を進めた。

 セラとの出会いは、まだ私が…確か、小学6年生の頃だろうか…?もう記憶が、曖昧になっている事を突っ込まないでもらおう。


 叔父さんの話しでは、近所に住む元飼い猫だったらしいが…酷な事に引っ越しする際に『置き去り』したらしい。


 ご近所さん情報収集によると…元飼い主が、放浪癖のあったセラに苛立ちを抱いていたらしく…引っ越しの話しが、出始めた頃から決めていたんじゃないか――…とも何とも馬鹿げた事を叔父さんから聞いた。


 セラは、放浪癖あるものの…気に入った場所には、何時間も居座る“癖”を持っている――…我が家の飼い猫になる前の野良猫時代では、叔父の家が『理想』だったらしく…。


 警戒心あるものの…庭だけで、のびのびリラックスした姿を目撃して以来の叔父さんの取った行動――…縁側辺りにセラより少し大きめな防水加工した段ボールの底に脱臭・消臭機能付きのペットシートを先に敷き…その上に不要となった洗濯済みの2~3枚のタオルを…ふんだんに引き詰めた寝床を貢いだ。


 寝床だけでなく、猫トイレも用意した。

 猫トイレも猫の足の長さより低めの発泡スチロールの箱にペット用消臭・脱臭機能付きのペットシートを敷き、その上に土を混ぜた猫砂を敷き詰めて置いた。


 直ぐには、使ってくれなかったが…日に日に使ってくれるようになった。

 その時の叔父の顔が“仏様”のように穏やかだったのを憶えている――…お互いの好物で、祝杯を挙げたくらいだ。


 使う・使わないでも毎日、取り替えたのが良かったのかもしれない…叔父は「何に対しても清潔第一だから」と、セラ(まだ野良猫)が『快適』に過ごせるように手探りしながら“うちの子”計画という名の外堀を埋め始めていた。


 泥棒じゃないかと、突っ込まれても仕方がない――…法律では、愛玩動物という名の『物』扱いになるそうだ。

 なんやかんだで、知らず知らずのうちに“うちの子”に移行しつつあるセラ(野良猫)お嬢様。


 その頃には、すっかり…叔父だけでなく私とも仲良くなっていた。

 休みの日には、一緒にご飯を食べる仲でもある。


 ――ある日の夏真っ盛りで、酷暑だった。

 街並みの外壁とアスファルトから反射熱気で、どんな服装を着ていても…直ぐに脱ぎ捨てたい暑さだった。


 学校からの帰宅途中に…道端で、熱中症に遭ってしまっている所を私が、見つけた。


 慌てたわー…心臓に悪かったわー。

 ぐったり横たわってたし…野良猫(セラ)を抱き上げて、叔父さんの元に「緊急事態!」って、叫んだわー。


 丁度、庭に出て…野良猫(セラ)の寝床や簡易トイレを整えていた叔父さんも仰天してた。


 抱きかかえた際に…セラの身体が、酷く熱の籠っていたため直ぐに保冷剤をタオルに包み…セラの身体に当てながら動物病院に連れていき、診察してもらった。

 診察結果は、熱中症――…直ぐに処置してもらいながら説明を受けた。


 初め、私も叔父さんも迷い猫だと思っていたので“保護”する形で、我が家に引き取る事となった。


 引き取ると早々に迷い猫を保護しているというチラシを作った。

 セラの特徴を「これでもか!」と、言わんばかりに事細く制作した事を今でも覚えている。


 あんなに頑張ったのは、夏休みの自由研究以来――…努力の成果が、報われた瞬間が訪れた。

 セラを飼っている家を見つけたのだが…冒頭でも話した通り、引っ越した後だった。


 ――ご近所さんの話では、元飼い主に『全く』無関心というか懐かなかったらしい。

 もっと“具体的”に話を聞けば…かつて、飼い主さんの付き合っていた人の飼い猫を引き取ったらしい。


 事情を話すと、奇跡的に…前々飼い主さんの連絡先を知っていたご近所さんに教えてもらい…始め驚いていたものの、話し合いの場と時間を作ってもらった。


 話し合いの場は、オシャレなカフェだった。

 軽く自己紹介をして早々に…その前々飼い主さんに事情を話すと「嘘つきやがったなっ…あの野郎っ…!」と、怒り心頭だった。


 しかし、前々飼い主さんも…直ぐには、引き取れない環境と激務に追われてしまっているため「連れて行きたいのは、山々なんですが…」と、申し訳なさそうにセラが、私達に懐いているという事で譲り受けた。


 聞こえ悪いが、ついに『うちの子』にする事に成功した――…今でも…その前々飼い主さんに連絡を取り合っている。

 私と叔父さんは、まだガラケー携帯のため仕事用に購入したパソコンを『リモート』と言ったら変だが…パソコン版“テレビ電話”をしている。


 テレビ電話の日は、私と叔父さんの携帯に「今、大丈夫ですか?」のメールが届くと…直ぐに「大丈夫です。パソコンを起動しますので、待っててください」と、返信するや否や…パソコンを起動しながら自分の身支度をし、部屋の状態を確認しながら…お休みモードのセラお嬢様を説得し、お気に入りのタオルケットを私の膝の上に置くと「私のベット!」と、足取り軽やかに私の膝の上に直行してくれる。


 セラも前々飼い主さんの顔と声が、分かるのだろう…私達の知らない顔を見せてくれる――…始めは『セラの様子』中心のやり取りだけだったが“縁”というのは、本当に『生き物』のようだ。

 何と、かつての飼い主さんの勤める会社総出で…私と叔父さんが作ったアクセサリーの“お得意様”になっております。


 ――きっかけは、セラの首輪だ。

 元々、小物系が好きだったらしく…一目惚れをして思い切って、上司さんだけでなく…社長を巻き込んで売り込んでくれた。


 中々、シルバーアクセサリーのデザインも凝ってるからね。

 江戸切子とまでいかないが…叔父さん趣味兼仕事である専用の機械を駆使して、私達の『好み』のデザインを彫って“オンラインショップ”を経営している。


 売上?中々、好評でございます。

 前々飼い主さん様様で、思わぬ副収入を手に入れてしまった。


 巷で、噂の“猫の恩返し”なのだろうか?しかもセラお嬢様は『黒猫』だ――…よく黒猫は、他の猫よりも“神通力”の“力”が、強いと言われている。


 その恩恵なのだろう――…子供の頃…いや、成人前とはいえ今も子供だが…家族から「生き物を“大事”に“大切”に」と、言い聞かせられて育った。

 勿論、生き物だけでなく…身に着ける衣服や道具を扱う“物”に対してもだ――…大事に大切にすると『恩恵』を授かるとも古来より言い伝えられている。


 あくまでも“特定”が、大きく関わっている――…その特定とは『甘やかされて育った』だ。

 ウケ狙いに馬鹿をやらかしてしまうと…好きな人、憧れの人から“速攻”で『ドン引き』されるだけでなく「永遠に近寄るな」と、厳重注意を受けるというのに…理解しようとしない。


 そして、何故か“嫌よ嫌よも好きのうち”という有り得ない『お花畑解釈』されてしまうという…ある意味“ホラー”ものである。

 電車・バス・地下鉄のアナウンスと同じ事を言いましょう――…迷惑行為を止めましょう。


 ついでに…元凶である『飼い主』と、偽っていた人は――…かつての飼い主さんの手によって、社会的抹殺されたそうだ。

 一気に信用と信頼を失ったため、地元に帰るも…親兄弟だけでなく、友達にすら軽蔑の眼差しを向けられ…万年、肩身の狭い生活を強いられているそうだ。


 めちゃくちゃ、ブチ切れてたからな。


 ――懐かしい思い出を思い起こしながら…せっせと手を動かしながらセラに夕飯であるスープタイプのキャットフードを用意する。

 最近、歯肉炎による歯が抜けてしまい…食べ辛そうだったので、叔父と相談したらスープタイプとウェットタイプに切り替えた。


 しかし、まだカリカリタイプも好物のため…おやつに出すようにした。

 因みに本日は、セラの大好物であるチキンである。


 匂いで、好物だと分かるのだろう――…ご飯&おやつ時に現れる家猫版『すねこすり』と化す。

 凄くソワソワしながら私の足元に纏わりつくのは、あるある話だろう。


 何度も「危ないよー」と、踏まないように注意しながらセラの食事場に持って行き…ご飯と新しい飲み水を置いた。

 置くや否や――…良い食べっぷりである。


 セラの安定な食欲に安心しつつ、セラの寝床を掃除と整理する。


 寝床を整えたら私と今日、実家から帰ってくる予定の叔父さんの夕飯作りを開始する。

 実家では、手伝いと家庭科程度だったが…叔父と一緒に暮らし始めてから家事全般は、お手の物だ。


 でも…よく祖母が、作ってくれた茄子とオクラの揚げびたしと木耳と茎若芽の金平。

 母の作った、おにぎりと卵焼きと茄子とピーマンのオイスターソース炒め。


 この五点が、母の味――…というか家庭の味である。

 家庭の事情により帰れないため…試行錯誤を繰り返しているが、やはりと言うか…違うものだ。


 ――今日、実家のある仙台に強制帰還・依頼を果たしに行っていた叔父が…予定通りなら新幹線に乗っている頃だろう。


 セラを見ると…スープタイプだからか、やはり食べやすいのだろう…もりもりと食べるセラの食べ姿に見ていたいが…私も『生き物』だ――…誰だって、腹が減る。


 今日の夕飯は――…素揚げしたヤングコーン入りのシーザーサラダとホタテのクリームコロッケ、かぼちゃコロッケに加え…茄子とオクラの揚げびたしに木耳と茎若芽の金平。


 圧力鍋で、柔らかくした手羽中と手羽先を入れたら参鶏湯擬き煮を汁物擬きに…主食の炊き立て“ご飯様”である。


 忘れる事なかれと…ちゃんと、味見。

 美味しく出来た、が…祖母が作ってくれた『味』と母が作ってくれた『味』とは、違うものだ。


 ――精進しよう。

 そう思いに耽っていると…セラが、耳をピンと立てながら足早に玄関の方に一直線。


 叔父の出迎えは、セラお嬢様に任せて…せっせと夕飯の仕上がりに入る。

 そうこうしていると…玄関ならではの『ガチャ』と、お馴染みの音を立てて戸を開けながら「お出迎え、ありがとー」と、明らかに嬉しそうな声も台所に届く。


 セラの“お出迎え”今日も成功である――…料理を仕上げていると「――ただいまー、これ土産ー」と、言いながら銘菓の紙袋を私に手渡した。


 叔父である無患子玲――…それが、彼の名だが…姪である私が、言うのもなんだが“爽やか系イケメン”である。

 本来なら実家に居ないとなのだが、大学に行かずに社会勉強と称して上京した。


 初め――…叔父が、大学に行かない事と“社会勉強”という名の状況をするという事を…当時、我が家が進撃に遭った。


 社会勉強なら地元でも――…と、言う声もあった。

 しかし、ただでさえ『特殊職』の任に就き…目立つために還って、悪目立ちするのではと…危惧されていた。


 ――だが、祖母が一喝して上京先に送り出されて今に至る。

 私の場合は…当時、小学生であった私を伯母さんからの脅威と強意から身を護るために事情を知った叔父さんから「安全が、完全に確保できるまでに引き取る」と、言ってくれたのだ。


 女性の恨みは、蛇のようだと例えられている――…理由?今昔物語集の“清姫伝説”を知っているだろうか?

 大まかに纏めてしまうと…清姫という宿屋の娘が、宿泊客である僧に一目惚れし求婚を申し込むも僧は「修行僧の身ですので」と、断るも…それでも食い下がる清姫に「迎えに来るので、待っていてほしい」と、いう“噓”をつき逃げ出した。


 その後…嘘だと気づいた清姫は、怒り狂いながら僧を追い掛け回しながら…憤怒に身をゆだねた清姫自身の身は『蛇』へと変えていった。

 僧は、とある寺の鐘に身を隠すが――…その鐘ごと、焼き殺したという。


 興味を持った方は、調べてみると楽しめますよ。

 歌舞伎でもやっているようなので、イケメン歌舞伎役者さんの名演技に酔ってください。


 私は、何を…料理酒、淹れ過ぎたのかな?

 何を言いたかったのか?執着心を持つと周囲の目を気にせずに“狙った獲物は、逃がさない”と化すという事だ。


 当時、小学生であったが…子供心に嫌土産を植え付けられたものだ。


 今?今は『どうでもいい』が、本音。

 母や叔父さん…果歩にとっては“大事な家族”なのは、分かっている――…けど、あんな仕打ちを平然と出来る猛者に信頼と信用なんて、しない。


 出来上がった料理を配膳していると…セラに先導されながら着替えを終えた叔父さんが、リビングに戻ってきた。


 料理を見て早々、叔父さんは「ご馳走だな、美味そうだ」と、言いながら…ウキウキしながら冷蔵庫から糖質ゼロ発泡酒とグラスを取り、テーブルに持ってきた。


 テーブルの上にキンキンに冷えたグラスと発泡酒を置くと『カシュッ』と、聴き慣れた音を躍らせた。

 この音にセラは、耳を立てているものの無反応――…もう食べたというものもあるが…酒の臭いのせいだろう、好物の缶詰ではない事を知っている。


 叔父の帰宅が、嬉しいのだろう…お気に入りの場所に何時の間にか、戻っており尻尾を揺らしながら私達の様子を見ている。


 あの様子は、お眠モードだ…それに年齢のせいか、冷えるようだから食べ終わったらセラ専用のブランケットを持って来よう。

 今日、洗濯したからフワフワだ。


 決意を決めつつ、かぼちゃコロッケを半分に割ると…口に運ぶ。

 ジャガイモのコロッケのようにホクホク感に加えて、ねっとりとした舌触りと舌に絡むように素朴な甘さが何とも言えない。


 私は、何も掛けない派だが…市販のソースや市販の和洋風ドレッシング、好きな食材を切って和えただけの手軽ソースを気分に合わせて食べたりする。

 特に多いのは、ざく切りした好きな漬物と小口切りにしたネギとゴマ油を和えた簡単ソースだ。


 叔父さんも好きなんだよね。

 おかずだけでなく…直接、ご飯に乗せたり…最終的に茶漬けにして完食。


 よくトマトとアボカド、塩とオリーブ油を和えた簡単かつ洒落たソースを推されるけど…漬物離れをしている我が国日本。

 そんな事を黙々と考えつつも食べ進めていった。


「――地元の交通局ICカードも『ペイペイ』を共同導入すればいいのになー」

「また突然だね、どうしたの?」

「だって、もったいないと思わないか?」

「まぁ…そうだね。ただ、ICカードだと2万円までしかチャージできなかったよね?」

「それが、ベストだと思うんだよ」

「確かに…でも買い物好きには、つまらないんじゃない?」

「まー…でも流行ってあるだろ?流行に合わせての“限定品”に手のひらで、踊らされて…大破産を繰り返すってーのにな」

「…どうしたの?セラと同じように喋るね…」

「傷つくなー…事実だけどー」

「でも確かに使い過ぎ防止になるかもだね」

「だろー?実は、仕事上がりに実家に帰った際に仲のいい友達とプチ同窓会を開いてくれたんだけど…」

「良かったね」

「うん。それでな…大学を機にクレジットカードを作ったみたいなのよ」

「あー…確か、果歩も留学を機に作るみたいだね」

「お?そうなのか?」

「でも留学が、終わったら解約するって言ってたよ」

「…しっかりしてて、叔父さん安心」

「知らなかったけど…海外でも扱えるクレジットカードって、意外と国内で扱えない所があるからって…お父さんに教えてもらったらしい」

「お義兄さんの教育方針、素晴らしい」

「社会人として、安定したら自己責任で作っていいとも約束したそうだよ」

「おー…」

「私も作っていいよって、言われてるけど…買い物の歯止めが利かなくなりそうだから作らないよ」

「お金を見てるな…叔父さん、嬉しいよ…我が姪っ子よ」

「確かに買い物って、楽しいけど…店内に並べてある商品って、女優ライトが使われているのか…輝いて見えるんだよね」

「分かるわー…値段を見ると、現実に強制帰還できるけど…」

「値段で、目が覚めるならいいけど…店内の雰囲気と女優ライト擬きと店員さんからの“限定品”とか“次までの入荷未満”なんて、魔法の言葉なんて掛けられたら…」

「買っちまうわなー…友達もそうだったわ…」

「そうだったんだ…」

「クレジットカードの明細書を見て…絶望を味わったとか言ってたな…」

「か、返せたの…?」

「親御さんに貸してもらって…大説教の末にクレジットカードを解約して、借りた金を馬車馬の如く…返済してるそうだ」

「わぁ~…やっぱり、作るの止めておこう」

「しっかりしてるから大丈夫じゃ…いや。向き不向きがあるからな」

「でも確かに…ご当地ICカードとペイペイを導入してくれたらいいかも…バスであったり地下鉄、電車だけでなく“タクシー”という『足』を確保できるね」

「加えて、買い物も出来るしなー。持ち金が足りなかったら…手持ちのICカードで、払えば“一石二鳥”だろう」

「欲張れば、ポイントも貯まるし…交通局の『応援』も出来るね」

「ポイントチャージの“やり方”も簡単だしな」

「チャージの押せば、いいものね」

「ご当地応援をしたければ、交通局に掛け合って協同すればいいのになー…自動販売機に設定すれば“直ぐに使える”と、思うんだけどね」

「…やっぱり、お金問題じゃない?」

「何でもかんでも“スマホ任せ”にするもんじゃないんだけどね」

「私と叔父さんも…まだスマホじゃない人も居るのにね」

「全くだ。新しいのを求める事は、悪い事じゃないがな…またいつか、アナログ必須になると思うんだがね」

「それに交通局ICカードって、キャッシュカードやクレジットカードみたいに氏名を入れられるから無記名とは違って、紛失しても再発行も出来るし定期券代わりにもなるからクレジットカードに憧れている人向けかもね」

「確かになー。カードって、何となくだけど“金持ち”感覚が、芽生えるから丁度いいと思うんだけどな」

「でも今のご時世は、スマートフォン…」

「あー…ドライアイ老眼なんだがな~」

「キツイね」

「気をつけるんだぞ、菜種」

「はい」


 ――そんな平和(?)な会話をしながら…あっという間に夕飯を食べ終え「「ご馳走様」」と、するや否や…そそくさとセラお嬢様が、私の膝の上目掛けて飛び乗った。


 その様子を見た叔父さんが「俺が、洗うからセラを構ってなさい」と、叔父さんの好意に甘えて…セラお嬢様を入浴する時間まで満足するまで、構いまくった。


 その後、順番に入浴し終えて…自由時間。


 セラは、お気に入りの場所にて熟睡。

 叔父さんは、帰って来たばかりだというのに…明日の朝ご飯の下準備とアクセサリーのデッサン。

 もう何点か、デッサンしたそうだが…デザインが、被っていないかを確認するためにネットサーフィン徹夜をするそうだ。


 思わず「母さんに怒られていなかったっけ?」と、聞いてみたら叔父さんに「内緒ね♪」と――…叔父さんの笑顔の裏に感じる無言の圧力に負けて、黙認する事になった事は割愛させてください。


 最後に私――…菜種は、大学が休みだが…明日の朝ご飯の心配無用になったので…普通に家事をしながら自由時間だろう。

 猫飼いをしている人は、分かると思うが…毎日、掃除である。


 明日の予定を組み立てながら自室に戻り…不意に蓬からのメールを思い出す。

 しかし、メールに書いたように…もう『何』も出来ない――…行方不明となってしまった人の生存確認と思念を見た時…拒否られた。


 生存確認までは、分かった――…しかし、彼女から不思議と“帰りたい意志”が…全くと言っていいほど、感じなかった。

 その拒否反応は「邪魔をしないで!」と、強く拒んでいたから――…警察も動いているとの事だが…モヤモヤしながらも就寝するしかなかった。




 -小話・完-

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